光の雨/夢の中に
幾度も幾度も降り注ぐ光の雨。
それはまるで、枝と枝の間から通った暖かなな木漏れ日のよう。
空から降り注ぐ光の雨は桜の花びらのように舞い、海のように果てしなく、本のように深く、雪のように儚く消えてゆく。
光はどこから来て、どこに消えてゆくのか。
〝わたし〟にはわからない。
光は幻であり、そこにあってそこにない。ゆえに掴みどころのないものなのだ。
どうしてこんなにも、もどかしく思えるのだろう。
どうせなら、〝わたし〟もあの光と一緒になりたい。一緒になって、消え去りたい。
そうすれば……きっと。
だけど、それは叶わぬ願い。
〝わたし〟は今日も光を見届ける。
× × × × ×
薄い微睡みの中、『ぼく』という存在があり意識がある。
だけど、それは知られてはいけない意識だ。
夢という無意識に見る脳の働きが『ぼく』を維持してくれているから、存在する事が出来る。
人は皆、夢を見る。良夢も悪夢も。
夢があるから、正常な暮らしがある。なければいずれ壊れるだろう。
きっとそう言うものだ。そうでなければ『ぼく』という存在意識が生まれる事はなかった。
そう言うものなのだから。
『ぼく』を宿す主は白紙に何色にも染まっていない、純粋な存在だ。
いずれは『ぼく』という存在に気付くことだろう。
だから……それまでは──
それまでは、『ぼく』は夢の中に存在する事にする。