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007.ヒナタとシズネと忘れた記憶


 ククルの肩にのってギルドハウスに戻ってきたのじゃが、なんだか中が騒々しい。


 なんだろね?と言いながらククルが中に入ると、ホールでは数十の人がパーティをしておった。


 久しぶりに見る顔ばかりじゃな。


 そしてこちらに気づくと、何故か皆ワシとククルをみて驚いておる。



「よぉククル。」


 声をかけてきたのはキリカ。


 こやつの狩に行く装備ではなく、本気の戦支度をみるのは一年ぶりではなかろうか。


 よくよくホール内をみてみると、一部戦支度を整えておる者が混じっておる。


「キリカさん今晩は。なんかすごい人数集まってますけど、今日何かあるんですか?」


「今日はあいつがいなくなってちょうど一年だからな……それで久しぶりにみんな集まってギルド戦に出ようかってことになったのよ。」


「それで……それにしてもこのギルドってこんなに人いたんですね。」


「これでも一年前まではゲーム内に敵のいないギルドだったんだぜ?つっても引退したり移籍したりで結局オレ、ヒナタ、シズネ、シュナイザーの4人しか残ってなかったんだけどな。オレも一時期引退しようか迷ったんだが、ヒナタがチャーハン食べたいっていうからよ。」


 別にシュ、シュナイザーの事が心配だからとかじゃねぇからなと焦っておるシズネ。


 ワシは別にチャーハンが食べたい等と言ったことはない。


 まぁ食べれなくなったらそれはそれでさみしいが。


「そうだ、お前もヒナタとギルド戦でてみねぇか?無所属だから出たことないだろ?」


「え?でもヒナタがパートナー契約結んでる相手は……」


「あいつの遺言でさ、いつかヒナタが新しい相棒をみつけた時に契約を結べるようにってアカウント削除したんだわ……ほら、一度結んだ契約を解除する方法はキャラ削除しかねぇだろ?てことで、今ヒナタはフリー。お前が契約すればこいつも出れるってことよ。」


「そうですか……でも私じゃ……」


「お前以外にはいないと思うぜ?ヒナタはあいつ以外の肩には絶対に乗らなかったからな……それに何か似てるんだよお前。まぁ無理にとは言わねぇし、返事は待ってるよ。」



 遺言?新しい相棒?契約を解除?一体何のことを……それではまるで相棒がもう二度と戻ってこぬようではないか……


 ……何かがひっかかる。この違和感は初めてではない。


 なんじゃ?なんなのじゃ?


 ワシは何を忘れておる?何か、何かとても大切なことを……



 困惑するワシを、周りの者らが心配そうな目でみつめてくる。


 みるな。そんな目でワシをみるな。一体ワシが何をしたと言うのじゃ。


 耐え切れなくなりククルの肩から飛び降り、相棒の部屋へと走る。


 途中周りから、「まだあいつ待ってんのか」やら、「俺も忘れられえよ……突然ひょっこり帰ってきそうだもんな」やら、悲しげな声が聞こえてくる。


 パーティじゃろ?なんで悲しげ者やら泣いておる者が多いのじゃ?




 ……そして相棒の部屋に辿り着いたとき、


「なんでっ……なんで死んじゃったのよ……バカマスターっ!」


 部屋の中からシズネの声。

 

 死んだ?誰が……?マスターとは、一体誰のことじゃ……?

 

 ワシ用の小さな扉から部屋へと入る。


 シズネは部屋の中央にあるソファーの上で、相棒の剣を抱きかかえて泣いておった。


 扉の閉まる音でこちらに気づく。


「あ……ヒナ……タ……」


 こちらに気づいたシズネは気まずそうな表情を浮かべた後、ため息を一つつくと共に何かを決意した表情になりワシを膝の上へと招く。


 もしやシズネはワシの頭の中のもやのようなものをなくす答えをもっているのじゃろうか……


 膝の上にのりシズネを見上げると、優しく頭をなでられた。


「ヒナタ。」


 もう一度頭をなでられる。


 なんじゃろう、この状況、前にもあった気がする……


「あの人はね……うちのマスターはね……」


 相棒が?相棒は?




 ……あぁそうか、一年前の最後のギルド戦、相棒の姿を最後に見た日、その日から数日後のこの場所で、同じようにシズネの膝の上で……


「もう、もう帰ってこないのよ……」


 そうじゃ。あの時もそう告げられたんじゃった。


 全てを思い出した。


 相棒は病で死んだんじゃったな……


 出会ってから毎日のように一緒にいた相棒が突然数日おきにしかこなくなり、その間隔が段々あいたと思ったら突如また毎日来るようになり……


 そして最後のギルド戦の後に言われたんじゃった。


 俺は数日中に死ぬだろうと。


 後日シズネに死んだことを伝えられたんじゃが、それを認められなかったんじゃったな。



 ……一年たっても相棒は戻ってこない。


そして何よりこうして久しぶりに皆が集まっておるのじゃ。


 もう認めるしかないじゃろて。



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