第22話急転直下(きゅうてんちょっか)
「全く役にたたないじじいだのん」
声のするほうを見る。
そこには古めかしい人形が浮いていた。市松人形を想像していたが違う。どちらかというとティディベアーのような、ぬいぐるみだ。
「お前が座敷荒か?」と問う
「なにを失礼なん、荒らしだなんて、沙也加にとっては心の隙間を埋めた福の神ですん」
どこぞの笑ってるセールスマンのようなことをいっているし、なんでいちいち語尾にんつけてるんだこいつ。
「沙也加のことを知らぬお前らに貧乏神呼ばわりされるのはたまったもんじゃないん」
「ム、ムギちゃんが、しゃべった」沙也加が、驚きの声を荒げる。どうやらこいつの話すことは聞こえるらしい。
「なにをいまさらん?夢の中ではよくお話してたよん、さあこっちにきなん」
手招きをする。まあぬいぐるみなんで手が短いから正直招いてるようには見えんが。
しかし沙也加は恐怖の表情を浮かべて後ずさりしている。そらリアルに人形が、宙に浮いて話していたら恐怖だろう、
「いや、いや、」へたりこみながら後ずさりしている。
だめだ完全にとりみだしている。
「いやん、今さらそれは無いのねん、今まであなたのためにどれだけしてやったかん?」微妙にだが薄ら笑いを浮かべているように見える
「あの子が嫌いだからといわれれば殺し、両親がいないから、さみしいといえば会社を倒産させて、家に、母親をいさせるようにしたり、数え上げればきりがないのん」
そうか、こいつはいわゆる残酷な形で望みをかなえるタイプの神か、
しかし、そんな奴が対価に何を求めてるんだ。
「いゃああああ、いや、あっちいって、あんたなんか知らない」
「それだけはいっちゃだめなのん、あれだけあんたのために尽くしたのにまだ足りないん、なら」
そういって人形が目を閉じる。次の瞬間カット目を開き 大きな声で叫んだ
「一緒になるん、わたしは沙也加になるん、沙也加は私の物もう一つになってしまうん」
体を手に入れるのが目的だったのか?
禍々しい気配が俺の張った結界を浸食してくる。このままで結界を破られるのは時間の問題だ。、何とか考えないと。
「シュリーなんとかできないのか」
「なんとかって言っても」
「あいつだって一応神なんだろ?貧乏つくけど親戚みたいなもんじゃないのか」
「無理よ、あれ神なのに妖異化しかけてる」
そんなのありなのか?じゃんけんのチョキとグーのあいのこなんて存在しえないだろう。
ムギのさらに禍々しいオーラの威力がましている。
もうだめだ、結界を維持できない。
「さあ、沙也加よ、われのものになるん」
言われると意識を失ったように沙也加フラフラと立ち上がって歩き出す。
「沙也加を、抑えてくれ俺は印で手が離せない」
「まかせて」シュリーが沙也加を後ろから羽交い締めにする。が、
「ぐえおおおお」おっさんのような野太い声で雄叫びをあげると、後ろのシュリーを片手でぶんなげた
激しくテーブルに叩きつけられるシュリー
「シュリー!」
思わず印を結んだ手を離してしまった。
しまった、と思った時にはすでに、座敷荒らしは沙也加の頭に取りついていた、
「これでわれは現世の体を手に入れるのん、人の実態を手に入れたわれは最強の存在になるん」
そう言って沙也加の口の中に入ろうとしている。ムギを叩き落そうと踏み込むが間に合わない。
瞬間沙也加のポケットから真っ黒な光が放たれた、座敷荒らしが、放っていた禍々しい空間が解除される。それと同時にムギもただの人形にもどって落ちた。
いったい何が起きたんだ。?
たたきつけられたシュリーを起こすと、沙也加を見る。ただ立ち尽くしている沙也加のポケットを探ろうとしたら手を払いのけられた。
「やっと手に入れたわ」にまぁとした笑みを沙也加が浮かべてる。
手に入れた?一体何を。倒れた沙也加を気遣うところなんだろうが、
「君はだれだ」思わず問いただす。
「 さすがにわからないみたいね、私は沙也加よ、別に何者でもないわ」
そういって沙也加はいきなり石を飲み込んだ。座敷荒らしの気配は完全になくなった。
「そうか、そういうつもりだったのね」シュリーがつぶやく、
「なかなか察しがよさそうねそっちのおばさんは」
シュリーには何かわかったようだが、俺にはさっぱり状況が呑み込めない。
「ねえ、大我、あなた私と一緒にこない?横の婆よりよっぽどいい思いさしてあげれるわよ?」
うむ、状況がいまいち呑み込めないが、
「なかなか魅力的なお誘いではあるね」この時点で俺を大我と呼んだということはシュリーとは兄妹は無いことはばれているのだろう、
えっ?という顔でシュリーがこちらを見る。
「前は断られたけど考え直してくれたのね、やっぱり私の魅力に落とされない男なんていないのよ」勝ち誇った顔をした瞬間
「だが、断る」
やっぱこれだよね一度はリアルで言ってみたいセリフなかなか言えるシチュエーションないからなあ、
相手が調子に乗ってるところを挫く。いいねえ
「あなた言ってる事わかってるの?」沙也加の表情は変わらない。かえって不気味でもあるが。
「わかってるさ、君よりはシュリーのほうが何倍も」
「何倍も?」
「恐ろしいということがね」
いやあ下手なことを言うと何されるかわかったもんじゃないんでねえ
「あなたこんな状況でよくそんなおチャラけていられるわね」とシュリー。本気なんだけどね。
「もうわかったはあなたとは良いパートナーになれるかもと思ったけど所詮人ね」
本当にさっきから表情が動かない。
「君だって人だろうに」
「私は違う私は神よ」沙也加はそういうと不敵な笑いを浮かべた。
急転直下
物事の情勢が急激に動き始め解決に向かうこと




