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光のそばで  作者: ぬこぬこ教徒
第2章
7/7

光の声/思いの中で

 光はきっと、一種の声。届きそうで届かない、哀れな存在(モノ)

 光はただ消えてゆく。

 だから〝わたし〟は光を見る。

 光が可哀想だからではない。光はそういうモノだから、光は決して触れてはならない。

 深く……深く関わってはいけない。

 光は一つでおおきな存在。

 〝わたし〟は思う。


 ──あの光に触れたい


 あの光に触れ、あの光の様になりたいと。

 心から……思う。

 きっとそうすれば、いつかは届くだろうから。


 〝わたし〟の声と、〝あの子〟の声が……。


× × × × ×


 妹の満は言っていた。忘れていると。

 俺はそんなことはないと否定した。

 だけど忘れていると、妹の満は言い張った。

 どっちが正しいのだろうか。

 俺が本当に忘れているとして、妹の満だけが覚えているのは……おかしい。妹の満が勘違いしているのだろうか。

 どこかですれ違いが起こっているはず。

 俺と妹の間に。

 それを見付けない事には、何も始まらない。

 きっとそうしなければならないと思った。

 そうしなければ後悔すると、何故かそう思った。

「……」

 妹の、満との約束を思い出す。


 ……、

 …………、

 ………………。


 ……思い、出せない。いや、わからない?


 ──俺は、妹の満と約束をしたのか?


 疑問が脳の中を走る。

 いや、したはずだ。それは覚えてる。そうでないとおかしいと、そう思えるのに。

「どうして」

 どうして思い出せない?

 確かに約束をしたはずなんだ、約束してないと、おかしいんだ……。

 カセットテープを巻き戻した様な音が頭を引っ掻き回す。

 雑音しか聞こえない。ただ虚しく乱しただけだった。

 どうして──どうして思い出せない?

 約束はしたのに……何故。わからない。

 ずっと一緒に過ごして居たんだ。

 いや、違う。中学までは、中学になって俺が家族と絶縁してからだ。

 そこから俺と妹の満の記憶が違えたのは。

 何か理由が……理由があるはずだ。

 記憶を手繰ると、妹の、満を呼ぶ自分が映る。


『──、──』


 あれ、


『どうして……行かないでくれよ、──!』


 名前の所でノイズが被って聞こえなくなる。

 背景はメガネの度が合わないみたいに歪み、音は鮮明さを無くして途切れ途切れだ。

 自分の記憶なのに。どこか他人事みたいだ。

 妹の名前……。

 いや、妹の名前は、『(みつる)』ではない?

 それはない。ないのだが、どうしてかそう言い切れない。

 名前。何か大事なことを思い出せそうだ。

「……。……っ」

 ダメだ。何度記憶を辿(たど)っても、どうしても昔の〝あの日の約束〟を思い出せない。


 妹の名前を思い出せない。


 本当の妹の名前がわからない。


 ──どうして?


 俺は記憶の渦に飲み込まれて沈んだ。

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