表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六銅貨の死事人  作者: 紅月ヨルカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/34

裏か表か4

スパークは静かに佇む月下の花屋へと足を向けた。ぼんやりと花々を眺めていると、店の奥からフィオラが現れる。透き通るような笑顔が、まるで花そのもののようだ。

「いらっしゃいませ。どのようなお花をお探しですか?」

スパークは生返事のように「とりあえず食べられるお花かな」と答えた。フィオラの顔に困惑の色が浮かぶ。

「食べられるお花?お腹でも空いているの?」

「ああ、空いてるよ。最近まともに肉を食べてなくてさ。給料日前で…っていうか、いつ給料もらえるんだっけ?」

フィオラは小さくため息をついた。

「そういうのは上司に聞いたらどう?スパークさん」

スパークは少し驚いたように、そして面白がるように目を丸くした。「あれ?バレちゃってた?どこかでお会いしましたっけ?」

フィオラは鋭くスパークを睨みつける。

「正式に会ったことはないけど、コソコソと裏で見ていたのは知っているわ。だから、あなたには能力を隠していたんだから」

「へえ、あれで能力を隠してるんだ。それは怖いな」

スパークは懐から取り出した禁煙飴を口に含んだ。

「あら、ここは禁煙よ。煙は駄目」

「あいにく禁煙飴でね。煙は甘いのしか出ないよ……って言っても、無駄なのはわかってる。うーん、今日は帰るかな」

花屋を去ろうとするスパークに、フィオラは思わず語気を強めた。

「待ちなさい!今日は何を偵察するつもりだったの?私の能力?あなたが動いているってことは、近々何かする気なんでしょ?」

スパークは笑みを浮かべたまま、フィオラの言葉をはぐらかす。

「ああ、今日はスナイパーモードにしないの?もう少し離れたら、ヘッドショットでも狙う?やめといたほうがいい。俺、目がいいから。じゃあまたね、フィオラさん」

そう言い残し、スパークは闇に溶け込むように街中へ消えていった。フィオラは彼の姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、ただならぬ気配を感じ取っていた。「(本気で何を考えているの、あの男は……)」決戦が近いことを悟り、フィオラは身構えるように準備を始めた。

昼が近づき、街は活気に満ちていた。人々の賑やかな声が響き渡る中、スパークは鍛冶屋の前に立っていた。店の外で武器や防具を売るアカリには目もくれず、椅子に置かれた**「ロンリーベア」**に近づいていく。

「よぉ、アカリちゃん。繁盛してる?」

スパークはそう声をかけながら、ぬいぐるみの毛並みを優しくなでた。

「ああ、スパークさん、こんにちは!ロンリーベアにも挨拶してくれたの?」

満面の笑みでアカリが答える。スパークもまた、優しい表情でぬいぐるみに触れた。

「ああ、コイツにも挨拶しとかないとな」

(特におかしな部分はない。ただのぬいぐるみだ。硬くもないか…ということは、やはりアカリ自身の能力でロンリーベアに変化を起こしている? じゃあこのぬいぐるみにこだわらなくても、他の物でも?まあいいか、とりあえずは)

心の中でそう考えながら、スパークはロンリーベアの尻に小さな装置をそっと仕掛けた。

「ちょっとベタベタ触りすぎたかな?あまりにももふもふだったからさ。ごめんね」

スパークが笑いながら言うと、アカリはさらに笑顔を輝かせた。

「スパークさんならどうぞ、好きなだけ触ってください!」

「ああ、もう大丈夫だよ。それより、配信でアカリちゃんを見たんだけど、ほどほどにね。捕まっちゃうよ。死事人に厳しいからさ、政府は…」

その言葉に、アカリの笑顔が消える。

「あ…スパークさんってそっち側だっけ?捕まえに来たってこと?」

アカリは警戒するように身構えた。スパークは苦笑いを浮かべる。

「いいや、別に捕まえる気ならもうしてるし、今はまだいいかなって思ってる…でもさ、死事人に憧れて利用して儲けようとしたり、ただの殺人を『死事人』だって言ってする奴もいるからさ。そういう意味じゃ、アカリちゃんが悪いわけではないけど、同じに見られるかもしれないってこと、わかるよね?」

諭すように語りかけるスパークに、アカリは複雑な表情で答えた。

「わかってるから、偽物は倒していってるよ。わかる範囲でだけど」

「そっか。それは俺の役目だから任せてほしいな。偽物とはいえ、人殺しは別に推奨してないんだ…それを理由に逮捕もできるんだよ?だから、できたら任せてほしいって……こんなんじゃ嫌われちゃうな。もう行くよ、じゃあね」

そう言って立ち去ろうとするスパークに、アカリは張り詰めた声で言った。

「仲間に危害を加えるなら、スパークさんでも容赦はしないよ。勝てるかはわからないけど…」

スパークは一瞬だけ振り返り、「ああ、そうならないことを祈ってるよ…」と、ほとんど聞こえないほどの声でつぶやいた。そして、人混みの中を中央局に向かって歩き始めた。


中央局に到着したスパークは、足早に大臣たちの待つ部屋へ向かった。手に持つ資料を配り、読み終えるのを待ってから口を開く。

「以上の4名が、死事人のメインメンバー、つまり本物と考えています。それ以外は全て偽物、模倣犯です。彼らとは関係も、組織としての繋がりも確認できませんでした……。むしろ、逆に偽物たちを始末しています。正直、彼らを完全に敵と見なす必要はないかと。彼らには信念があります」

大臣の一人が、怒りを露わに机を叩く。

「それでは示しがつかんだろう!お前は犯人がわかっているのに、逮捕すらしないのか?なんのための専任だ?全滅がお前の仕事だろう!」

別の声が続く。

「この報告書はなんだ?情が入っているのか?『能力を把握した上で、政府に手を出すな』だと?ふざけているのか!それに、このレンド・ムラサメは兵士ではないか。彼だけでも秘密裏に処刑しろ!世間に兵士の中に死事人がいると知られるのはまずいだろう!」

大臣たちが一斉にそうだそうだ、と賛同し、部屋の空気が一気に重くなる。

「しかし、彼はむやみに殺生するわけではない。一番、正義のために動いています」

スパークが反論したその時、突然、部屋のドアが勢いよく開いた。

そこに立っていたのは、神皇とミリアだった。

「ほう、レンドが死事人だったか。その報告書を見せてみろ」

神皇は大臣から力ずくで資料を奪い取り、内容を全て読み終えると、スパークに投げつけた。

「お前が専任だったな?ちゃんと仕留めろ。処刑しても構わん。私に銃を突き付けてでもやり遂げるような態度を取っていながら、お前がやっていた行動はなんだ?」

神皇の言葉に、後ろにいたミリアが笑いながら付け加える。

「仲良くしてたよ。でも正直、殺さなくてもいいかなとは思ってる。私も助けてもらったし」

「だそうだ。だが私は、お前の真意が知りたい。何が望みだ?死事人を味方につけて私を始末したいのか?それとも、死事人を自分の下に付けたいだけか?そもそも、このメンバーと、他の偽物との繋がりがない証明は?お前は甘すぎるぞ」

淡々とした口調ながら、神皇の言葉には冷たい怒りがこもっていた。スパークは拳を強く握りしめ、反論する。

「お言葉ですけど、**調べ抜いた結果です!**仲間関係ではないし、接触もなかった。逆に彼らを仕留めていっている。それは間違いありません」

「私に意見するのか。まあいい。レンドの上司を神殿に呼べ。あと、第三兵団の団長に、この死事人の4名の処刑をさせろ。こいつは役に立たない。では、失礼する」

そう言い残し、神皇はミリアと共に去ろうとする。スパークは思わず叫んだ。

「ちょっと待ってください!**今夜、ケリをつけます!**だから、それまでは俺にやらせてくれ!」

その言葉に、神皇は振り返る。

「ああ、わかった。だが、団長は向かわせる。これ以上は何も言うな」

神皇が完全に去っていくのを見届け、スパークは決意に満ちた表情でつぶやいた。

「わかってるよ。きっちりとケリをつけるさ……それが望みならな」

スパークは急いで、最後の準備を始めた。


その日の夕方、レンドたちは久しぶりに4人集まっていた。

「今日集まってもらったのはな……実は、偽物同士で組織化を企んでる連中が、酒場近くの路地裏に集まるって情報を酒場のマスターがくれたからなんだ」

レンドは刀の手入れをしながら続けた。

「組織化なんてされたら、ますます治安が悪くなるし、こっちも活動しづらくなる。人数もかなりのもんだろうし、と思って、こうして集まってもらった」

ライムは嬉しそうに、リヴォルダガーを研ぎながら

「最近は一人か二人での活動が多かったし、久しぶりにみんなでやれるって、なんか良いですね!」

レンドも笑ってライムに問いかける。「おう、腕は落ちてないか?」

「もちろん、やるよ!」

アカリも元気よく応える。だが、フィオラだけは警戒を隠せない。

「ねえ、その情報って本当なの?なんでマスターがそんな情報を?ちゃんと慎重に動いた方が良くない?」

レンドは小さくため息を吐き、だがすぐに楽しそうな表情に変わった。

「正直言うとな、ガセじゃないかとも思ってる。俺たちが行ったら、偽物どもが大勢で囲んでくる…だったらそれでもいいじゃないか!一網打尽にできるチャンスだしな!」

その言葉に、ライムは笑って応じる。「それもそうか。じゃあ、俺も負けないように頑張る!」

リヴォルダガーの弾丸やカートリッジを準備するライム。アカリとフィオラも、胸のモヤモヤを抱えたまま、レンドの言葉に従い準備を始めた。

夜、路地裏に到着した時、彼らはすでに異変を感じていた。

いつも賑わっているはずの酒場は閉まり、周囲は不気味なほど静まり返っている。そして路地裏の入り口付近には、6人ほどの死体が転がっていた。地面には赤黒い血だまりが広がり、その奥では、一人の男が煙を吹かせて座っていた。

「よぉ、遅かったじゃねえか、死事人の皆さん……。遅すぎてさ、みんな殺しちゃった」

男はさらに一服し、煙を吐き出す。それは紛れもなく、スパークだった。

「3人しかいないってことは、一人はスナイパーモードか?」

スパークは銃を素早く取り出すと、建物の上に向かって発砲した。激しい爆発音と炎、煙が上がる。

「目は良いって言っただろ?フィオラさん」

完璧なタイミングで放たれた一撃に、フィオラの動きは完全に止められる。スパークは頭をかきながら立ち上がった。

「悪いけど、アンタたちを仕留める専任なんだよ。散々警告してやったのに、結局こうなったか……。まあ、この状況も楽しもうぜ!」

スパークが構えをとる。レンドは刀を抜きながら、不敵な笑みを浮かべた。

「本当に良く喋るな……こうなるって俺も思ってたぜ。だから準備をしてた」

レンドが刀を抜こうとしたその時、アカリが前に出る。

「スパークさん、もしフィオラさんが死んでたらどうする?私、本気で許さないよ」

アカリはロンリーベアを構えた。スパークは禁煙飴を一気に飲み込むと、月明かりに照らされた笑みを浮かべ、こちらを見据えた。ニヤリと笑った。

「大丈夫でしょ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ