二人目:義理の妹
「ただいま」
「お帰り兄さん」
学校が終わって家へ帰宅した俺は、まずリビングへと行った。すると寝巻姿でソファーに座りながらココアを飲む七海と遭遇する
「風邪はもう良いのか?」
「ちょっと辛いけど、朝程じゃないですよ。ありがとう」
大丈夫と言っているが、まだ少し調子が悪そうに見える
「どれどれ」
鞄を床に置き、七海の傍に寄って額に手を当ててみるが、いまひとつ分からん
「…………」
「ね、大丈夫でしょう?」
「手じゃ分かりにくい。動くなよ」
俺は七海の前髪をかきあげ、顔を近付けた
「に、兄さん!?」
「でこで計るんだよ。昔は良くやったろ?」
「で、でも……あう」
何故か照れている七海と額を合わせると、やはり少し熱い
「まだ熱があるみたいだな。ココア飲んだら寝るんだぞ?」
「……はい、兄さん」
頷く七海をリビングに残し、俺は一階の奥にある自分の部屋へと戻る
「……明日のスカル、行けないかもしれねーな」
ベッドにねっころがり、iPodでスカルを暫し堪能。マジでカッコイイぜ
「あいつ風邪引くと長いからな…………あっ!」
俺が治せば良いんじゃねーか!
イヤフォンを耳から引き抜き、部屋を飛び出してキッチンへ。綺麗に片付けられたキッチンの食器棚下段に、非常用として缶詰が幾つも置いているのだ
「えっと……」
あった!
「桃の缶詰、ダァーッ!!」
最強アイテムを手に入れた俺は、そのアイテムを冷凍庫に入れて冷やす
缶詰を冷やしている間に鍋で生米をことこと煮込む事20分弱……
出来たぜ!
「今行くぞ、七海~」
テンションの割には小さい声と足音で、一階の七海の部屋へ向かい、そのドアを8ビートのノックで叩く
「な、何ですか一体!?」
「あ、悪い。つい……入ってもいいか?」
「え、ええ。構いませんけど」
「じゃ、入るぞ」
七海の部屋に入ると、病人特有のくすんだ臭いが微かにした
すっきりと片付けられた部屋のベッドで七海は辛そうな表情で横になっている。脇には水差しと薬が置いてあり、額には水タオルが乗せてある
「七海、お粥と桃食べれるか?」
「お粥ですか? はい、食べれます」
タオルを脇に置き、ゆっくりと起き上がる七海。俺はそんな七海の傍に行って背中を支えてやる
「に、兄さん、私、大丈夫ですから……」
「バカ、辛い時ぐらい俺を頼れ。いつでも支えてやるから」
スカルを代わりに見に行くし、それくらいしないと罰が当たりそうだ
「兄さん……。ありがとう」
「愛しい妹の為だ。礼なんか言うな」
「……はい」
「それでいい。お粥、一人で食べれるか?」
そう聞くと、七海は首を振って
「一人じゃ……食べられないです」
と、上目遣いで甘えた
「分かったよ。ほら、口を開けろ」
フォークでお粥を掬い、七海の口元にそっと運ぶ
「あ、熱いよ、兄さん。フーフーして欲しい」
「おいおい」
急に甘え始めたな、コイツ。熱でもあるのか? ……あるか
しかたがなく息で冷ませながらお粥を食べさせ、桃もちょっとずつ食べさせる
「ごちそうさま、兄さん。美味しかったです」
ようやく全部食べさせ、口元を拭いてやった時には既に40分も経っていた
「それじゃ俺は部屋に戻るから、何かあったら携帯鳴らせよ?」
俺は七海の枕元に携帯を置いて立ち上がる
「……うん」
少し寂しそうだな
「暖かくして寝るんだぜ七海」
「はい、兄さん。……ありがとう」
七海の部屋を出て自分の部屋に戻り、携帯を見ると、着信が三件入っていた。相手は……
「……そういや見舞いに来るって言ってたな」
すっかり忘れてたぜ
それから理名へ電話をかけ直した俺は、既に家の前まで来ていた泣きそうな顔の理名を回収し、無事に七海の元へ連れて行ったとさ
つかチャイム鳴らせよ