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一人修業の果てに  作者: EKO
3/6

摩周湖での一人修業

 海岸の岩陰に洞窟があったので、浮世は一晩そこで休息を取った。

 翌朝、交通手段を考えながら洞窟の外に出た彼は、1艘の小舟を発見して驚いた。こんな大災害時に、都合よく船があるとは考えられない。

(もしかしたら、大黒天が?)

 あの姿からして、只者ではないと思っていたが、北海道へ行くには陸路より海路の方が、人目を気にせずに済む。

(感謝します…)

 

 舟を漕いで翌日には北海道・釧路市に上陸。

 浮世が上陸したとたん、小舟の形はおぼろげになり、消えた。

(凄い…さすが、七福神のリーダーだけの事はあるな…)

 大黒天に聞きたいことは山ほどあるが、どうやら釣竿を使いこなさなければ、質問には答えてくれないだろう。

 釧路市の港に着いてからは陸路になる。幸い自転車が数台放置されてたので、浮世はそのうちの1台に乗り、目的地に向かった。

  

挿絵(By みてみん)


 やがて、目的地の摩周湖(ましゅうこ)が見えてきた。

 摩周湖は、北海道東部・阿寒国立公園内にある。透明度は世界第二位、よく晴れた日の湖面の色は「摩周ブルー」と呼ばれるほどの青さだ。

(綺麗な湖だなァ…ここは霧が発生するし、伝説もあるらしい…大災害の後なので、観光客もそんなに来ないだろう。修業するにはうってつけだ)

 宿泊地は、第二展望台を選ぶことにした、確か閉鎖されてる状態のはずだ。

 そこにたどり着き、恐る恐る戸をあげてみる。幸い、展望台は無人だった。

(暫くお借りします…)

 展望台の中を簡単に掃除し、とりあえず寝泊りすることにした。

 

 翌日から、浮世の一人修業が始まった。


挿絵(By みてみん)

 

 まず、あの重い釣竿を持てるようにしなければならない。自分の体重よりも少し軽い程度の重さ…約50キログラムはありそうだ。

 持てるためには、筋力をつけなければならない。そのため、筋力トレーニングは欠かさずやった。そのおかげで約2ヶ月後には、両手で持てるようになった。 

 次は、釣竿の投げ技を身につけなければならない。

 投げ釣りのことを「キャスティング」という。キャスティングは、飛距離を争うのみだが、浮世はキャスティングを応用した必殺技で敵に対抗しようと思いついた。

 彼は幼少のころ、両親を事故で亡くし、孤児院で育った。釣りが大好きなので、学校の図書室から釣り関係の本を借りては読みふけったものだった。

 また、ある漫画で、キャスティングの様々な技を読んで知ってたので、いつか自分もマスターしようと思ってはいた。

(最初は真似てみよう。だが真似だけではだめだ。自分の技を身につけてやる!)

 

 最初のうちは、自分が転倒したり、釣竿を取り落としたりなど、散々だった。 

 たとえおもりが飛ばせても、せいぜい20から30メートルが関の山であった。

 それでも1ヶ月も経つと、おもりは100メートル台を飛ばせるようになった。更に3ヶ月後には200メートル台を突破。

 ここまで出来ると、自分が考えた技をマスターするのには、そう時間はかからなくなった。


 摩周湖に来て半年が経過し、季節は冬になった。

 北海道の冬の寒さは厳しい。湖も結氷する。

 この日の朝も、釣竿の特訓を無事終えた。

(釣竿の技も、何とかここまで出来るようになった。ただ残念な事には、近くの町などには、俺の特訓の相手をしてくれる強そうな人がいない…)

 すぐに大黒天のことがに脳裏に浮かんだ。だが釣竿の件以来、大黒天からは何の連絡もない。忙しいのか、それとも他に訳があるのか?

(考えても仕方ない。そろそろ町へ行く時間だ)

 浮世は身支度をし、町までランニングを開始した。

 

 ランニングは、摩周湖の近くの弟子屈(てしかが)町まで往復している。

 弟子屈町では、災害復興のボランティア活動を手伝った。この活動は、食糧がもらえるだけでない、様々な情報を入手するためでもあった。日本の状況、敵~特に天使人類~の状況を知りたかったからだ。

 7月の、天使人類が引き起こした中東戦争や、天空からの大災害により、日本だけでなく世界中が大打撃を受けている。だが情報は、殆ど耳に入ってこなかった。

 

 この日も活動を無事終え、食糧を貰って帰ろうとした時、

「もし、そこの少年…」

 浮世を呼びとめる、一人の謎の老婆が…。 

 


 

 

 

 


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