関係の間に
「……隼凪満が死んだのだって──」
その言葉を聞いた瞬間に焦りがボロボロと音を立てて崩れた。
その言葉にはとても大切で、大切な想いが込められていた。それと同時に憎しみや皮肉などのマイナスな感情も込められていた。
どこか他人事めいて俺は言ってやる。
「意味わからん。お前は死んでないし、生きてる。死んでたらここには居ない」
「……ふーん。そっか、そうゆう事言うんだ。別にいいけどね。おにぃちゃんはいつもそうだ」
妹の満は言う。
「大事な事は投げて、捨てて、逃げて、そうやって今にすがって……大事な事に限ってあんたは──!」
憤りを感じる怒り、
「あんたがそんなんだから満は……っ」
「そんな事はどうだっていい!」
俺は気付いた時には怒鳴っていた。
一瞬の激情はすぐに引いた。
戸惑い、焦りを隠す。
「す、すまん。だけど、俺はな──」
「そんなこと?どうだっていい?おにぃちゃん……本気なの?」
妹の満の声は怒気と悲哀が孕んでいた。
焦燥の様な苦い顔をする妹の満。
「満を……本当の妹をそんなことだって?」
「お前は実の妹だろ」
自分の焦りを塗り潰すように言葉を連ねる。
「同じ親から産まれ、同じ時間を同じように生きてきた。……そうだろ?」
実の妹ってのはそういう事だ。
何も焦る事も取り乱す事もない。
ちゃんと冷静になって言ってやるんだ。
お前は妹だって──
「わかった」
妹の満は低い声で言う。
「おにぃちゃんは満を……あたしを、どうでもいいって思ってる。そうゆう事なんだね。あの日の〝約束〟を忘れて」
「忘れてなんか」
「忘れてるよっ!!!」
妹の満の声はあの日のように低く、嗄れていた。
「全部、ぜんぶ……全部、全部、全部ぜんぶ全部ゼンブゼンブぜんぶ全部──!!!!おにぃちゃんは何もかも忘れてっ、満を忘れて……っ!おにぃちゃんは満よりも、あたしを……あたしを見てるんだ。酷い……酷すぎる──」
妹の満は癇癪を起こしたと思ったら立ち上がり、
「おいっ」
「帰る」
一言、そのたった一言を残してこの場を去っていった。
静まり返る室内に立ち尽くす。
何も言えずに、何か大事なことを見落としているようで、胸の内を掻き回されているようなもどかしさを覚えた。