才色兼備、清廉潔白、品行方正、天衣無縫、百花繚乱、天下無敵の御令嬢
読みに来てくださって、ありがとうございます。
軽いノリのコメディです。頭を、すっからかんにして、お読みください。
「ダンディオス殿下~。待って下さ~い。もう、殿下ったら、歩くの速いんですもの」
第一王子ダンディオス殿下。私の主である。まあ、私はただの乳兄弟で、側近候補兼お世話係。一歩下がって、影に徹してしまいたい。
何せ、この女、エリンナ男爵令嬢は、ただの側近の1人の私にも、しつこい事この上ない。ハッキリ言って、宇座絡みされるのは、ごめん被りたい。婚約者にこんな所を見られたら……。
私は、スルッと、迫り来るエリンナ嬢の腕から逃れた。
「あら、グランド様。照れちゃって、もう。ねえ、ダンディオス殿下?」
ダンディオス殿下が、怯んで、エリンナ嬢に捕まった。ここの所、毎日である。
彼女は、嫌がって身を離そうとする殿下の腕に、デカくて柔らかそうな胸を、ぎゅむぎゅむと押し付けた。
そして、反対側の手の指でツンツンと殿下の頬をつつく。
まるで、端から見れば、恋人同士である。
殿下の迷惑そうな顔を除けば。
容姿端麗、質実剛健、文武両道、清廉潔白、品行方正と呼ばれるダンディオス殿下は、ちょっと鈍い。と言うか、こういう時に何故か捕まってしまう。
わざとか?
わざとなのか?
本当は、あの胸を楽しんでいるんじゃないか?
そう思うのは、見ている全員じゃないの?
「ダンディオス殿下!とうとう、現場を見つけましたわよ。
ああ、もう。私と言うものが居ながら、この様な男爵令嬢に入れあげて。
もう、そこの女、殿下をお離しなさいな!」
殿下の婚約者のルリエラ嬢が、さかさかと早足でやって来ると、エリンナ嬢に自分の扇子を、ビシッと突き付けた。
才色兼備、清廉潔白、品行方正、天衣無縫、立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花、百花繚乱。天下無敵の公爵令嬢。
彼女は、美しく可憐でその姿はまるで天使の如くである。
むしろ、彼女より3才年上の殿下の方が、存在感が無いのでは?と、学園内の下馬評である。
いや、ルリエラ嬢の存在感が半端ないだけだな。うん。
エリンナ嬢も派手な容姿にボンキュッボン……いや、スタイルご抜群で、ルリエラ嬢に負けては、いない。うん、まあ、なんと言うか、ねえ。男の本能の問題……か?
「え?嫌だし。大体、ダンディオス殿下も喜んでるわよ?」
殿下が、プルプルと首を横に振ってエリンナ嬢から離れようとするも、彼女は、更に殿下の腕に自分の胸を押し付ける。
「もう、お離しなさいったら。こうなったら、こうですわ!」
ルリエラ嬢は、殿下の空いている方の腕を取ると、自分から腕に抱きついてエリンナ嬢から殿下を離そうとした。
お?殿下の顔が少し赤くなっている。
「おっ、役得?」
「こほん、グランド?黙っていろ」
殿下ったら、ムッツリなんだから~ね~。
「もう、離れなさいったら」
そう言いながら、ルリエラ嬢は、エリンナ嬢の胸を押した。押した。押した。
押しながら、ルリエラ嬢は、自分の胸を見た。
「何を食べたら、こんなお胸になるって言うの?もう、腹立たしいったら。
牛乳?牛乳なの?
それとも、侍女の言うように、鶏の胸肉?胸肉をいっぱい食べれば良いの?」
ルリエラ嬢は、ぎゅむぎゅむと、エリンナ嬢の胸を押しながら、泣きながらぷんぷん怒って言い出した。
何か、可愛い。
間に挟まれた殿下も、顔を赤くしながら、ルリエラ嬢を見て、更に私の方を見た。
いや、ムリですから。絶対に、そこには、割り込みませんからね。
私は、もう一歩下がった。
「本当に、どうやったら、こんなお胸が出来上がるわけ?
お兄様の言う通り、殿下に揉んで貰えば良いのかしら」
おい、公爵令息。妹に、何教えてんだよ。
「腹立たしいっ。
うう、気持ちいいわね、このお胸。
もう、こうなったら、これしかないわ!」
ルリエラ嬢が、再び扇子をエリンナ嬢に突き付けた。
「貴女の事は、調べが付いているのよ、エリンナ嬢!」
ビシッ!
何となく、そんな音がした気がした。
うん、気がしただけだ。
「貧乏男爵家の長女エリンナ嬢。貴女は、父親の男爵の命令で、『金持ちの息子に張り付き、その身体で篭絡して来い。さもなくば、病弱な弟もろとも放り出してやる』と言われたんですってね」
「どうしてそれを!?」
「おーっほっほっほっ。悪役令嬢の私にかかっては、こんな事を調べるのは、朝飯前ですわ」
いや、どう見ても、外見からして悪役令嬢なのは、男爵令嬢ですから。
周りの皆も
可愛いなあ。と
貴女を見て、ニコニコ和んでますからね。
殿下なんか、もう、ニヨニヨしながら、顔がやに下がっちゃって、見れたものじゃあ無いですよ。
「と言うわけで、私が貴女を雇いますわ。そんな家なんて、出てきておしまいなさい。勿論、弟さんも、込み込みで、お給料は、相場の2倍よっ!
そして、私に、その、お胸を伝授するのよっ!」
ビシッ!
そんな音がした気がした、だけ。
「え!マジで?やります、やります。学費もお願いできます?」
「女に二言は、御座いませんことよ!
よし、言質取りましたわよ!
そうと決まれば、早速、今日から取りかかって頂戴っ!!」
ルリエラ嬢は、エリンナ嬢の手をガシッと掴むと、スゴい勢いで引っ張って走って行ってしまった。
「なあ、グランド。胸を揉んで大きくするって、今日から実行しても、良いよな?いや、むしろ、一刻も早く実行した方が良いよな」
ダンディオス殿下が、自分の両手をワキワキしながら、私の方を見て、そう言った。
何か、変態っぽいので。それ、止めましょう。殿下。
「お胸は、一日にして成らずですわっ!」
「おーっ!」
「殿下、何故、殿下がここに?」
「マッサージ要員だよ。ルリエラ」
「殿下、手をワキワキしてないで、帰りますよ」
うちのちびに、四文字熟語の解説をしていた時に浮かび上がったタイトルでした(*≧∀≦)