二十五人目:塔の住人
「勇者様」
「…………ん」
穏やかな声で目を醒ますと、右横に人の気配を感じた
「……もう朝か」
軽く伸びをし、重い頭を振る。掛けられていたタオルケットが体からスルリと落ちた
「おはようございます勇者様。そろそろお店の方を開けるとの事なので、私の部屋のベッドでお休み下さい」
「いや大丈夫だ。つか昨日ダーマと戦った後、ずっと寝てたしな」
「ですがそれは……」
「俺の事よりお前は大丈夫なのか?」
「はい、すっかり治りました。ご心配をお掛けして申し訳ございません」
頭を下げるエルテの頭に軽くチョップを食らわす
「あう」
「謝るなよエルテ。昨日は俺達を治してくれてありがとな」
「勇者様……」
「さて朝飯でも食うか……って、その前にタオルケットありがとな。エルテが俺に掛けてくれたんだろ?」
「勇者様の方こそ昨日、私達を部屋に運んでくれたのですね。ありがとうございます」
「ダーマが運べってうるさくてな。ところでエルテ」
「はい」
「この世界はパンとか無いのか?」
「ありますよ。では注文しましょう」
エルテは慌ただしく動いているオッサンを呼び、聞き慣れない名前の物を幾つか注文した。しばらくして出て来た物は、パンとハムエッグ、そしてバターっぽいもの
「昨日も思ったが、食い物は俺の世界とあまり変わらないんだな」
「勇者様の知っている物とは若干材料が違いますが、やはり人が考えて作る物ですから、食の歴史を重ねれば自然とこのような品になります」
「似たような物になるってか」
納得した所でがつがつ食って、食後にミルクっぽい味の黄色い液体をエルテと飲む
「ふぅ、満足だ。……そういやダーマ達はまだ寝てるのか?」
「ダーマさんでしたら……あ、ちょうど帰って来ましたよ」
エルテの視線を追うと、宿屋の入口からダーマが入って来た所だった
「ただいま。起きたのねイチヤ」
そう言ってダーマは俺の向かい側に座る。灰色のズボンと茶色のトレーナと言った、割と地味な格好だ
「出掛けてたのか?」
「アンタとエルテの服を買って来たのよ。いつまでもそんなの着てられないでしょ?」
「え!? わ、私のもですか?」
「そりゃそうよ」
そう言い、ダーマは持っていた二つの布包みをテーブルに置いて紐の結び目を解く
「おー」
広げられた布包みの中身は、キルティングされた厚い布の上着と、動物の皮をなめして作られた黒色のズボン。そしてベルトだ
「いいな、これ」
「でしょう?」
ダーマは、もう一つの包みを開ける。その中には仕立ての良い白のワンピースが入っており、指で触れてみると、絹の様に滑らかで着心地も良さそうだった
「良い服だな。高かっただろ?」
「奮発したのよ? お礼は身体で……」
「発想がオッサンだな、お前。ま、ありがとよ」
「ありがとうございますダーマさん!」
エルテは満面の笑みで礼を言い、服を抱きしめた
「どう致しまして。着替えて来たら?」
「ああ。エルテ、お前は部屋行って着替えて来いよ」
「はい!」
スキップをしそうなぐらい浮かれた調子で、エルテは店の奥へと入って行く
男の俺は視線を気にする必要も無いので、その場で脱いで素早く着替えた
「…………どうだ?」
「うん、似合ってるわ。惚れなおした」
「ありがとよ」
ゴワゴワして着づらいと思ったが、着てみると中々スムーズに動ける
「それに丈夫そうだ」
「王蛾の肝で作られているからね。炎にも強いわよ」
「…………肝かよ」
なんか急にむず痒くなってきやがった
「こっちの世界では割とポピュラーな素材よ? アンタは本当に異世界の人間なのね……。向こうの話、聞かせて?」
「そうだな……。この世界は俺達で言う所の中世時代に似ていると思う。それでな」
「お待たせしました!」
話を割る形で、着替え終わったエルテが戻って来た。全体は純白だが、裾は僅かに青みかがっている
「超似合ってるぜ、エルテ」
どっかのモデルみてーだ
「はい! これほど足を晒すのは初めてですので少し落ち着きませんが、凄く気に入りました!」
そうは言うが、一応膝上まで隠れている長さだ。この町ではもっと短い奴もチラホラ見かける
「うん、よく似合ってる。アタシの見立ても悪くないね」
ダーマはエルテを下から上までゆっくり見入り、うんうんと、一人で頷いた
「戦うのに向かないし、似合わないからアタシは着ないけど、少し羨ましいよ」
「着ればお前も似合うと思うぜ。戦いに向いて無いってなら、部屋着にすりゃいいだろ」
「ありがと。イチヤが脱がしてくれるなら着て良いわよ?」
「面倒臭いからパス」
んなグダグダな会話をしていると、シャツ姿のアネモネとベロニカがやって来た
「う~寝過ぎた……」
「すみません。5時間も寝てしまいました」
眠そうに目を擦るアネモネを、ベロニカが手を引いて誘導している。まるで母親に連れられる子供みてーだな
「皆さん、今日はゆっくりしていて下さい。私はこれから塔の方へ行って参ります」
「わたし達も行くよ!」
エルテの言葉にアネモネは頬をパンと叩き、強引に目を覚まさせた
「ありがとうございますアネモネさん。ですが、私一人でも大丈夫です」
「わたし達の雇い主はエルテ様です。その雇い主をあんな危険な場所へ一人で行かせられません」
間を入れず、ベロニカが
発言する。どうやら二人は本当にエルテを守る決意をしているらしい。それにしても……
「……危ないのか?」
「変人達の集まりだからね、何があるか分からないわ。一応アタシも付いて行くよ」
「そうか……」
ま、仕方ねぇな
「暇だし、俺も行くわ」
「あ、ありがとうございます。皆さん!」
んで、結局全員で行く事になった町の北。永久魔塔を目指して俺達は宿屋を出た
「しかし暑くないのかお前ら?」
雲一つ無い空にはデカイ太陽が浮かんでいて、結構暑い。その暑い中、赤青コンビはターバンを巻いて顔を隠している
「見て分かるだろ!」
「ギルドの者に見付かると厄介ですので」
逆に目立つんじゃないかとも思ったが、意外にも同じように巻いている奴が多い
「この国最大の商業都市だから、色んな人種がいるのよ」
俺の疑問を察したのか、ダーマがそう言った
「疑問と言えばもう一つあるんだが、この町は低い建物が多いな?」
目につく建物全てが一階建てだ
「この国は空も国の所有物なのです。ですからニ階建にした場合、一階と同じ額の土地代を頂く事になります」
「……なるほど」
それならわざわざニ階建てなんかにせず、その分一階を広くするか
「でも、屋根の上に物を置いたり店を開いたりするのは良いのよ」
確かに屋根の上には荷物が置いてあったり、屋台を開いていたりしている
「だから平らな屋根が多いんだな」
なんか納得だ
それからも暫く様々な質問をし、逆に俺の世界の事なども話していると、建物が徐々に少なくなって来た
「後、20分って所ね」
「そうは言うが、塔なんか無くねーか?」
辺りの建物が低い為、かなり先の距離まで見渡せるのだが、塔らしきものは見当たらない
「塔に近づくと出現するのよ。全く意味の無い仕掛けだとは思うけど」
「あいつらに意味なんて無いんだよ、変人達の集まりなんだしさ」
「……行きたく無くなってくるな」
最近、変人との遭遇率が高すぎる
「皆さん研究熱心なだけですよ。塔がある事で、この国が他国から攻められない理由の一つとなっていますし、私は感謝しています」
「そうなのか?」
ダーマに尋ねると、ダーマは渋い顔で頷く
「まぁねぇ。高度な知識を持つ魔術師一人で一つの町を滅ぼせる力を持つと言うわ。そんな魔術師達が何十人も居るこの国に、わざわざケンカ吹っかける奴は多く無いでしょうね。ましてや永久魔塔の頂上には、あの灰色の悪魔が住むと言われているし」
「灰色の悪魔?」
「虚無より来たる者。全てを滅ぼし、無に帰す悪魔。この国に伝わるおとぎ話よ」
「あ、わたしもそれ聞いた事ある。1000年前にあった大国、エリウリアを七日間で滅ぼしたって奴だろ?」
アネモネの言葉にダーマは、そうねと答え
「所詮、おとぎ話だけどね」
と、話を終わらせた
「灰色の悪魔ねぇ……どっかのラスボスみてーな名前だな」
「ラスボス?」
首を傾げるアネモネに、何故か俺より詳しくエルテが説明する。それを何となく聞いていたら、いつしか人も建物も殆ど見えなくなり、不自然に広い空地へと出た
「やっと着いたわね」
「は? 何処にも塔なんか……うお!?」
何の前触れも無く、突如目の前に赤褐色の壁が現れた
「な、なんだこりゃ」
壁は空に向かって果てなく伸びていて、頂上らしき部分が全く見えない。どうやらこの焼成レンガで造られた壁が、
「永久魔塔。俗世を捨てて、人としての在り方すら捨てた魔術師達の城。昔、助けを求めてわたし達は此処を訪れました。ですが……」
「門前払い。相手にもされなかった」
アネモネとベロニカは、感情の篭らない声でそう言った
「……申し訳ございません」
「え? な、なんでエルテ様が謝るの?」
「盗賊ギルドの存在は知っていましたが、私は手を出せませんでした。ギルドをしっかりと管理出来ていれば、今の様に無法な組織にはならなかった筈です」
自分の不甲斐なさを恥じてなのか、エルテは俯き肩を落とした
「……王女とは言え盗賊ギルドや、この研究所の様な特異な場所は一人の人間がどうこう出来る場所じゃないわ」
慰めなどでは無く、ただの事実を語るようにダーマは言う
「…………」
「た、立ち話もなんだし早く行こうよ!」
重い空気を察し、アネモネが塔の入口らしき方へと向かって行った。歩き方が妙にぎこちない
「……だな。行くべ」
「あ! 皆さん、皆さんは外でお待ち下さい」
アネモネに続いて歩き出した俺達を、エルテが止めた
「え? 此処まで来たら中も一緒に行こう?」
「いえ、この塔は特徴があるのです」
「特徴?」
「この塔は入口を潜った瞬間、その者が持つ魔力の大きさにより行く断層が決まり、その断層の主となるのです」
「……じゃ、前に私たちが入った場所は」
「どんな微量の魔力でも見極めますので、その断層の主が呼ばない限り、同じ階へ入れるのは一階か最上階のみとなります」
「てゆー事は……。一階かぁ」
ガッカリとアネモネは肩を落とす
「大陸にいる魔術師達の最高位の方々が集まる場所ですから、殆どの方は一階になりますよ」
「なるほどね。それなら危険は無さそうだし、一度みんなで入ってみようか。入れた場所は自分の物になるんでしょ?」
そうダーマが聞くと、エルテは「そうです」と頷いた
「よし。じゃあ、入りましょうか」
入口へ向かうダーマを俺達も追う。入口と言っても塔の扉など無く、人が二人ぐらい通れそうな穴がポッカリと空いているだけだ
その前に立って内部を覗くと、滑らかな石で出来た壁と床がだだっ広くあるだけで、階段も何も無い
「変な部屋だな」
「そんな事より入ってみよう!」
「随分乗り気ね、アネモネ。でも……わたしも何だかドキドキしちゃう」
アネモネとベロニカは手を繋ぎ、俺の後ろで待機する。早く行けと催促されているみてーだ
「分かった、分かった。
じゃ先に入るからな」
どうせ一階だろうと適当に足を踏み入れたが、やはり何の変哲も無いままだった
「やっぱ俺は一階……うぉお!?」
振り返ると誰も居なく、代わりに流れる雲が見えた
「な、なんだ?」
土は? 地面は?
「最上階ですね」
「うおう!?」
何も無い空間から突然エルテが現れた。つかいきなりで心臓がいてぇ!
「イリュージョン成功ですね」
「イリュージョンって、お前なぁ……たく、びっくりさせんなよ。つか何で俺達は最上階に居るんだ?」
少なくとも俺は魔力なんかねーぞー
「ふふふ。それは秘密です」
「秘密にしてどうすんだよ」
ま、いいけどよ
「…………」
「ん? うひょう!?」
ふと背後に気配を感じて振り向くと、背の低い女が無言で見上げていた
「だ、誰だ!?」
「キミ達こそ誰?」
女はアシンメトリーなショートカットの髪を指で撫で、不思議そうに尋ねる。若いのに苦労しているのか、髪の色は混じり気無しの灰色だ
「始めまして最上階の魔術師さん。私はエルテと申します。こちらは勇者様です」
「そう……」
女はそれだけ聞いて、部屋の中心へと向かって行く
「……お忙しいのでしょうか?」
「無視されてるだけじゃねーか?」
人の事は言えないが、愛想が全く無い
「……お茶」
女は途中で足を止めて、床を手で触れた。すると触れた所を中心に、淡い光が部屋全体に広がった
「飲む?」
「…………」
もうめんどくせーから驚かないが、何も無い白い床から四方を囲む壁やテーブル、椅子がポコッと出て来た。テーブルにはティーセットが乗っている
「ボクここ」
三脚出た椅子の一つに座り、女は足を組む。さほど高い椅子ではないが、ちっこいから無理してる感がありありだ
「無理してないし」
「う!?」
エスパーかこいつ!
「いただきます、魔術師さん」
「うん……。キミは?」
「ああ、もらうよ」
「おやつ付き」
無表情&無感情に言い、カップに茶を注ぐ。余り嗅いだ事の無い甘香ばしい匂いが、俺の鼻をくすぐる
「カルアの葉ですね。100グラムで30万円ぐらいしますよ」
「高っ!?」
売る奴も買う奴も馬鹿なんじゃねーか?
「ヘタレ貧乏人」
「うるせぇよ!」
的確に表現しやがって!
「わぁ。勇者様と魔術師さん、もう凄く打ち解けてますね」
「解けてねぇよ!」
「路上で倒れてても、素通りするレベル」
「声ぐらい掛けろ!」
「死ねヘタレ」
「この野郎!!」
睨みつけても女は無表情のままで動じない。なんかもう俺ん中で仲間に誘う気、0なんだが……
「では仲間になって下さい」
「いきなりだなおい!?」
「仲間?」
空気を読まず、にこやかに微笑むエルテに対し、女は若干だが戸惑いを見せた
「はい。実はですね」
説明中・・・
「と、言う訳で世界が滅びそうなんですよ~」
「そう」
エルテは、まるで明日の天気を話しているかの様な気軽さで、世界の滅亡を説く。対する女も、どうでも良さそうに頷いただけだった……つかこの茶、うまいな
「滅亡を防ぐ為に、一緒に頑張りましょう!」
拳を上げて熱く語るエルテ。なんつー胡散臭さだ
「お、おいエルテ。そんなんじゃ誰も仲間になんかならねぇだろ」
「なる」
「ほらな、なるわけって馬鹿かお前!?」
どう考えても胡散臭いだろ!
「ボクと同等の魔力持つ人、始めて見たから。興味あり」
ジーっと俺を見つめてきやがる
「だけど報酬次第」
「そうですね……ではこちらの」
「ちょっと、灰色!!」
エルテが服のポケットから茶色の小袋を取り出したのと同時に、入り口の方から馬鹿でかい声が響いた
「……何だ?」
「赤色」
「は?」
「見たら分かる」
相変わらず無表情だが、何処かうんざりしている風に見える。女は椅子から立ち上がり、再び床に手を触れた
「……迷宮解除」
「迷宮?」
女の声で再び部屋は輝き始めた。今度は先程と違って、壁やテーブルが床に潜って行く
「お、おおー」
僅か数秒で最初に入った時と同じ、何も無い部屋に戻った。球技場の様な広い空間だ
「馬鹿灰色!!」
「ん? ……ああ」
入り口付近で騒いでる女が居る。確かに赤い
「すっげー赤色だな」
ルビーを溶かして染めたかの様な、鮮やかな色をした赤髪だ
「時代は灰色。赤はただの馬鹿」
「口悪いなお前」
「お前言うなヘタレ」
「ぐっ! ……なら名前は何だよ」
「虚無より来たる者」
「……お前の親、すげぇセンスだな」
なんつー名前付けてんだよ
「キミは?」
「一也だ。つか呼び憎いからキョ子で良いか?」
「馬鹿にしてるのかこのやろう」
文句を言っていても、やっぱり無表情だ
「つったって虚無より来たる者? んな長い名前言いたくねぇよ」
馬鹿みてーだし
「キョムたんで良い」
「…………まぁ、お前がそう呼べってなら呼んでやるけどよ」
「灰色~」
微妙な心境でいると、怒りの表情を浮かべた赤い女が、こちらに向かって来た
「なんであたしが一階落ちてるのよ!」
「ボクだけじゃなく、こっちの二人にも魔力が劣るから」
「っ!? こ、この」
「とっとと帰れ、メスブタ」
「っ~~!! 西より来たるは豪壮なる不可視の翼よ! 汝の赤き羽ばたきは、我の右腕に纏わる乾いた風を呼ぶ!!」
赤い吊り目女は、意味の分からない言葉をブツブツと唱え始める。それを受け、灰色はため息をついた
「下がって」
「え?」
「……その風は悪しき痛み。空腹を知る漆黒の悪風」
鈴の様に凜と響く二人の声は、聞いていて心地良い。良いがその周囲は陽炎の様に歪み、床にひびが入ってゆく
「な、なぁエルテ」
「はい?」
「俺達、もしかしてヤバい?」
「……逃げましょうか、勇者様」
「ヤバいのか!? 逃げるぞ、エル――」
「至れ! 蝕化灼熱の赤風よ!!」
吊り目の右腕に赤い風が纏わり付く
「……飢餓塵風」
眼鏡の背後から、数百の腕の様な黒い風が吹き出た
「今度こそ燃やしてやるわ、灰色!」
「ウザい」
赤髪女は、キョムたんに腕を向ける。その行為で吹いた熱風が、俺の髪を軽く焦がす
「ま、間に合わねぇ!」
俺はエルテを庇う為に、覆いかぶさって……エルテ?
「ストップです!」
いつの間にかエルテのアホが、二人の間に割って入ってやがった!?
「な、何やって!」
「ん? ……ああ、あんた達の事忘れてたわ。ごめん、ごめん」
赤髪は腕を振り、あっさりと風を散らした
「ボクは知ってた。だから範囲が狭い防御用の魔術を使った。これが学習能力の無いキミとの差」
「あんたねぇ!」
「落ち着け、落ち着け!」
またケンカを始めそうな二人を何とか宥め、直ぐさま本題に入る
「アンタに頼みたい事があるんだが……話を聞いてくれるか?」
「は? ……長くなりそうだからあたしの部屋に来なさいよ。お茶ぐらい出すわ」
「さっきボクが美味しいお菓子とお茶を出した。安い茶なんて誰も飲まない」
「た、高い方を出すわよ!」
全くもう、と肩を怒らせながら赤風は入り口へ向かう
「ほら、あたしに着いて来なさい」
「あ、ああ……行ってみようぜエルテ」
「はい。魔術師さんもお付き合い頂けますか?」
「いいよ」
キョムたんが頷いた所で俺達は、ずんずん歩いて行く赤髪の後を追う事にした