帝釈天と浮世
この話は、ヤフーブログで連載中の漫画「ふしぎ師匠の修業」の、元の話です。
主役は浮世少年。実は彼は「七福神」の一人・恵比須です。
「ふしぎ」では、師匠が登場しますが、この話には登場しません。
本筋は漫画とあまり変わりませんが、最初の部分は、漫画では[後半部分]で描きますね。
床に全身を縛られた状態で転がされた、傷だらけの濃紺色の髪の少年は、半ば諦めかけた表情だった。
少年を冷たい視線で見降ろすのは、腰まで長い金髪の美青年。
「浮世。君には、十三年前と同じく、荒海を漂流してもらう!」
「帝釈天…」
帝釈天と呼ばれた青年は、豪華な白の衣装に黒いマントをはおっていた。
彼は浮世にとって、天敵である「天使人類」のリーダーである。
帝釈天は、話を続けた。
「まず、助かるまい。丁度、真夏であるし、インド洋を襲っているサイクロンは、1000ヘクトパスカルもないほどの威力だ。君を乗せた葦舟は、サイクロンによりバラバラに粉砕される。そして君は深い海の底に沈むだろう…」
(俺は…このまま何も出来ず、死ぬのか…)
帝釈天の部下達は、浮世を葦舟に乗せ、舟ごと太い皮ベルトで固定した。
その瞬間!
「…うわあ~~!」
床の一部分に巨大な穴が開き、浮世を乗せた葦舟は、海へ投げ出された!
たちまちにして、サイクロンの荒海に揉まれていく。
その光景をスクリーンで見て、帝釈天はひとりごちた。
(君といい、妙弦更音といい、私に逆らったばかりに、再び地獄を味わい、死ぬ羽目となる…。まあよい。後の仲間を探しだし、洗脳して私の部下にしてやろうぞ!)
葦舟がバラバラになる様子を見た帝釈天は踵を返し、基地への帰還命令を部下に告げた。
やがて小型艇は、嵐の中を、中東方面の基地へ引き返して行った。
話変わって、インド洋の海中。
既に葦船は木っ端微塵に砕け、浮世は全身捕縛状態のまま、海底へ…。
(畜生!この縄さえほどけりゃ…)
最初は抵抗を試みたが、縄をほどこうと、もがけばもがくほど、両足に鋭い激痛が走る!
「あうっ!」
痛みと共に、気力と精神力が弱っていくのであった。
(うう…くっ…まだ痛むなんて…)
意識も朦朧としてきた。
(ああ…十三年前と全く同じだ…。今度こそ、俺は死ぬ…やっと楽になれる…)
ふと、一人の少女~妙弦更音~が、脳裏に浮かんだ。
(更音…あの娘はどうなったろう?…火の地獄の中じゃ、助からないか…ああもう、どうでもいい…俺には…かんけ…い…)
浮世は完全に意識を失い、深淵へ落ちて行った…。
稚拙ですが、何とか書き上げました。
漫画描く方が、早い位です。
続きも頑張りますので、宜しくお願い致します。