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九人目:猫の雨宿り

「すみませんでした」


放課後の職員室。新之助や柊と別れ、鞄を取って来ようと教室へ戻った所で清美先生に捕まり、たっぷりと絞られてしまった


ちょっとサボっただけなのに厳しい先生だぜ



低いテンションで昇降口へと行くと、更にテンション低くなる出来事が……


「……豪雨とかって有り得ないだろ」


地面に突き刺さる雨。やみそうもない


「勘弁してくれよ」


途方に暮れていると、宮永が前を通った


「宮永!」


「うん? ああ、森崎」


「傘持ってるか?」


「持ってるわよ。入れないけど」


「……………」


「それじゃお大事に」


「風邪ひく事、確定なのかよ!」


宮永は振り返りもせず、ツカツカと昇降口を出て行きやがった!


「意地でも風邪ひかねーからな! バカヤロー!!」


それから暫くぼーっとしたが、誰も来なかった。どうやら諦めて帰った方がいいらしい


俺は雨の降る中、校舎を飛び出す



十分後


「いて、いて、いてぇ!」


雨はさらに凄まじい勢いとなり、体に刺さる!


「いてぇー!!」


堪らず俺は近くの公園に逃げ込む


公園の雨避け場所。そこには先客が一人いた


先客は、テントからひょっこりと顔を出して俺を見上げている


「何やってんだお前?」


「見て分からないかな? ホームレスだよ」


「あっそ。頑張れよ」


「ちょっと待って! そのスルー酷くない?」


テントから出て来た先客は、薄汚れたジーンズとTシャツを着た女だった


理名より多分歳下のガキ


「面倒事は極力関わらない様にしているんだよ」


「でもほら、中学生だよ? ホームレス中学生だよ?」


「何年前のブームに乗っかってんだよ。風邪ひく前に家に帰っとけ」


「……いやだ」


「そうか」


「り、理由聞いてよ!」


「面倒臭い奴だな……何でだよ」


「……父さんと母さん、家に居ないから」


何処に預けられてるって事か?


「うちと同じだな」


「お兄さん所も?」


「うちは両親とも早くに死んじまってな。今は妹と二人暮しだ」


金だけは多く残してくれたんだが、それが余計寂しくなる時もある


「……そっか」


「人には色々事情あるから一概には言えねーけどさ、帰れる場所があるなら帰った方が良いぞ」


「………………」


「お前の自由だけどな」


「…………ねぇ、お兄さんのうち何日か泊めて?」


「すみません、うちはペットの持ち込み禁止なんですよ」


「……おっぱい触ってもいいよ?」


「5年後ぐらいに泊めてやるよ……雨晴れて来たな。俺、そろそろ行くわ」


髪をかきあげ、公園の外へ向かって歩き始める


「けちー、ロリコン!」


「ざけんな!」


たく!


「待ってよ!」


「ついて来るんじゃねぇって!」


俺は全速力で逃げ出だした


「待って、待っ……っ!」


バシャンと大きな水しぶきの音に振り返ると、公園から出た砂利道で、転んだのか俯せになっているガキの姿


「何やってんだよ! たく」


俺はガキの所には戻らず、公園から死角になる場所へ隠れて様子を見る


「………………」


ガキはむっくりと起き上がり、ぽつんと立ちすくんだ


それを隠れて見ている俺


「……本当、何やってんだ俺」


どうも最近、面倒事が起こり過ぎる。……厄年か


笑える事に、それから十分ぐらい俺とガキはお互い動かなかった


そして変化が訪れる


「…………ん?」


ガキに迫る人影


どうやら大人の男みたいだが知り合いか?


「………っ……た……」


揉めている様だが……


「…………はぁ」


はいはい。様子を見に行けば良いんだろ、行けば



「本当に何もしない?」


「勿論だよ、おじさんを信じて。おじさんはカラオケ店も経営してるから、絶対信用出来るよ」


「…………絶対?」


「勿論。君みたいな可哀相な子をほっとけないだけだからさ」


「こらこら」


俺は親切なおじさんの背後に立つ


「な、何だ君は!?」


「あ、お兄さん!」


「お、お兄さん? あ、おじさんちょっと用事が出来たから帰るね」


慌てて逃げるおじさん


「あ、さよなら~おじさ~ん」


おじさん、いや、変態オヤジに手を振るガキ


「……お前なぁ」


「泊めてくれる気になってくれたの、お兄さん」


期待を篭めた目でガキは俺を見つめる


「……たく」


コツンとガキの頭を叩く


「いたいっ! ……何するんだよ~」


「テント片付けて来い。三秒以内」


「え? さ、三秒!?」


「1、2、3」


「ダァー!」


結局五分ぐらい掛かってガキはテントを片付け終えた


「んじゃ、行くぞ」


「て、テント持つの手伝って!」



んでもって十五分後の自宅リビング


「と、言う訳なんだ」


「…………………」


俺の前には無言の七海


「ち、ちょっと泊めるだけだし……部屋余ってるだろ」

「………………」


「な、何だよ。良いじゃねーか別に」


「良いわけ無いじゃないですか! 一体何を考えているのですか、兄さんは!」


「う……で、でもな。アイツほっとくと、明日の朝刊とかに出かねないぞ」


「で、ですが、もし何かありましたら……私達の様な社会的に地位が無い者に責任なんて取れませんよ?」


「それはそうなんだがな……かと言ってほっとけないだろ?」


「私もほっとけとは言っていません。とにかく先ずは警察に……」


「警察は駄目!」


リビングのドアが開き、叫んだのはバスタオルに包まれたガキ


「警察は……駄目」


ガキはボソリと呟く


「警察は駄目と言われましても……」


「……参ったな」


下手をすれば誘拐になるんじゃねーかこれ


「……はぁ」


俺のため息で、リビングは沈黙に包まれる


「やはり警察に……」


「いや! 警察は駄目! お兄さん、お姉さん警察だけは許して!!」


「………………」


困り顔で俺を見る七海


「め、迷惑は掛けないから。何でもするから! だ、だから、っ…………と、泊めて下さい……」


ガキは顔を俯せ、肩を震わせた


「………何日だ?」


「え?」


「だから何日泊めれば良いんだよ!」


「に、兄さん!?」


「責任は俺が取る!」


ヤケクソだ! 好きにしやがれ!!


「に、兄さん…………分かりましたよ」


ため息を付き、呆れ顔の七海


「……悪いな、七海」


「……ごめんなさい、お姉さん」


「良いんですよ。兄さんが全部責任を取ってくれる様ですし」


「あ、ああ」


酷い展開だ


「そんなことより……」


七海はガキの前に行き、頭を撫でる


「バスタオル姿では風邪引いてしまいますね、着替えましょう。私のお古しか無く申し訳無いのですが……」


「ううん! ありがと、お姉さん!!」


「お姉さん……ふふ。結構嬉しいですね」


そう言って七海はガキを連れ、リビングを出て行こうとする


「……ところでお前、名前は」


リビングのドア。そこで思い出したかの様に聞きと、ガキは振り返り


「ニア!」


と言ってニッパリ笑った


「誰が猫語で答えろっつった! 日本語で言え、日本語で」


「だからニアだよ、ニア。ニア・ドゥ・アルジェント・西条」


「が、外国の方でしたか。これは失礼しました」


何か敬語になってしまう


言われてみれば栗色の髪と薄く緑がかった瞳は日本人には余り居ない


「それではニアさん、私の部屋へ行きましょう」


「うん!」


二人はリビングを出て行く


「…………しかし面倒臭い事になったな」


一人残されたリビングで椅子に座り呟くと、ガキ……ニアと七海のはしゃぐ声が聞こえた


「お姉さん、お姉さん!」


「はい、ニアさん」


楽しそうだな


「………………はぁ」


ま、良いか

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