寝苦しいよる
真夏の夜中、あまりにも寝苦しくて目が覚めた。どうやらエアコンが壊れたらしい。
汗ばんだ体がヌルついていて痒く、掻きむしりまた寝ようと思うが、どうにも暑さがたまらず台所に水を飲みに行った。
台所では蛇口がきちりと閉まっていなかったからか、水滴がはじける音が響いている。
日中なら気にも留めないこの音も真夜中だからだろうか、ひどく不気味である。
意識を逸らそうと頭を振り、本来の目的である蛇口をひねると出るはずの水が出てこない。
これは何かがおかしいと周りを見渡すと、なぜか部屋がひどく荒れ果て窓ガラスも割れている。
あまりの異様さに思わず後ずさりをすると、床も棚も黒ずんだ液体が飛び散ったかのような汚れがある。
壁のほうに目をやると、そこには手の跡が点々と隣の部屋に続いていた。
それに呼ばれるように跡をたどっていくと、玄関前にたどり着く。
そこには誰かが倒れていた。倒れている誰かはパジャマを着ているがひどく汚れている。
近寄りたくもないが、そのまま放置するわけにもいかない。
なけなしの勇気を振り絞ってそばに立ち顔を確認する。
その誰かは、俺の顔をしていた。
思い出す。あの時も暑苦しくて目が覚めた。水を飲もうと台所に行くと、そこには部屋を漁る男がいた。おそらく強盗だったんだろう。
思わず声をあげる俺をめった刺しにして、強盗は荷物をまとめて出て行った。
熱かったはずなのにひどく寒くなって、なのに焼けるように熱いところもあって。
壁伝いに何とか助けを呼ぼうと玄関に向かい、俺は・・・
ふと自分の体を見下ろす。汗でヌルついていると思っていた体は全身が血にぬれていた。
そっか、おれ、もう死んでるんだ。
そう思ったとたん、急に外に出るのが怖くなる。
あの強盗がまだ外にいるんじゃないだろうか?でもこの家に金目のものはないだろう。もう来ることは無いはずだ。
暑かったはずの体はひどく寒くなり、おとなしく布団に戻る。
そういえば自分はなぜ先ほど布団を出たんだっけ?
ああ、そういえばそうだった。
真夏の夜中、あまりにも寝苦しくて目が覚めた。どうやらエアコンが壊れたらしい。