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十五人目:訪問販売員

「良いですよ、兄さん」


買い物から帰って来た七海を、俺の部屋へ呼び家族会議。七海の答えは即答だった


「…………良いのか?」


絶対反対すると思ったんだが


「はい。実は兄さんが帰って来る少し前、舞さんとお話をし、お祖母様ともお電話でご相談したのですが、舞さんはとても素敵な方だと思いました」


七海はニコニコしている。……怪しいじゃねーか


「………………」


「そんな疑う様な目をされましても……。ええと、はっきり言ってしまいますと、利害の一致なのです」


「利害の一致?」


「はい。舞さんは新しいお仕事を持てますし、私は舞さんに家事をお手伝して頂く事でもっとしっかり家や兄さん達のお世話をする事が出来ます」


「世話って……お前はもう十分やってるだろ?」


「いいえ、全然です」


はっきりと言う七海。本当にそう思っているらしい


「最低限の事はやっていると言う自負はありますが、疎かにしている部分も沢山あります。だから兄さん、もし兄さんさえ宜しければ舞さんを……」


真剣な目で七海は俺に訴える


どうもまだ半分ぐらいしか本当の事を話していない感じだが……


「いいぜ七海。俺達みてーなガキにお手伝いさんは、贅沢過ぎる気はするけどな」


「あ、ありがとうございます!」


舞さんが居ればニアも日中、寂しく無いだろう。いやつーか何でニアの事を気にしないといけないんだ?


「……じゃ、舞さんに話をしてみるか」


そう言って部屋を出ようとした時、ピンポーンとチャイムの音が鳴った


「ん、客か。俺が出るから七海は舞さんと話してろ」


「はい、兄さん」


部屋を出て玄関のドアを開けると、トランクケースを持ったスーツ姿の女性がいた


長い黒髪には軽くウェーブが入っていて、若干釣り上がった目がなんつーかエロい


「こんばんは」


女性はニッコリ微笑む


「ええ、こんばんは。うちに何かご用ですか?」


「わたくしEOSの里中と申しますが、お父様かお兄様はいらっしゃいますでしょうか?」


EOS?


「いえ、居ません」


「そうですか……何時頃お帰りになるか、お聞きしても?」


「この家は俺と妹の二人暮しなので、他には居ないんです」


「えっ!? ……失礼ですが、おいくつでいらっしゃいます?」


「17です」


「17……ありね」


今までニコニコしていた女性の目は、急に獲物を狙う獣の目と変わった


「な、何か?」


「実は私、訪問販売なのですけれど、今日は男性にとって素敵な商品を持って来ました」


女性はそう言いながら徐々に玄関内へと入って来る


「ち、ちょっと!」



「最近、性欲を持て余してはいませんか? 或は彼女とのプレイに飽きてきてはいませんか? そんな貴方に朗報! NASAとかそんな感じのアレが開発した驚異のコンドーム、コンドー野郎Aチーム! 薄く、軽やかで丈夫。まさに近未来のアイテム! 一家に一箱、明るい家族計画を!!」


女性はトランクを俺の前で開けながら、いっぺんに喋った


トランクの中には、18禁的な物がテンコ盛りだ


「い、いや俺そう言うの使わないから」


「使わない!? それは駄目よ、その若さで。

良い? 若い内はそりゃ生でやりたいでしょう、私だってやったわ、ええそりゃ、やってやったとも! でもそれは責任が持てる大人の嗜みなの。後で後悔するのは貴方と相手の子であり産まれてくる」


「だから、んな心配ねぇんだって!」


理名を抱く予定すらねぇよ


「ふ……若さ故……か。哀しいわね、男って」


女性は疲れた表情で煙草を取り出し、フゥとため息をついた


「俺はあんたと会話をしている事が哀しくなってきたよ。とにかく、さっさと帰れ」


「一箱だけ! 一箱だけお願い! お父さんが怒るからコンドーム売り切るまで家に帰れないの!!」


「どこのマッチ売りだよあんたは」


厄介なのに捕まっちまったな……


「……よし分かった! 今ならこの電動」


「ま、まて! それは駄目だ!!」


18禁指定になっちまう!


「じゃ買って。5箱」

調子に乗りやがって! 俺のスタンドを見せてやる!!


「小夜子! 奴の背中に取り憑いてやれぃ!!」


……………………。


「………………」


「…………じゃ10箱買ってくれると言う事で」


役に立たねーなアイツ!


「ハァ……幾らだよ」


「買ってくれるの!?」


「1箱な」


「8箱!」


「1箱だ!」


「そこを何とか6箱で!」


「1箱だっての!」


「ええい、3箱! パンツ見せてあげるから!」


「あ~うるせーな! 分かったよ、3箱買うからってスカートめくってんじゃねーよ!」


「本当にありがとう! それじゃ3っつで三千円になります」


「分かったよ」


ケツポケットから財布を取り出し、女性へと渡す


「はい、じゃこれ。特攻野郎Aチームね」


「こらこら商品名が違うだろ」


コンドー野郎を受け取ると女性は頭を90度に下げ、俺に名刺を渡す


「それ本当に良い商品だから、また欲しくなったら連絡してね」


EOS代表取締役。里中 朝里


「……社長かよ!?」


「社員0。ハッタリだけどさ」


ドアを開け玄関を出て行く社長。俺はそのドアを押さえ見送る


「それじゃ、ありがとうございました。今後ともEOSをどうか、ごひいきに」


「ああ……ところでEOSってどういう意味だ?」


「エロ・オヤジ・シンフォニーよ。バイバイ」


社長は軽く微笑み、次の販売先(多分美弥子さんち)へ颯爽と向かって行く


「……カッコイイじゃねーか」


俺もドアを閉め、コンドー野郎を抱えて部屋へと向かった

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