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六銅貨の死事人  作者: 紅月ヨルカ


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復讐者2

      前回までのあらすじ


配信で自分の父親を殺した犯人の手口と一致する六銅貨とリヴォルダガーを持つ黒ローブの男と「ロンリーベア」を背負ってる少女の映像を見たアリシア。犯行現場に残されていたマガジンからアカリが犯人と関係あると睨み、彼女がいる鍛冶屋へと向かった。

その道中、ラグナ・ツァラトゥストラと名乗る医者と衝突してしまう。悪態をつきながらも手を差し伸べた瞬間、アリシアは体に違和感を覚える。別れ際に彼が口にした「あなたにも……祝福あれ」という言葉に、さらに不信感を抱きながらも、痺れる手を気にしつつ、鍛冶屋を目指すのだった。


ずきずきと脈打つ腕の痛みと、どこか頭がぼんやりするような不調。

(一体なんですの!腕がジンジンして来ましたわ…なんか調子も悪いような…。もしかして雨で風邪でも…?いや、そんなことより仇を討たないと!)

アリシアは重くなった足を引きずりながらも、ようやく鍛冶屋にたどり着いた。

アリシア、鍛冶屋へ乗り込む

その頃には、鉛色の空は少しずつ明るくなり、冷たい雨は止んでいた。

濡れた地面からは、ほんのり土の匂いが立ち上っている。アリシアは体調が少しずつ回復していくのを感じた。

「なんか調子も良くなって来ましたわ〜!」

アリシアは気分を切り替えるように、高らかに叫ぶと、勢いよくドアをノックし、そのまま開け放った。

「ごめん下さいまし!もうどうして商売しないといけないのにドアを閉じたままにしてるんですの?やる気が感じられませんわ!」

彼女の甲高い声が、鉄の匂いが立ち込める静かな店内に響き渡る。

すると、奥から不機嫌そうな声が返ってきた。

「ハァッ?いきなり何?雨が降ってたんだから、湿気が入らないようにドアを閉めるのは当然でしょ?わざわざ文句を言いに来たの?」

アカリは眉間にしわを寄せ、アリシアの目の前に立つ。その小さな体からは、怒りのオーラが立ち上っているようだ。

しかしアリシアは動じることなく、涼しい顔で言い放った。

「あら!いきなり本音が出てしまいましたわ〜。ごめんなさい…。それより…」

アリシアはポケットからエコーリンクを取り出し、先ほど見ていた死事人の動画をアカリに見せる。

「これ、あなたですわよね?」

その言葉を誇らしげな笑顔で言い放った瞬間、地下への階段から、薪を抱えたライムが現れた。

「アカリさん、お客さん?」

その声を聞くやいなや、アリシアは**「見つけましたわ〜!」と叫び**、光沢のあるレイピアを抜き放つと、銀色の切っ先を迷うことなくライムへと突き刺そうとする。

「うわっ!」

ライムは驚きに目を見開き、抱えていた薪を盾にしてなんとか攻撃を防御した。

レイピアを鋭い音を立てて戻したアリシアは、ライムに向かって、冷たく澄んだ声で告げる。

「ふん!今のは挨拶ですわ。それより、お父様を殺したのはあなたですわね?ルドルフ・サンクレーンの名を忘れたとは言わせませんわ!」

「えっ?ルドルフ・サンクレーン…?覚えてないけど、俺が倒したの?」

ライムは頭を掻きながら困ったように首を傾げる。その反応に、アリシアは苛立ちを隠せない。

「はぁ?覚えていないんですの?貴族を殺したというのに、その程度ですの?」

「貴族…?ああ、あの少女を監禁してた?悪いのはアイツだよ。俺はやれることをやっただけで」

「そうですの?認めましたわね…。ではあなたに決闘を申し込みますわ!もちろん受けて下さいますわよね?断ればこの場で殺しますわ。この子も一緒にね!」

アリシアはそう言いながら、レイピアの切っ先をアカリに向ける。その冷たい光が、アカリの頬を照らした。

「わかった。それで気が済むなら受けるけど、でも悪いのは君の父親だよ?そこはわかって」

ライムの言葉に、アリシアは嘲るような笑みを浮かべる。

「ええ、あなたが何を言っても、小遣い稼ぎとしか思えませんわ〜。だってそうでしょ?今の動画、色々と拝見しましたけど…殺す必要がありますの?あれは厳重注意ぐらいの案件でしょう?それをわざわざ殺すなんて、小遣い稼ぎにしか見えませんわ〜」

アリシアの挑発的な声が、再び静かになった鍛冶屋の空間に響き渡った。

「それはいいけどさ〜、決闘なら庭でやってくれる?ここじゃ邪魔になるし」

アカリは呆れたように肩をすくめ、鍛冶屋の床に散らばった工具や金属片を見ながら言った。その声には、まるで子供の喧嘩を見ているような、どこか冷めた響きが混じっている。

「ほほほ、もちろんですわ〜!我が家の自慢の庭に案内しますわ〜。そのまま墓穴も掘って差し上げますわ〜」

アリシアは気分を良くしたように、高らかな笑い声をあげた。彼女の瞳には、既に勝利の二文字が輝いているようだ。

「ぷぷぷ、自分の墓穴を掘るってこと?」

アカリはクスクスと笑いながら、面白そうに言い返した。その言葉に、アリシアの表情が一瞬ムッと引きつる。

「あなたたちの墓穴ですわ〜!」

アリシアは怒りを押し殺したような声で言い放ち、再び上機嫌になった。

「それは良いけど、ここの庭で良くない?」

ライムは周囲の湿った空気と、土の匂いが混じり合う鍛冶屋の裏庭に視線を向けた。雑草が生い茂る、そこそこの広さがある場所だ。

「ここだとどんな罠があるかわかりませんし…。それに狭すぎますわ〜」

アリシアは冷たい視線を一瞥し、首を横に振った。


「まあ、いいよ。ライムくん、さっさと倒しちゃって。ムカついてきたし!ちゃんとリヴォルダガーと小手を付けといて。マガジンも煙幕とかはいらないから、普通にカートリッジとマガジンだけ持っていってね。よろしく〜」

アカリはライムに指示を出すと、再び工具をいじり始めた。彼女の指先が、冷たい金属の感触を確かめるように動く。

「アカリさん、これはいいかな?」

ライムが光を反射して鋭く輝くビームサーベルを見せた。そのキィンという、微かな起動音が、空気に響く。

「これはダメだよ。一瞬でケリがつくし、面白くないしさ」

「まあ、そっか」

ライムは肩をすくめると、黒いローブに手を伸ばし、リヴォルダガーを準備し始めた。その手つきは迷いがなく、滑らかだ。煙玉と各種マガジンを一つずつ確認しながら、静かにローブの中へ収めていく。

「あのさ〜?私も戦うの?それともあくまで人質〜?」

アカリはアリシアの顔をじっと見つめ、まるで面白半分に質問した。

「わたくしはあくまでも敵討ちがしたいだけですのよ。なので、その男さえ倒せればそれでいいですわ〜。あなたは見学なさって下さい」

アリシアは勝利を確信したかのような、満面の笑みで答えた。その笑みには、わずかな冷たさが混じっている。

「そっか。じゃあ、ピコハンは持って行くのやめとくか…あっ!それとも、ライムくんが使う?」

アカリは、床に置いてあった、一見するとおもちゃのように見えるピコハンをライムに差し出した。

「えっ?いいの?じゃあ使おうかな?」

ライムは軽い気持ちでそれを受け取ろうとするが、予想以上の重みに、「ゴンッ」という鈍い音を立てて、ピコハンを床に落としてしまう。

「ええ?重すぎるけど!?」

ライムは驚きに目を見開き、床に落ちたピコハンを見つめる。

「えっ?そうかな〜?」

アカリはひょいっと片手でピコハンを拾い上げると、ピコハンが落ちた場所の床にヒビが入っているのを見つけた。

「あ〜!ライムくんが落としたから、ヒビが入ってるじゃん!後で直しといてよ!」

アカリの怒った声が、静かになった店内に響き渡る。

「そんなことどうでもいいですから、早く行きますわよ?」

アリシアは苛立ちを隠せない様子で、二人のやり取りを遮るように言い放った。冷たい風が吹き込む鍛冶屋のドアを開けて、外に出る。

二人は不服そうに顔を見合わせ、小さく「はい…」と答えると、アリシアの後について、鍛冶屋を後にした。

      レンドとタカオの現場

一方、レンドと上司のタカオは、湿った空気と、埃の匂いが漂う、商業区で見つかった変死体の現場に来ていた。

「どうやらここみたいですね、タカオさん。そんなとこにいないで、ちゃんと見てください!」

レンドは死体から少し離れたところで、不気味に顔をしかめているタカオに言った。しかし、タカオは足を踏み出すことすらしない。

「いやよ、気持ち悪い!何あれ?ミイラってやつ?なんでこんな街中で急に見つかるのよ?おかしな話よ。仕事、数日は経ってるって話でしょ?ミイラなら数十年経ってもおかしくないけどね?」

タカオは心底嫌そうな声で、顔をしかめて愚痴をこぼした。

「いや〜、私にもわかりませんが…。数日らしいですよ。風に吹かれてここに来たみたいです。他の兵士の話じゃ、鎧とか一式が酒場横の路地で見つかったとか」

レンドは手元の資料をめくりながら、淡々と説明する。

「まあ、見つからないように違うところに飛んでいけばいいのに…。よりによってここなんて。でも、ミイラなら犯人はきっと異世界人の仕業よ。ある日突然能力に目覚めたスーパーヒーローが、積年の恨み〜とか言って兵士を襲ったに違いないわ!」

タカオは勝手に妄想を膨らませ、決めつけたように言う。

「なんでスーパーヒーローが兵士を襲うんですか?しかも異世界人の仕業って、さすがに法を破ってまでここに来て、積年の恨みもクソもないでしょ?冷静になってくださいよ!」

レンドは思わずツッコミを入れた。しかしタカオは、彼の声が聞こえていないかのように続けた。

「じゃあ、魔道具で覚醒した力を試したくて、適当に見つけた兵士を、積年の恨み〜って言ってミイラにしたスーパーヒーローの仕業よ。魔道具って見たけど気持ち悪いわよね〜。あれ使う人の気がしれない…」

タカオは想像だけで鳥肌が立ったかのように、えずく。

「いや、とりあえずスーパーヒーローから離れませんか?なんでヒーローなのに積年の恨みを持ってるんですか?そういう話ばっかり読まれてるんですか?もうちょっと純粋なヒーロー物を読まれた方がいいですよ!」

レンドが頭を抱えそうになったその時、背後から楽しそうな声が聞こえてきた。

「ずいぶんと賑やかな調査だね〜。面白いよ、二人のやりとりさ〜。いいじゃない、スーパーヒーローが人を変な能力で襲ってもさ〜。だって、最初は使い方がわからなくて殺しちゃう事もあるかもしれないしさ」

笑い声と共に、飄々とレンドの横に立つ人物がいた。軽薄そうな笑みを浮かべた男、スパークだ。

「ちょっとあんた、話しながら事件現場に入るな。部外者は立ち入り禁止だ。下がって」

レンドは険しい顔で、スパークに鋭い視線を向けた。

「はい、これ」

スパークはダルそうに言いながら、指先からホログラムを投影した。

「一応関係者だよ。聞いてなかったの〜?報連相って大事だと思うけど?まあ仕方ないか。上司があれじゃあ」

スパークはからかうようにタカオの方を見て、ククッと笑った。

「でもさ、レンドさん…いや、ムラサメさんって言った方がいいか?俺らがもらった時はさ、こんなんじゃなくてボロボロの身分証だったのに、今じゃホログラムだぜ。面白いよな〜、時代の進化っていうか、技術の進歩っていうかさ」

「どうでもいいけど、関係者なのか?って中央管理局所属って…。ここはどっちにしてもあんたが来るところじゃない。現場じゃなくて、室内から現場の状況でも聞いてればいいだろ?」

レンドは苛立ちを隠さず、皮肉を込めて言った。

「レンドさんさ〜、俺がそんな退屈なとこでずっと入れると思う?無理だよ。だから現場を見たいって言ってここに配属してもらったの。あくまでも視察ってことで、少しの付き合いだけどさ〜。そういう話も聞いてないの?」

スパークは再びタカオの方に視線を移す。

「あんた隊長だろ?ちゃんと部下に情報教えないと混乱しちゃうでしょ?ちゃんとしないなら、そのように団長に伝えるけど、いいのかな?」

タカオは血相を変え、顔を青ざめさせた。

「申し訳ありません…。ちゃんと掲示板には貼っていたのですが、確認してなかったようで…」

タカオは震える声で言い訳をする。しかし、スパークは面白そうに笑い飛ばした。

「えっ?貼ってなかったよ何も。だって、ここに来るって言ってないもん、誰にも。あはは、大丈夫。視察は本当抜き打ちってことで、現場には言わないでって言っておいたんだよ。ごめんごめん、ちゃんと良いように言っとくからさ」

スパークはからかうようにタカオの肩をポンポンと叩く。タカオの顔は引き攣り、完全に青ざめていた。

「まあ、いいや。ちょっと見せてよ、そのミイラをさ」

スパークは冷たく湿った路地裏の空気をものともせず、死体のそばにしゃがみ込むと、顔を近づけて、じっくりと観察し始めた。

「うわ〜、本当にミイラだわ。これ、これさ、血とか抜かれたっていうより、何かで溶かされたって感じだな…。でも、別の力が作用して、溶かされ切れなくてミイラになったって感じかな?どう思います?お二人は」

スパークはミイラから顔を上げ、楽しそうな表情でレンドとタカオに問いかけた。

「あ〜、タカオさん、スーパーヒーローの件は案外当たりかもしれませんよ。と言ってももう聞きたくはないけど。ただね、積年の恨みではないね、これは…。下手したら、もっとたちが悪いかも?」

スパークの表情が、一瞬真剣なものに変わった。

「どうしてそこまでわかるんです?見ただけで、ただのミイラですよ?」

レンドはスパークの言葉の信憑性を疑うような、戸惑った声で言った。彼の理性が、スパークの直感的な発言についていけていないようだ。

「でも、スーパーヒーローの線を認めて下さったし、何か深い考えがあるのよ、ムラサメさん!」

タカオは事態の深刻さに気づかず、レンドに媚びるような、上ずった声で言った。

「えっ?やだな〜、二人とも期待しちゃって。あくまで見て触れた感じで言うんですよ?普通、殺意があれば毒だけだと思うんですよ。でもね、このミイラはさ、回復されてるんですよね…」

スパークは再びミイラに手を伸ばし、その乾いた皮膚の感触を確かめるように触れた。彼の渋い表情には、不可解な事実に対する、深い疑問が浮かんでいるようだ。

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