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五人目:デパートの天使

それなりに栄えている駅前広場。その中でも一際目につく、八階建てのデパート。七海のご機嫌取りアイテムを買う為に、取り敢えず俺はそのデパートへ入る事にした


デパートの中は日曜日だと言う事もあり、中々混んでいる


「さて、何を買うかな」


俺はデパート内をブラブラと歩く


「…………くく」


「…………ぷっ!」


「ん?」


何故か俺を見て笑う奴らがいる


「何だってんだ?」


どうも奴らは俺の股間を見ている様な……


「ぬわ!?」


お、おもらし!?


「な、何でだ? 何でなんだー!!」


ひざまづき、頭を抱えて叫んでいると、ポンと優しく肩を叩かれた


「大丈夫ですよ、お客様」


優しい声だ。だが俺は顔を上げる事が出来なかった


「……ほっといてくれ。俺はもう、アテント無しでは生きられない体なんだ」


「大丈夫です、お客様」


「え?」


顔を上げると、俺の視点に合わせる様しゃがんでくれている、制服姿の店員


優しい笑顔と、割と短いスカートから覗くむっちりとした太ももが印象的だ


「あ、貴女は……」


まさか……天


「私もよく彼氏とのプレイでおもらしをしてしまいます。でもそれは生きている証。健康であると言う証なのです」


「んなもんと一緒にするんじゃねぇ!!」


俺は店員の手を払い、トイレへと小走りで向かった



「しかし、いつ漏らしたんだ?」


トイレの大便所。鍵を閉め俺はズボンを下ろす


「…………ん?」


ズボンは濡れているが、トランクスは無事だ


「…………あっ!?」


さっきのお茶じゃねーかよコレ!!


テンパり過ぎて気付かなかった……


「……たくっ!」


紛らわしい!!


俺は怒りの形相でトイレを出る。しかし……


「は、恥ずかしいじゃねーか」


怒りはソッコー消え、羞恥心だけが残った


……安いズボンを買おう


俺はコソコソとデパートの三階にある紳士服コーナーへ向かう


「だからアニキのKOKAN様に似合うネクタイを用意しろってんだろがぁ!」


「ん?」


三階に行きズボンを捜していると、レジの横で言い争う声がした


「ぬふぅん。ネクタイ巻いてだべ~」


こっそり覗いてみると、品の悪いアロハシャツを着た金髪リーゼントの男と、アニキと呼ばれたスーツ姿の背が低いメタボが衣料服売場の試着室前に居る


メタボの襟には鈍く輝く金バッチ


「ヤクザか……」


「パッツン、パッツンの太もも。たまらんのぉ」


「い、いや……ああ」


絡まれているのは先程の店員だ


「野郎……ふざけやがって」


俺のたまに起きる正義感が、ズブズブと湧いてくる。しかしヤクザと争うのは……


「そうだ!」


帽子やサングラスで変装すれば………


見渡すとズボンや靴下、パンツ等の下半身に身につける物ばかりだ


「上半身コーナーは向こうかよ!」


なんつー変な並べ方だ! 急いで帽子を……


「い、いや! 止めて下さい!!」


「試着室でワテのKONISHIKI様にネクタイを巻いてもらうだけだべ~」


ま、間に合わねぇ!


「これしか無いのか!?」


俺は覚悟を決め、1番ジャストにフィットするソレを頭から被った


「ぐふ。さ~巻いてもらおうか~」


「あ、ああ……だ、誰か、誰か助けて~!!」


「待てーぃ!!」


「何っ!? 誰だ!!」


「貴様ら悪がいる限り、お天道様にゃ雨が降る」


「き、貴様は!?」


「悪を憎み、女の涙を晴らす男。人呼んで」


「へ、変態だぁ、変態が現れたぞー!」


「ひ、ヒィィイイ!? お、お許しを~」


「ひ、人呼んで……」


ヤクザ達は逃げて行った


「………………」


「………………」


残された店員と俺の間に、沈黙が訪れる


「……………そ、それじゃ失礼します」


「……はっ!? ま、待って下さい、ぶ、ブリーフさん?」


「……もう何でもいい」


「助けてくれてありがとうございました!」


「いや、いいさ。気にするな」


俺は振り返り、歩き出す


「あ、あの! 貴方の本当のお名前を!!」


「ふ。名乗る程のもんじゃねーさ」


こんな格好してるのに本名なんか名乗れるかよ!


「ブリーフさん……………あっ! あ、あの半乾きのズボンは、もしかして……」


「い、居たぞ! マジでブリーフ被ってるぞ!?」


「囲め、囲めぇ~」


警備員共がぞろぞろと集まって来やがった!


「じ、冗談じゃねー!!」


捕まったら社会的に抹殺されるじゃねーか!?


俺は群がる警備員達を薙ぎ倒し、デパートの非常階段へと飛び出した


「ちくしょー!!」



一時間後、自宅


「んで、階段から飛び降りたんだよソイツ!」


「そうですか」


結局何も買えなかった俺は、先程起きた出来事を土産話にする。……他人事として


「ん? あんま面白く無いか?」


「お話にリアリティが無いですよ。えっと……ブ、ブリーフですか? そんな人が居る筈……」



ピンポンパンポン


町内放送が鳴る


[先程、11時頃。ブリーフを被った変態が〇×デパートに……]


「………………」


「……な、居ただろ?」



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