変わりゆく世界2
コロシアムの開幕
両者が今か今かと張り詰めた空気をまとい、コロシアムに静寂が満ちる中、スピーカーからミリアの間の抜けたような、それでいてどこか高揚した音声が流れてきた。
「は〜い♪ 両軍、準備は宜しいですか〜? 無制限と言っても、レオくんが飽きたら終わりね♡ 特別死合! スパーク・スコーピオン対第二兵団の兵士100人〜! 泣いても笑っても一本勝負! では、始めて下さ〜い!」
ミリアの最後の言葉が終わるか終わらないかのうちに、乾いた銃声がコロシアムに響き渡った。その音は、まるで合図のようにスパークの耳に届く。
「今、両軍つったか? 俺は一人なんだけどな」
スパークはにやりと笑うと、履いている黒い靴の靴底のブースターから、シューッと空気を切り裂くような噴射音を響かせた。足元から吹き上がる熱風が、コロシアムの空気を揺らす。その勢いのまま、彼は軽々とバク宙をし、そのままキックを繰り出し先頭にいた兵士の胸元を正確に蹴り飛ばした。
吹き飛んだ兵士は、鈍い衝突音と共に後ろの兵士たちを巻き込み、まるでドミノ倒しのように次々と地面に倒れ込んでいく。彼らの鎧がぶつかり合う、ガシャン、ガシャンという音がコロシアムに響き渡った。
「まあ……一人でも100人分の働きはするけどな……!」
スパークはニヤリと口元を歪め、その視線は倒れた兵士たちの向こうにいる、残りの兵士たちへと向けられていた。彼の周囲に、微かに甘い煙の匂いが漂う。
スパークの奇襲と兵士たちの連携
「おい! 油断するな! 素手でも何をしてくるか分からんぞ! 各自陣形を維持しつつ、確実に詰めて行け!」
小隊長たちの怒号と、それに続く指示の声が、兵士たちの間を駆け巡る。彼らは互いにアイコンタクトを送り合い、まるで一つの生き物のように連携を取ろうと動き始めた。鎧が擦れる音、武器を構える音、そして兵士たちの荒い息遣いが、コロシアムの空気を重くしている。
「へぇ〜、いいね〜。小隊同士、連携は出来てるんだ〜。じゃあ、こっちも油断しないように攻めないとな」
スパークは感心したように呟くと、スッと右手のイヤホンを耳に装着した。カチリ、と小さな音が聞こえる。彼はゆっくりと、まとまって動く小隊へと近づいていった。
その瞬間、スパークの背後から、待ってましたと言わんばかりに一人の兵士が剣の切っ先を光らせながら斬りかかってきた。ヒュッと空気を裂く音がするが、スパークは振り返りもせず、まるで背中に目があるかのように軽く身をかわす。剣の冷たい感触が、彼の服をかすめるだけだ。
かわされた兵士の顔に驚きが浮かぶ間もなく、スパークはその兵士の腕を掴み、そのまま軽々と投げ飛ばした。兵士の体が宙を舞い、地面に叩きつけられる鈍い音がコロシアムに響く。
「う〜ん? 最近の兵士は正々堂々正面からでもないんだね〜。それでいいんだけどさ、実戦は」
スパークはそう呟くと、突然、正面の兵士に足払いをかけた。兵士の体がフワリと浮き上がり、バランスを崩した瞬間、スパークは空中に蹴り上げて、再び靴底のブースターを噴射した。炎が噴き出す勢いのまま、宙に浮いた兵士をさらに上へと蹴り飛ばす。兵士は悲鳴を上げる間もなく、天井近くまで吹き飛んでいった。
「さて、何人倒れるかな〜?」
スパークは、ブースターの力で地面に着地せず、空中に留まりながら、吹き飛んだ兵士たちの様子を見下ろした。その間に、彼は他の兵士に音もなく接近する。
「目で追うとやられるぞ!」
スパークは兵士の兜を軽く叩き、その反動を利用するかのように背後に素早く回り込んだ。視覚を奪われた兵士は、何が起こったのか理解できないまま、背後からの強烈な蹴りを受け、前方へと吹き飛んでいく。
「だから言っただろ? やられるって……」
スパークは、まるで呆れたかのように小さく頭を掻いた。彼の顔には、依然として不敵な笑みが浮かんでいる。
スパークはコロシアムの中央で、まるでダンスを踊るかのように円を描きながらリズミカルにステップを踏み、周囲の兵士たちを軽々と蹴り、殴り飛ばしていた。彼の足元からブースターの熱気が微かに立ち上り、一撃ごとに風を切る音が響く。殴られた兵士の鎧が鈍い音を立て、体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
「ちゃんと追えてるんなら、来いよ!」
スパークは挑発するように手のひらを前に出し、グイグイと兵士たちを誘う。その声には余裕が満ち溢れている。
「くそ!馬鹿にしやがって!迅速部隊、一気に仕留めろ!お前たちならやれる!行けぇぇ〜!」
小隊長の怒声がコロシアムに響き渡る。その声には、苛立ちと焦りが色濃く滲んでいた。
「やれやれ、迅速部隊? 俺より早かったらいいな」
スパークがそう呟いた、その刹那だった。ヒュン、という鋭い空気を裂く音がしたと同時に、左右から鉤爪を付けた二体の兵士が、まるで影のようにスパークに斬りかかろうと突っ込んできた。彼らの爪が光を反射し、スパークの頬をかすめる。
「くっ……」
スパークの顔から、一筋の血がツゥーッと流れ落ちる。痛みを感じる間もなく背後を振り返るが、そこに彼らの姿は見えない。
「上か!」
スパークは反射的に拳を振り上げるが、それは空を切る。二体の鉤爪兵は、すでにスパークの攻撃をかわし、左右へと素早く避けて次の突撃準備に入っていた。彼らの鉤爪が、いつでも飛びかかれるように構えられている。
「へぇ〜、やるじゃない!」
スパークは、楽しげに口元を歪めると、耳に付けていたイヤホンをスッと外し、構え直す。カチリ、と小さな音がした。その間にも、他の兵士たちがジリジリとスパークとの距離を詰めてくる。彼らの足音が、コロシアムの床を擦る音のように響く。
「ああ、今はあの迅速の相手をしたいから、動くなよ。来たら、俺も本気になるぞ……」
スパークはそう言って、口から静かに白い煙を吐き出した。甘い香りが、コロシアムの空気に薄く広がる。彼の言葉には、明らかな「圧」が込められていた。
その瞬間、スパークから放たれた一瞬の圧力に、兵士たちは足がすくんだかのように動きを止めた。彼らの間に、微かな動揺が走る。だが、すぐに小隊長の声がその動揺を打ち消した。
「いや!怯むな!相手は一人だ!一気に畳み掛けろ!」
その言葉に、兵士たちは再びスパークに向かって一斉に押し寄せてきた。鎧が擦れ合う音が、再びコロシアムに満ちる。
すると、スパークは懐からもう一本のペン型禁煙飴を取り出し、口に咥えた。2本の白い棒が、彼の口元で不敵に揺れる。
「なあ、お前ら……俺が禁煙飴を2本咥えたらどうなると思う……?」
スパークはそう言って、ゆっくりと不敵に立ち上がった。兵士たちの視線が、彼の口元に集まる。
「二つの味が楽しめる」
スパークはニヤリと笑った。その瞬間、兵士たちの間から嘲笑にも似たざわめきが起こる。
「くだらんことを〜!もう疲れてるみたいだぞ!行け〜!!」
小隊長の苛立った声が響き渡り、兵士たちが一斉にスパークに迫ってくる。彼らの足音が地響きのようにアリーナを震わせた。
「あ〜ぁ、マジなんだ? 別にいいけど」
スパークはそう呟くと、口に咥えた2本の禁煙飴から、一気に大量の煙を吹き出した。フシューッという激しい噴射音と共に、甘い香りのする白い煙が、アリーナ全体に瞬く間に充満していく。視界は真っ白な煙に覆われ、一瞬にして兵士たちの姿が見えなくなった。
その直後だった。パンッ!パンッ!と、乾いた銃声が煙の中から響き渡る。その音と共に、煙の向こうで兵士たちが血を流してバタバタと倒れていく音が聞こえる。
「まさか、煙幕か!?」
混乱した小隊長の声が、煙の中でこだました。
「ああ、そうだよ、隊長さん」
背後から、ひどく穏やかな、しかし冷たい声が聞こえた。小隊長がハッと振り返る間もなく、スパークの姿が煙の中からヌッと現れる。
「禁煙飴2個で煙も二倍だ……覚えとけ」
パンッ!と、乾いた銃声が耳元で炸裂した。小隊長は悲鳴を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。彼の体から、熱い血が噴き出す。
スパークは、さらに煙を吹き出し、混乱する兵士たちの中で、さっきの鉤爪兵たちの位置を正確に捉えていた。煙の中で視界が遮られる中、彼は素早く縄を取り出し、二人の兵士の足をあっという間に縛り上げる。二人が動けなくなったところで、スパークはわざと適当な方向にパンッ!パンッ!と銃を撃ち、二人が別々に逃げようと足掻いた瞬間、十手から電撃を放った。ビリビリッ!と空気が震える音が響き渡り、二人の兵士は激しく痙攣し、そのまま痺れて動けなくなった。彼らの体に、焦げ付くような匂いが微かに漂う。
スパークは、痺れて動けない一人の兵士に近づくと、そのまま素早く一突きする。そして、すぐにブースターを噴射し、もう一人の痺れた兵士へと電光石火の速さで迫った。
「さっきのお返しだ」
スパークは、痺れた兵士ごと突っ込んで行き躊躇なくその鉤爪で兵士の首元を貫通させた。ゴロッと鈍い音がして、兵士の体が痙攣する。そして、痺れて動けないままのその兵士の頭を、パンッ!と乾いた銃声とともに撃ち抜いた。コロシアムに、焦げ付くような火薬の匂いが充満する。
その時、コロシアムの片隅、観客席の陰になっていたような場所から、重低音を響かせながらゆっくりと歩いて来るものがいた。まるで地響きのようなその足音に、アリーナの空気がビリビリと震える。視界に現れたのは、ランスと巨大な盾を携えた、およそ3メートルはあろうかという大きさの兵士だった。その巨体は、周りの兵士たちを子供のように見せ、観客席からもどよめきが起こる。
「おいおい、あんなの居たか?途中で増やすのはなしって言ったよな?」
スパークは呆れたように眉をひそめ、不満そうに呟いた。その声は、コロシアムの広い空間に微かに響く。
大臣の一人が、挑戦的な笑みを浮かべ、指で観客席の特定の椅子を指差した。
「ああ、実は参加はしていたんだ。あそこで見ていただけでな」
「あはは、いや〜、そんなデカブツがいたら目立つと思うけど、全く見えなかったな……まあ、気にしないけどな。ドラゴンと一緒で、でかいのは倒し甲斐があっていい!」
スパークは口元をニヤリと歪め、不敵な笑みを浮かべた。彼の視線の先には、構え直す巨人兵が立ちはだかっている。その巨体の背後には、複数の兵士が銃を構えているのが見える。彼らの銃口が、スパークの動きに合わせて微妙に揺れる。
「下手に動いたら、あの銃でパンッ、か? いいね〜。レオくんも飽きてくる頃だろうし、そろそろ終わらせるか?」
スパークはそう言って、神皇が座る特別席の方をちらりと見た。その視線に気づいたのか、ミリアが自分に向けられたと思ったのか、ニコニコと笑顔で手を振った。彼女の明るい声が、スピーカーから場違いなほど軽やかに響く。
「ちっ……気にくわねぇ……」
巨人兵は、スパークの挑発的な言葉と視線に、低い唸り声を上げた。その声は、ゴロゴロと雷鳴のように腹に響く。
「そろそろ軽口も耳障りだな」
巨人兵が、重々しい金属音を立ててランスを構え、突撃の準備を始めた。その背後の兵士たちも、一斉に銃を構え、銃口がスパークに狙いを定める。カチャリ、カチャリと薬室に弾が込められる音が、緊張感を一層高めた。
攻防と反撃の狼煙
「さて、どっちが勝つかな?」
スパークは不敵に笑いながら、足元に倒れている兵士が落とした長剣を2本拾い上げた。冷たい金属の感触が、彼の指先に伝わる。1本は素早く腰のベルトに差し込み、もう1本を手に持つと、ブーツのブースターを噴射させ、シューッと空を切る音と共に一気に巨人兵との距離を詰めた。炎がスパークの足元から吹き上がり、アリーナの床を焦がす。
だが、巨人兵はスパークの動きを冷静に見切っていた。
「ワンパターンだな」
巨人兵はそう吐き捨てると、巨大な盾をスパークの長剣めがけて素早く前に出し、ガキンッ!と金属がぶつかり合う鈍い音を立てて、スパークの攻撃を弾いた。その盾からは、火花が散る。
「へぇ〜、脳筋じゃないのか。ちょっと嬉しいね〜」
スパークは、弾かれた勢いを殺さずに後ろに下がりながら、ポイッ、ポイッ、と手中に隠し持っていた手榴弾を地面に落としていった。コロコロと転がる手榴弾が、巨人兵の足元で静かに煙を吐き出す。しかし、巨人兵は動じることなく、その巨大な盾で素早く手榴弾を覆い隠し、爆発を防いだ。ドォン、という鈍い音が盾の裏で響く。
同時に、背後の銃を構えた兵士たちから、パンッ!パンッ!と乾いた銃声が連続して聞こえてきた。数えきれないほどの銃弾が、スパーク目掛けて飛んでくる。だが、スパークはそれを身につけたコートで器用に弾きながら、流れるように体勢を整えていく。彼のコートから、チリチリと火花が散る。
「さすがにデカいだけじゃなくて、防具もあって硬いな。スピードにも追いつくし、厄介か……」
スパークの表情に、微かな焦りの色が浮かんだ。その瞬間、巨人兵のランスが、唸るような風切り音を立てて、スパークめがけて一直線に突撃してきた。その猛攻に、スパークは避けきれず、もろにその一撃を食らった。
「ぐはっ……」
スパークの口から、ゴボッと吐血がこぼれ、アリーナの床に赤い飛沫が散る。体勢を崩した彼は、そのまま地面に叩きつけられ、鈍い音を立てて落下した。観客席からは、歓声と、一部の安堵の声が聞こえる。
他の兵士たちが、チャンスとばかりにスパークに駆け寄り、止めを刺そうと剣を構える。だが、その時だった。スパークは倒れた状態から、バッとまるでバネ仕掛けの人形のように飛び起きると、目の前の兵士一人を掴み、そのまま勢いよく背負い投げで地面に叩きつけた。鈍い衝撃音が響き渡る。
さらにスパークはしゃがみ込み、別の兵士に勢いよく頭突きをかました。ガツン!と骨がぶつかるような音がする。その衝撃で兵士はよろめき、その隙にスパークは大きくあくびをしながら、突き上げるように拳を兵士の顎に叩き込んだ。
「お前たちならこんな状況でも余裕なのに……なあ、あいつは強いって。副団長って、あいつよりも強かったのか? それはそれで面白いけど、ちょっと本気出すぞ、俺も」
スパークはそう呟くと、再びイヤホンを耳に装着した。カチリ、という小さな音が、彼の決意を表しているようだった。彼の瞳の奥で、微かな光が宿り始める。
禁煙飴を再び2個咥えると、スパークは深く煙を吸い込み、ゆっくりとそれを吐き出した。吐き出された煙は、コロシアムの熱の帯びた空気に溶けていく。
「誰かが言ってたけどな〜煙吸うと血管縮んで痛み和らぐらしいんだ…まあ効果なくてもいいや、少し動ければ…」
彼はそう呟くと、左目を触った。その瞬間、スパークはブースターで一気に加速し、巨人兵を飛び越えた。彼が飛び越えるや否や、背後にいた兵士たちを銃撃で次々と倒していく。乾いた銃声がコロシアムに響き渡り、火薬の匂いが薄く漂う。
弾の残量を確認し、「2発か…1発で十分だ」と彼は呟いた。スパークが飛び上がると巨人兵が「そうはさせるか!」と盾で突き飛ばそうとするが、巨人兵は電流を纏った十手でそれを防いだ。瞬間、バチバチと火花が散り、熱がスパークの肌をかすめる。間髪入れずに、巨人兵の手から縄が飛び出し、スパークの首に巻きついた。だが、彼は冷静だった。真上でブースターを使い、一気に巨人兵の兜を外すと、頭上からパンッと乾いた音が響き、1発の銃弾が撃ち込まれる。大量の血が吹き出し、鉄と血の匂いが混じり合う。巨人兵はゆっくりと、地面へと倒れていく。
「ふぅ〜」と煙を吐きながら、スパークはゆっくりと滑空して着地した。
「どうした?まだやるか?今の俺は弱ってるし余裕で倒されてやれるかもしれないぞ?」
彼は挑発するようにそう言い放ち、その妙な言い回しに、兵士たちは一瞬、動きを止めた。
まるで意味を測ろうとしているかのように。
だがスパークは、まったく意に介さず、傷のある腹をゆっくり撫でていた。周りの兵士たちは困惑した表情を浮かべた。その時、傍観していた第二兵団の団長が立ち上がり、舞台に向かおうとする。しかし、大臣が血相を変えて駆け寄ってきた。
「待て!神皇様の前で恥を晒したら、もう第二兵団はおしまいだ!今の兵たちも処刑、お前も良くて追放、悪ければ処刑になるんだぞ!その覚悟があるか?やめておけ!」
大臣の必死な声がコロシアムに響き渡る。スパークはゆっくりとイヤホンを外すと、冷徹な目で大臣を見据えた。
「お前みたいなのが時代を悪い方に導くんだ!古い考えは捨てた方が良い。それができないなら──」
ドスッと鈍い音を立てて、大臣の頭が撃ち抜かれる。生々しい血飛沫が飛び散り、鉄錆のような匂いが鼻を突く。大臣はそのまま前のめりに倒れ伏し、コロシアムに戦慄が走った。
「死んだ方がマシだ!」
スパークはそう吐き捨てると、そのまま静かに銃を神皇に向けた。周りがあたふたとする中、二人はしばらく無言で睨み合った。緊張感が張り詰め、静寂が支配する。やがてスパークは、「バンッ」と口で言い、指を銃の形にして撃つ真似をした。
その動作に、コロシアムの空気は一瞬緩む。スパークはゆっくりと銃をしまい、禁煙飴を舐め始めた。甘い香りが微かに漂う。
彼の様子を見届けると、神皇は静かに笑い、背を向けてゆっくりとコロシアムを後にした。その足音は、静寂の中でどこか不気味に響いた。
ミリアも「は〜い♡レオくんが飽きたので終わりで〜す」と明るい声で告げた。彼女の声がコロシアム全体に響き渡る。「配信を見てくれた人たちありがと〜後で雑談タイムにするのでしばらく待っててねじゃあ一旦切るね〜」彼女はチュ♡と可愛らしい音を立てて、神皇の後を追っていく。
「試合終わりだってさ。もう手を出すなよ〜。もう銃も弾ないし、十手も縄もぼろぼろなんだからさ。勘弁してくれよ〜」
スパークは笑いながらそう言うと、ゆっくりと猫背になり、横腹を抑えた。体から煙が立ち上る中、彼の口笛だけが風に乗って、コロシアムの空へと消えていった。痛みと疲労が全身を蝕むが、その口笛はどこか軽やかで、彼がまだ戦意を失っていないことを示しているかのようだった。




