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十三人目:小夜子

「何だったんだ奴らは!」


部屋から逃げ出し、少し離れた場所で息を付く


奴らが追って来ないのを確認しつつ辺りを見回すと、どうやら此処は西校舎の2階らしい


俺のクラスがあるのは東校舎2階。よく此処まで運んでこれたものだ


「…………たく」


携帯を取り出し、時間を見ると五時半。バックを取って来てさっさと帰ろう。俺はそう思い、教室へと向かった


《お~い君》


「ん?」


教室へ戻る途中、呼ばれた気がして振り返ってみたが、誰もいない


「………………」


《君、君だよ! 聞こえてるでしょ?》


真後ろから聞こえる声。再び振り返るが……


「………………ち、ちょっと待て」


この歳で幻聴か!?


《やっぱり聞こえてるんだね。よかった》


「良くねぇよ! 何も良くねぇよ!!」


振り切る様に怒鳴ると、声は止んだ


……疲れているんだな。土曜日にでも病院へ行こう


《私は小夜子。13番目の小夜子》


「どっかの青春小説みてーな自己紹介は止めろ!!」


幻聴ってレベルじゃねーぞこれ!


《君、意外と保守的だね。幽霊とか初めて?》


「初めても糞もねぇよ! 舐めてんのかテメェ!?」


《うわ……怖いなぁ。もっと優しい子の方がよかったな》


「俺の方が怖ぇよ! つか嫌なら別ん所行け!!」


《いや~取り憑ける人、八年待ったからね。そう簡単には離れませんよ?》


「と、取り憑く? お、お前、俺に取り憑いてるってのか?」


《いやいやまぁまぁ、良くある事だし気にしないで》


「ふ、ふざけるな!」


俺は廊下を全速力で走り、逃げ出す


そしてそのまま学校を飛び出し、チャリンコに乗っておもいっきし漕ぐ!


「なんだってんだ!?」


オカルト同好会なんかに行ったからか!?


《なんだって言われても困るなぁ。基本幽霊? 実は悪霊?》


「ぬわ!?」


突然の声に驚き、俺は自転車のタイヤを滑らして転んでしまう


「い、いてて」


《こら、危ないぞ! 自転車はゆっくり漕ごうね》


「あ、あんたマジで幽霊なのか? 俺の幻聴とかじゃなくて……」


倒れた自転車を起こし、声の方に問い掛ける


《そうだぞ。凄いだろ~》


「うわっ!?」


俺の目の前でセーラー服姿の女がいきなり浮かんで来やがった!


「な、な、な、な?!?」


《うん? ……あれ? 見えてるの? あちゃー》


困った顔をする女


「な、何だよ?」


《君と私、波長が良すぎるみたい。ごめんね、君の生気吸い取っちゃってる》


「普通に悪霊じゃねーか!!」


《あ~大丈夫、大丈夫。一日五千カロリーぐらい取れば大丈夫。多分》


「そこ大事だろ! ハッキリしろよ!! ゴホ、ゴホ」


今日は朝から怒鳴りっぱなしで喉がいてぇ……


「……目の前でプカプカ浮かぶの止めてくれね?落ち着かねぇ」


《じゃあ、君の背中にっと》


そう言い、女が俺の背中に回ると異様な寒気が!


「うぉおぅ!?」


《う~ら~め~し~や~》


こ、殺される!?


「や、止めろ! 俺には妹と彼女と昨日拾った猫と目を離すとヤバい事になりそうな後輩が居るんだよ!」


まだ死ぬ訳にはいかねぇ!


《へ~、私には弟が居るよ。犬も飼ってたけど、まだ生きてるかな……》


女は俺の背から離れ、再び前でプカプカ浮かび始める


《大丈夫。呪い殺したりしないから》


「ほ、本当か?」


流石に幽霊と戦って勝つ自信は無い


《じゃ、帰ろっか」》


「ああ! っておい!!」


こいつ俺んちにまで来る気か!?


《これから暑くなるから幽霊いると便利だよ》


「いらねぇんだよ、そう言う便利さは!」


《良いから良いから》


「だから良くねぇって! さっさと成仏しろよ!!」


《したいんだけどね~。ちょっと未練があるんだ》


女は困った顔をする


「未練? ……何だよ」


《ん~それが何だったか分からないのよね》


「なんだそりゃ」


《でも君となら分かる気がする。だから暫く一緒に居させて》


「断る」


《……呪うよ?》


「うっ! て、てめぇ」


霊媒師とかタウンページに載ってたっけか?


《あ、霊媒師とかインチキだよ? 無意味で大きな壷とか買わされちゃうぞ。この壷はいい物だ~ってね》


ウインクする幽霊女。ムカつくなコイツ


「……頭いてぇ」


何だこの不幸さは……


《でもほら、他にも良い事もあるよ。敵が現れたら後ろから私がオラオラ~って》


「……何処に敵が居るんだよ。つかお前、漫画とか好きなのか?」


《私は断然、二部ね。一部も捨て難いけどね~》


「そうかよ」


俺はチャリンコを漕ぎ出す


《結局さ、時をどうこうする系がラスボスってどうかと思うのよ。時を止めるとか時をぶっ飛ばすとか時を消し去るとか》


「めちゃくちゃどうでも良いなお前の話」


俺の周りをプカプカ浮かびながら付いて来る幽霊女


「…………あ!」


前にうちの学校の生徒がいる!


「おい隠れろ!!」


《大丈夫、大丈夫。幽霊は見えない。これ常識》


「俺にもその常識ってのを適応してくれねぇか」


徒歩で帰宅する奴らを抜かしてみたが、確かに特別注目を浴びていない


「…………見えて無いか」


ホッとしたような、俺の頭を再び疑いたくなったような……


「…………はぁ」


《こーら、ため息は幸せ逃げるぞ》


「うるせーよ」


取り合えず面倒くせぇから家に帰ろう


「……妹とかに憑いたらマジで退治するからな」


《大丈夫。私は君一筋よ》


そう言ってまた女、いや幽霊……小夜子で良いや


小夜子はウインクをした


《てへ♪》


なんかムカついた

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