第16話形勢一変(けいせいいっぺん)
俺は目を覚ました。いつもの景色。そこは、自宅だった。
確か俺は気絶してたはず。どうして自宅にいるのか疑問に思っているとカチャカチャと食器の音といい匂いがしてくる。キッチンの陰から声がした。
「起きたんだ、おなかすいたでしょ、ごはん作ったんだ」
そういってシュリーが食卓にご飯を並べる。こいつ料理できたんだ。
「うん、頑張ってみた」
また話してない言葉に返事をくれる、頑張ってみたって、神様も万能じゃないんだな。
「そうね 神だって頑張ることもあれば挫けることもあるのよ」と穏やかな笑みで返してきた。
そのあとは会話もなく沈黙が続く。
「無理かもしれない、戦う以前の問題だろ」ポツリという
「そうかもね」とシュリー
俺がそこまでしないといけない理由がない。この世界を守るため?俺は正義の味方じゃない。いやそんなのどうでもいい、はっきり言うと怖いだけだ。そりゃそうだろう最近までただのおっさんだったんだ。そんなの荷が重いに決まってるだろ。
またしばらく沈黙が支配する。つけたTVの音が聞くものもいないのに響いている
「どうして責めないんだ?」耐えかねて俺は口を開いた。
正面切って罵倒してくれる方がよっぽど楽だ
「責める理由がないから」
サラダを口に運びながら話を続ける。
「前に話したかしら妖異は並行世界から来ているものだって。」
確かに聞いた。俺は静かにうなずく、
「神はね世界に、影響を及ぼす事はできても次元の壁を越えて何かをすることは出来ないの。だから次元を超えてこちらに入ってきた妖異は倒せないし下手をすれば死んでしまうわ」
なに?神が死ぬ?
「ええ、人とは違って死んだら終わり。輪廻に乗ることはないわ」
「神は死んだらどうなる?」
「それはわからないわ。人が人の死んだ後のことがわからないようにね、神は神が死んだらどうなるのか、わからないの。神々の中では死んだら真理に集まると言われているの、すべてを形作る大元みたいなものね。そこに集まると私の自我は存在しなくなるって言われているわ」
そう言ってしばらくうつむいてからシュリーは言葉をつづけた
「ごめんね私も、怖かったんだ、きっと。妖異の活動が活発になって。恐怖って、感情知らなかったんだけど。消滅するかもしれないって思って初めてわかったんだと思うの、だからね大我、私はあなたに強要はできないわ。あなたも死ぬかもしれない、そんなあなたにしてあげれることもないし」
神といえど消滅するなら、意識があってその先が見えないなら人と同じように死に対する恐怖はあるのだろう。神も人も変わらないのだ、
俺は初めに気を失ったあとに感じた温かさを今もシュリーから感じていた。
不思議と虫に対する恐怖心まで薄くなっていくような感覚がある。さっきまであんなに頭の端にちらついていたのに
俺は無言のままシュリーの手に自身の手を重ねた。
精一杯の笑みを浮かべて。
無言のままま見つめあう。シュリーが静かに目を閉じた。
こ、この流れは、いいのかこのまま流れに任せても。いや、
俺は一呼吸おいてシュリーの頭に軽くてチョップをかました。
「ちょっと何すんのよ!」声を荒げる。
「それそれ、何らしくないことしてるんだよ。そっちのほうがよほどシュリーらしいぞ、神様は人間に試練を与えてなんぼでしょうに。いきなり飴与えてどうすんの」
シュリーはしばらくきょとんとしてたがポツリといった。
「そっか、そうね、そのほうが私らしいわね。でも残念ね、私みたいな美女とキスできる機会なんて転生しても来ないわよ」
かもなあと言って頭を掻きながら笑う。
ありがとうなシュリー俺も元気をもらったよ。
「じゃあこれ、完全にはなくせないけど、トラウマに対して対抗できるようにするおまじない」
といってシュリーは軽くおでこにキスをしてくれた。
さて、決意も固めたことですし、今後の方針でも考えますかといいながらシュリーの作ってくれたカレーを口に運ぶ。うむ、正直美味しい。
二口、三口と口に運んでいると、ピンポーンとインターフォンが鳴った。
形勢一変
物事の情勢が急に変わっていくこと




