第13話灯傍目八目(おかめはちもく)
さて、これからどうしたものか。同乗していない婚約者が死んだという彼女。
何がなんだかよくわからないが本当に婚約者がいたかどうかとか、彼女の身辺を調べてみないとわからない。俺はシュリーとともに一度彼女の部屋に行くことにした。
霊的なものは身辺を確認しないと分からないこともあると以前に彼女に説明をして鍵は事前に借りておいた。あったばかりなのに信頼されているんだろうか。
俺たちは部屋に入ってみた。
うむ。さすが20代前半の女性の部屋だ。きれいにかたずけられている。
だがスリッパや歯ブラシなどは2人分ある。ちゃんと彼氏はいるという事なのか。
俺は歯ブラシを手に取ってまじまじと見る。
よく見ると2本ある歯ブラシで青い方はほぼ摩耗していない。使われてない感じだ。
スリッパをひっくり返してみる、2つあるうち一つは全く汚れてなかった。
この状況から考えられることは。婚約者はいない。ここまで徹底しているということはただ嘘というわけではなく、そう信じ込んでいる。もしくは別れた彼を忘れられないかか。どちらにしても俺ではなく心理カウンセラーの出番だろうに。
そう考えていると、
「大我これ」と言ってシュリーが何かを差し出してきた。
そこにはこの間みた球が。
「これどこで?」
「ちょっと違和感を感じてて、枕をひっくり返したらあったの」。
なるほどね、またこの球か。前回と同じ奴が関わっているということか
しかし今回はなんだ?どういったタイプの妖異なんだろう。狙いもわからない
「その球ってどんな力があるのかわらかる?」
シュリーは球を細かく見ている。
「うーん見た感じはただ妖異を引き寄せるだけの力しかないみたい。前のとは違って封印はされてない」
問題は呼ばれた妖異がなんであるかということか。
シュリーにも確認したが部屋には妖異がいた痕跡はないらしい。
現場にもいない、家にもいない、本人にも憑いてない。
「シュリーさんや正直行き詰ったんですが、何か突破口はありますかね」
俺はダメもとで聞いてみた。
「あいつに聞いてみたらどうかな」
あいつ?俺がポカーンとしていると
「ほら、さっきからあそこにいるじゃないか」と言って部屋の隅を指さす
その指の先には何もない。が、ともかく何かいるらしい。
そうか、霊体は認識されると実体化すると聞いた記憶が。
この部屋にいる可能性のある奴といえばもしかして
「ゼロ?そこにいるのか?」
俺は何もない空間に話しかける。しばらくすると空間が揺らぐような感じありそこには半透明だか、確実に黒猫がいた。
「やっと気がついたか。まったく女神が一緒にいるからどれだけの人間かと思えば、たいしたことありゃせんな」
初対面でいきなり悪態をつかれた。
「えーと、そのあなたはゼロさんで間違いないですかね?」
なぜがちょっと敬語になってしまう
黒猫は退屈そうに大きくあくびをすると、しばらくこちらを見つめてから話し出した。
「全く人に名前を聞くなら先ずは自分が名乗ってからとは思わんのか。まあいいわい。いかにも最近はゼロと呼ばれていたものじゃよ。で、なにようかな。」
いやあ、こんなところに居やがった。
「実は御崎舞さんのことで調べてまして」
「御崎?ああ、蒲生のばあさんの孫か」うん?そっちの名前がでる?
「そもそも飼われていたのではないわい。居候していただけでの。我々には人を判別する苗字などどうでもいいことじゃて。んでその舞がどうかしたのか」
どうでもいいけどじじい口調だなあ。ともかく話を聞かないことには。
「事故にあったのはご存知でしょうか?」
「もちろん知っておるよ危うく死にかけたのをわしが助けたのだからな」
なに?助けた。
「あなたが助けたのですか?しかし舞さんはあなたのような黒猫が車を追いかけてきたからカーブを曲がりきれずに落ちたと思ってるようですけど」。
「失敬な!」そう言ってゼロは目を細める。この猫が嘘を言ってるようには見えない。
「その時のことを詳しく説明してはいただけませんか?」
しばらくあくびをしたり、後ろ足で頭をかいたりしていたが、ゆっくりと口をひらいた。
「うーむ、めんどくさいの、3つ質問を許すからあとは自分で考えな」
なんかめっちゃ非協力的なんですが
「神などというものは人に試練を与えてなんぼなんでな?、そうであろう?今はシュリーと名乗っておるお嬢さん」
「そうね」そう言ってシュリーは薄い笑いを浮かべた。
うわ、こいつも心読める感じか。しかもシュリーとは知り合いっぽいし。しかもこいつも自身を神だと言ってる。
「わしは神ではないがな。心は見れるな。さっきのは一つと数えて残り二つぞい」
さっきのもカウントしやがった、勝手に減らしやがって。しかも口に出して質問してないのに。下手なことを考えるとまた減らされるな。異論はいっぱいあるがこれ以上減らされてもたまったもんじゃない。
よく考えろ俺。確信を突く質問を。回数以外は制限はないじゃないか
しかし条件があまりに厳しい。
「正直思ったことまで一回に数えるのはひどくないですか、心を読まれた形では何も言えないじゃないですか」ゼロはしばらく考えたのち口をひらいた
「おぬしの言うことももっともかの。では心は読まないでおこう。じゃが先ほどの一回は一回じゃ。神に二言は無い」
二言はないって使い方間違ってないか。ともかく心は読まない約束は取れた、しかも二言はないと言ってるし。
「じゃあ一つ目の質問、この事件の犯人は誰ですか?」
いきなり確信をついた質問だろう。
「そんな分かりきったことを聞くか。面白くないやつじゃの。事件の犯人というか、事故を起こしたのということであれば御崎舞本人じゃ。自損事故だわな」
「えっ、とそれって」
と立て続けに聞きかけて慌ててやめる。心なしかゼロの表情が笑って見えた。
結局のところ事故を起こしたのは舞さん本人で、間違いないということか。これは前からの情報が確定したに過ぎない。残された回数は1回。
「それであればこの事件について全てを答えれる人を教えてください」
「その答えはわしじゃ」
よし、うまく引っかかった
「あなたは《《ヒト》》ではありませんよね?その答えでは要件を満たしてませんな」
「む、確かに我は人ではないがな、なるほど、じゃが約束じゃからの。すべてを知っている人がおるとすれば蒲生のばあさんじゃ」
あのおばあさんが?
「ああすべてを知りたいなら、ばあさんにもう一度話を聞くことじゃな」
そう話すと疲れたのだろうか、香箱を作って目をつむってしました。
一応ちゃんと答えてくれたからな。俺はゼロに礼を言った。
傍目八目
他人がさしている囲碁をそばで見ていると、8目先までの手を読むことができるという意味から、当事者よりも周囲の人のほうが、物事をより正確に把握でき、物事の真相や利害得失をはっきり見分けることができるということ




