第17話速戦即決(そくせんそっけつ)
ピンポーンとインターホンが鳴った。
こんな時間に一体誰だ。
モニターを覗き込むとそこには舞さんの姿が。
関係者には家の住所は教えてないはずだ。もちろん舞さんにもだ。こいつは一体
「大我、気をつけて奴はおかしい。何か違う感じがする」後ろからモニターを覗き込んでいたシュリーもシリアスモードだ。俺は無言でうなずく
「はい、どちら様ですか?」見えてはいるがあえて聞いてみる。
「舞です。」と軽快な答え。
「失礼ですがどちらの舞さんですか」
「蒲生です。蒲生舞です。」
なぬ?
こいつは間抜けな奴かも。まあ妖異にしてみれば人の名前なんかどうでもいい話なんだろうが。
どうしたものかと思案していると
「ねえ、入れてくださらないんですか?」
と体をくねくねさせ始めた。少なくてもそんなことをするタイプではなかったはずだ舞さんのイメージが台無しだ、可哀そうに。
どうする?と俺は、シュリーに相談する。いきなり相手が乗り込んでくるのは想定外だ。逆に考えると探す手間が省けたとも思えるが。
「妖異は家に招き入れてはだめよ。そうすると奴らの結界の中に取り込まれるわ」
こちらの意をくんでシュリーが警告する。
なんか昔話でよく聞く招き入れてはダメとは、そういうことになるのか
しかしいつまでも家に前に居られても困る。ここはとりあえずお引き取りいただくことにするか。
「すまない、部屋汚くて女性を招ける状態じゃないんですよね。」
しばらく考えているのだろうかそっぽを向いている
「今度?今度っていつですか。」むう、なかなか粘るな、しつこい。
えっーとですね。俺が口を開こうとした瞬間脇を何かが駆け抜けていく。
「てめーが死んだ後だよ!」
罵声とともにシュリーがドアを蹴り飛ばした。
ドア付近にいた舞モドキはドアに吹き飛ばされて1階まで落ちていった。
あまりにも一瞬の出来事に理解が追い付かない。
「ぼゃっとしない!」シュリーの言葉にハッと我に返る。というか奇襲するなら先に言ってくれよ。
俺はマンションの下を覗き込む。落ちていれば舞もどきは1階の駐車場にいるはずだ。暗くて見えにくい。眼をこらして探すが、見当たらない。
「ぬははは、ぬかったわ、よくぞわしの変化を見破ったな。」
下じゃなく目の前から声がする。
いやそこは驚くところじゃないでしょ、魔王ムーブでもかましてるんか。
見ると大きなムカデがこのマンションに巻き付いてる。やばい、トラウマが、見るな、落ち着け、呼吸を整えろ、ゆっくり目を開ける。大丈夫だ、今までのように呼吸が乱れることもない。
「ぬ、おぬし、神の加護があるのか」
さすがシュリー効果と実感しつつ、大きいと気持ち悪さ半減なんだなと。小さくて足がごちょごちょしてるから気持ち悪いんだろう勝手に納得した。
このマンションが、八階建てだからそれを上回っているということは、かなりの大きさだ。
いきなり乗り込んできたからには何らかの勝算があるのだろうか。
ここはやっぱり一度退治している方にお願いするか。
「俵藤太来臨守護急急如律令」と俺は唱える。大ムカデ退治と言えば彼だ。
暫くの沈黙。体には何の変化もない。失敗か?俵藤太降ろせない?
「なんだ?何もしてこないのか」何故か余裕の大ムカデ。
「馬鹿そっちは通称で本人がそれを認識してないのよ」とシュリー
なるほど、読み間違えか、となれば!
「藤原秀郷来臨守護急急如律令」
今度は成功したような気がする。体中に力がみなぎってくる。過去にムカデを退治した時の知識も俺の中に入ってくる。
「おおお、待っておったぞその時を。貴様に復讐するために」と歓喜の声が聞こえる
待ってたって、なんでムカデが俺の能力について知ってるんだ。が、ともかく此処だと狭くて戦いにくい。さらにこんな街中で怪獣なみの化け物と対峙するのはまずい。さっさとけりをつけないと。奴の弱点は、確か。
藤原秀郷が教えてくれる、弱点は眼だと。人目を避けて広い場所へ行かないと。いったん非常階段を駆け上がり屋上へとでた。
秀衡を呼んだことによって彼が使っていた弓と刀も具現化している。
屋上につくと奴を見た。。尻尾を出してきている曳航肢ってつだ。ムカデって奴は攻撃されると頭を守るために頭に似せた尻尾を差し出すんだっけ。
「なんだ、怖がってるのか?んなに高々と尻尾出して」
「そ、そんなわけあるまい。これは威嚇だぁ頭が二つあっては恐ろしかろう」
明らかに動揺している。所詮は虫だな。
俺は矢をつがえると奴の目を狙って矢を射た。が、やつは身を翻して矢をよけた。
秀衡の腕をもってしても当たらないか。目が急所なのはわかっているんだが。
「なんだそのヘっぽこな矢は!貴様衰えたか、ではこちらかも行くぞ」
言うやいなや頭からこちらに突っ込んでくる。
すんでのところで刀で奴の頭の横っ面を切りつける。刀がはじかれる.
しかし、織り込み済みだ。はじかれる勢いを利用して頭の突進をかろうじてかわす。
そこに、触角もどきのムチのような攻撃がくる。転がってこれを交わす。
転がってよけるのは体制がくずれるので悪手なのだが、そんなこと考えてる暇なんてない
起き上がった所に奴の顔がせまる。
刀を縦に構えて両手持ちで受ける。鍔迫り合いのような感じだが。奴のほうが圧倒的に強いましてや口からの悪臭がきつい。
「お前、胃が悪いんじゃないのか、胃が悪いとお口臭いんだぞ」
自分でも不思議だが、これだけ緊迫した状況ではあるが不思議と周りは見えている秀郷の力か。
視界の端でシュリーが動くのが見えた。
「大我これ!」
といって何かを投げてきた。
足元に転がってきたのは殺虫剤のスプレー。
うーむ、この巨体にたったこれだけ?しかも殺虫剤のスプレーって主たる能力は虫を窒息させるものだったはず。こんだけでかいと、効かんやろ。俺がそれを気にしてると少しだが奴の力が弱くなった気がする。やつも投げられた物に気がそがれたらしい。
両手が塞がっている以上できることは一つ、頭を使うこと。
俺は目一杯のけぞると奴に頭突きをぶちかました。
かましたはいいが頭がクラクラする。さすがにこの大きさになると外骨格の生き物は鉄並みの硬さがある。
が、意外と効果はあったようで明らかにひるんだ。
というか藤原秀郷も頭突きかましたはずだ。
ひるんだすきに、身を翻して、奴の正面から抜け出す。とっさに殺虫剤も拾う
俺はそれを奴の口めがけて投げつけた。狙いたがわず、口に入る。
「なんだこれは?このようなものが効くわけなかろう」
奴はそのまま飲み込んだようだ。効果なしか
「そんなに食べたいなら他にもあるよ」
シュリーが、何やら投げつけている。フマキラーやらゴキジェットやらはてはファブリーズに至るまで。
ん?まてよファブリーズ?確かあれって
「ぐおおお」
ファブリーズが口に入った大ムカデはもんどりうって苦しみだした。
やっぱりだ、噂だとファブリーズには除霊できる機能があるのだとか。
もちろん未メーカー非公認だが
ともかく今がチャンス。俺は刀にファブリーズをかけると大ムカデの眼にめがけて突き刺した
「ぐぎゃあぁぁぁ」
凄まじい叫びとともにのたうち回っている。
あの巨体で暴れられると周囲に被害が。早く動きを止めないと。
のたうち回る中をかいくぐって一気に踏み込む。そのまま首の付け根に刀を差し込むと切り裂いた。それだけでは首は取れなかったので逆間接方向に曲げる。人間ならキャメルクラッチの体制だ。
外骨格の生き物は関節は逆方向に曲げられるのは弱いのだ。
俺は全体重をかけて反対に曲げる。ブグシャといやな音とともに大ムカデの首が取れた。
「ぐ、な、なぜだ、なぜ我が負ける。」
首を見下ろす俺にムカデは言ってくる。なぜといわれれてもなあ。
「さきに我は七巻き半であった。今回は八巻はんであった。きさまの鉢巻きより勝っていたのに」こいつまだ昔のこと気にしていたのか。
「そもそも俺今鉢巻してないし、巻き数なんて巻き付く対象でいくらでも変わるだろう、そんな事も分からないから負けるんだよ。」
「むう、そうであったか。では負けるのも致し方ないか」
「ああ次はもっと勉強してからかかってくるんだな。」
「承知したではさらばだ。」
おいおい。そこはあきらめてくれよ。大ムカデは光の粒となって消えていった。
なんか怨み深かった割にはあっさりとした幕引きになった。
ふう。ともあれ終わった。
「助かったよシュリー」シュリーが駆け寄ってくる
「まあね直接は戦えないからサポートぐらいならと」
言いながらまだいくつか殺虫剤を抱えていた。
「でもなんでファブリーズが霊的なものに効果があるって知ってたんだ?」
「それはあれだ、なんか適当になげただけなんで」
あらら、本当に運が良かっただけなのね。
さて残った問題は。舞さんか。
それは気にしなくとも大丈夫じゃといつの間にかいたゼロが話出す。
「大ムカデが消えたことであの子が奴から受けていた影響は記憶を含めすべてなくなっておるはずしゃ」
「そうなんだ、じゃあ俺に関することも?」
「ああ、大ムカデ関係だからの。おそらくあったことも知らんじゃろう。いまみるとあんただれ?となるじゃろうな」
「そっか、まあそれならそれで化かされていたとはいえ、婚約者を失ったという悲しみから解放されるならよかった。」
きっと彼女の顔にも素敵な笑顔が戻るだろう。
「それはそうとなんでムカデ野郎がうちの家と俺の能力について知っていたんだ」
「それはのう」とゼロ
「わしが教えたんじゃ、おぬしなら秀衡を顕現させれると。復讐するなら本人がよかろうとな」悪びれずわき腹を後ろ足からこともなげにいう。
「このくそねこがー」俺はゼロをひっ捕まえるとそのまま放り投げた。
速戦即決
速やかに戦いを終える、決着をつけようとする




