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三人目:レディース

「凄くいいライブでしたね!」


「ああ! まさかあそこでローリングソバットとは思わなかったぜ!!」


スカルクラッシャーのライブが終わり、俺達はファミレスで遅めの夕食を取っていた


夕食後も俺達の興奮は醒める事が無く、会話は益々盛り上がっていく


「やっぱ、ライブは最高だな! 臨場感や一体感がハンパない」


「はい!」


その後も数時間話をし、気が付けば深夜の1時過ぎ。慌てて駅へ向かったが、時既に遅かった


「終電……いっちゃいましたね」


シャッターが閉まった駅の前で、理名はポツリと呟く


「……ああ」


迂闊だった


「……どうします?」


「どうしますと言われてもな……」


どうしましょう


「ど、どこかに……」


「ん?」


「と、泊まりましょう……か」


理名は顔を伏せ、僅かに震える声で言った


「理名……お前」


「せ、せんぱいが行くって言って下されば、私は……」


「そんな金あるのか?」


「え? えっと……」


理名は自分のサイフを拡げて確認する


「三万円程あります」


「いいなー。俺、余り金無いんだよ。俺はファミレスで寝るからさ、お前はビジネスホテルにでも泊まってきな」


「え? あ、わ、私、お金出します」


「ライブおごってもらってんのにホテル代まで出させられねーよ」


「な、なら体で払って下さい!!」


そう言った後に、理名は顔を真っ赤にさせた


「…………ぷ、くく! あはははは!! お前、それ最高! で、俺はこう言えばいいのか? それだけはご勘弁をお代官様! あはははは」


「ア、アハハハハ……はぁ。やっぱり先輩と七海先輩は似ていますね」


残念そうに、だけど何処かホッとした顔で理名は笑う


「ま、兄妹だからな。それでな、理名」


「はい?」


「成り行きじゃ無く、もっといい感じの時に泊まろうな」


その後、咳込む理名の背をさすり、落ち着いた所でキスをする


「……いじわるです」


拗ねたように呟いた後、理名は俺の手をギュッと握った


「さて、マジにどうするかな」


「さっきのファミレスで時間潰しましょうか?」


「あいよ。……ところでお前、家の方に連絡しなくて良いのか?」


「き、今日は」


「ん?」


「お泊りって……」


「……はは」


「わ、笑わないで下さいよぉ」


「悪い、悪い。じゃ行こうぜ理名」


「は、はい!」


ファミレスへ向かう途中も、そんな感じの甘ったるく話していると、少し離れた所で争う様な声が聞こえて来た


「ん、なんだ?」


「どうしたんですか、先輩?」


「いや、ちょっと……」


耳をすませると、女の怒鳴り声


「アァ? カンベンだ? テメェ、舐めてんじゃねーぞ!!」


「おいおい、この後は公開蹂躙プレイだろうが? 今から泣き入れてんじゃねぇよ!!」


……穏やかじゃねぇな


持ち前の好奇心が沸き上がってきやがる


「……先輩?」


「ん? ああ、ファミレス行こうぜ……ダッシュで!」


俺は全力で駆け出す


「せ、せんぱ!?」


「俺を捕まえてみろ~」


必死に追ってくる理名から適当な距離を守りながら、ファミレス前へと着く


「ハァ、ハァハァ。せ、せんぱい……」


「良くやったな、理名。もう俺がお前に教える事は何も無い」


「な、何かを教わったんでしょうか、今……」


「……ああ! 財布だぜ、落したぜ、うっかりと」


「え?」


「探してくるから、先にファミレスで待ってろ」


「は、はあ……私も」


理名が何かを言う前に、俺は全速力で先程の場所へ向かって走り出す


「あ! せ、せんぱ」


「ちゃんとファミレスで待ってろよ~」


「は、はい!」


よし、これで理名の事は一安心だな。じゃ、さっさと行くべ



「確かこの辺だったな」


車道。右に住宅地へ続く暗い小道がある


「オラァ! はいずり回れよブタが!!」


「向こうか」


俺は小道の方へ曲がり、声の方へ歩いてゆく。そのまま少し歩くと、小さな公園前に数台の単車が停まっていた


公園内には赤い特攻服を来た女が、4、5人たむろしている


「あ? 何だテメェ!?」

公園の中を見ようと足を止めた俺に、見張りらしき女が俺に声をかけて来た


「野次馬」


「テメェ人間じゃねーかよ! おちょくってんのかコラァ!?」


その怒鳴り声に、公園内の連中も俺に気付く


「どーした、真知子? つか誰よそいつ」


「あ、リーダー。何かコイツ野次馬とか言ってんスけど!」


「野次馬? …………馬じゃねーじゃん」


「り、リーダー。野次馬ってのは見物人みたいなもんで……」


「なら最初から見物人って言えよ!」


横からせっかく教えてくれたポニーテールの女の顔を、バキッと殴るリーダー


「す、すませっしたぁ!」


後ろで腕を組み、直立不動のポニーテール


「とんだ馬鹿集団だ」


俺は俺を止める入口の女の手を払い、公園内へと入る。


公園内には女が五人。一人は裸にされ、しゃがみ込んだまま泣いていた


「テメェら……テメェらの血は何色だ!?」


「な!? その台詞はあのお方の……な、何者だてめぇ」


「俺は森崎だ。悪党に名乗る名は持ち合わせていねぇ……」


「こ、コイツただ者じゃねっスよリーダー!」


「……ああ、アタイの勘がビシビシと伝えてくるよ。コイツはヤバいってね」


「わりぃけど、今日の俺は女でも手加減しねーよ?」


生スカルを見たからな


「くっ! リコ、真知子、ミーコ、江里!!」


「イエス・ユア・リーダー!」


女達は俺を囲むように、集まる。手には木刀等の凶器


「やっちまえ!」


リーダーの合図で、女達が一斉に襲い掛かって来た!


先ずは後ろのポニーテール!


「ローリングソバット!」


「グハァ!」


次は右の真知子!


「ジャーマンスープレックス!」


「ゴハァ!」


左の……忘れた!


「ムーンサルトアタック!」


「ぬぐあ!?」


上空の……上空!?


「南斗獄屠拳!」


「ひでぶ!」


最後は正面にいるリーダーだ!


「電気アンマー!」


「あ、ヤダァ、ダメ! ああん!?」


僅か数分の戦い。それが終わった後、地面に立っていたのは俺だけだった


「……また、無益な争いをしてしまったな」


戦いの後は、いつも虚しい


「あ、あの……」


裸の女が怯えた声で俺を呼ぶ


「ふ」


俺は黙って着ている上着を脱き、それを女に着せる


「何かあったら俺に連絡しな」


「は、はい!」


それから赤外線で携帯番号を交換していると、背後でリーダーが起き上がり俺を呼ぶ


「お、おい、てめぇ」


「……まだやるのか?」


「ア、アタイとも交換……しろよ!」


で、リーダーとも番号交換をし終え、別れの言葉もそこそこに俺は急いで理名の待つファミレスへと走り戻った


「いらっしゃ……い!?」


カランコロンと鳴る昔ながらのドアを潜ると、ウェイターの兄ちゃんが何故か驚いた顔をして俺を迎える


「待ち合わせだから」


「は、はぁ」


怪訝そうな店員を避け、理名を探すと……お、一番奥の窓際か


「待たせたな理名」


「あ! せんぱ……」


奥に行き理名に声を掛けると、理名は嬉しそうに振り向いて……そのまま固まってしまった


「……どうした?」


「せ、先輩、ふ、服は……」


「ん? ……あ」


言われて気付き窓ガラスを見ると、そこに写った俺は上半身が裸の変態野郎だった


「…………理名、一枚服貸してくれ」


「む、無理ですよ!」

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