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鳥居の杜の  作者: WR-140
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なんか色々複雑です。

わからないことは、まだまだ多い。

例えば、このファイルだけど、お母さんのことはほとんど出てこないよね。

椿さん曰く。

「これにアクセスした時、ポインターをどこに置くか君には見えたのだろう?」

「うん。何か光ったから。」

「それは、私には見えなかった。」

「はい?」

「君のお母さんにも見えなかったはずだ。パソコンの機能ではなく、別のマーキングがされているからだろう。君でなければ、つまり鷹塔基彦の娘でなければアクセス出来ないようになっている。いくらソースコードを解析しても、そのヒントは得られないはずだ。」

「つまり…、最初から私だけに宛てたファイルだったってこと?」

「そのようだな。鷹塔基彦は、久世那の力を受け継ぎはしなかったが、ある種の能力を持っていたのだろう。元々我等のような存在は電子回路に親和性が高いのだが、鷹塔基彦はソースコードに頼らず、直接回路に干渉する能力があったのだろうな。イチハヌシがそうだったように。」

「そうなんだ…。」

よくはわかんないけど、それってなかなかすごいことのような気がする。

「それじゃあ、セキュリティとかは、椿さんには意味ないとか?」

椿さんは頷いた。

「そうだな。バックドアを探すまでもない。コンピュータ筐体の近くまで行きさえすれば、ほぼ全てのファイルにアクセス出来るだろう。だが、このファイルについては通常の手続きがいる。場所を特定して、パスワードを打ち込むことが必要だ。」

なんかさ、それってかなりヤバくない?

つまり、椿さんみたいな存在は、ウェブとかでやりたい放題ってことじゃない?

でも、聞いてみたら、見ることはできても書き換えたり別の場所にコピーしたりは出来ないんだってさ。

うーん、どういうことかよくわかんない。

まあ、それはおいといて。

なぜ、久世那宗一郎はお父さんとおじいちゃんを呼んだのか?

ご本家様、つまりマシロサマのご主人様への橋渡しを期待したってのもあったんだろうけど、お父さんのメモによると、おじいちゃんはご本家様に連絡しようとはしなかったらしい。

そもそも、ご本家様って人が存在してるのか、もし居るのなら、それはどこの誰なのかについては、おじいちゃんもお父さんも知らなかったんだって。

伝わっていたのは、連絡方法だけ。

それだって、ある程度の能力者でなければ出来ない方法だそうなの。

でさ、おじいちゃんには出来ない。

お父さんには、実は可能だったらしいけど、久世那宗一郎に協力する気なんてなかったから、隠し通したんだろう。

だとすると、今回久世那宗一郎は、どこかから能力者を連れて来て、ご本家様に連絡したってことね。

ずいぶん時間と手間暇を掛けたわけだけど、マシロサマにはほぼ無視されてたからいい気味。

「ナル、その場に能力者はいなかったか?」

「京都の久世那の家のこと?さあ、わかんない。イチハは何も言ってなかったよ。」

「そうか…。ならばそこにはいなかったのだろうな。その、ご本家様への連絡方法というのは?」

私は首を横に振った。わかるわけないじゃん?

でもさ、わかってたとしても、この人には教えたくないよね。

だってそんなことしたら、マシロサマにストーカーとかしかねないよ。

「ふむ。では、ファイルを見てみようか。」

おいおいおい!そんな重々しく言ったって、下心しか見えないんだけど?

でも、結果は大丈夫だった。

お父さん、具体的な方法は書いていなかったから。

式神がどうとかって、まあアナログな方法だけど、意味としてはメールを送るのに近いってさ。それだけわかっても、どうしようもないでしょ。メアドが不明だし。

「残念だ…。」

なんて、悲壮な顔で呟かれてもねー。

メールだったら既読無視ってのもあるからさ、あ、だけど椿さんてば、何回スルーされたって諦めなさそう。

「まあ、マシロサマのご主人様って人は実在してるみたいだし、案外、椿さんのブログにメールとか来るかもね。」

あれれ?何か難しい顔になっちゃったよ。

「それは…、遠慮したい。」

「え?なんで?」

「畏れ多い。」

あー、そっか。

マシロサマのこと、〝高位の存在〟とか言ってたよね。

「マシロサマって、どれくらい〝高位の存在〟なの?」

椿さんはちょっと考えてから答えた。

「まず、精霊のような存在にはいくつかの段階がある。泡のように生まれ泡のように消える儚く小さなものが成長して、亜神となり、さらに年月を経ると神と呼ばれる存在になることがある。亜神とは、タマクシメのようなものだ。対して、私やイチハヌシは神とも呼ばれる。」

ヤオヨロズの神とかいうことかな?

「えっと、タマクシメって、あの毛玉みたいなふわふわの?椿さんとどう違うの?」

「そうだな…、パンダとレッサーパンダの違いとでも言おうか。」

何そのわかりにくい例え。

「パンダとレッサーパンダって、別の種類でしょ?進化するわけないじゃん。」

「ごく稀に亜神が神となるが、それは非常に稀なことだ。しかし、ましろ様からみれば私とタマクシメはほぼ同種。人間から見たアメーバ程度の存在に過ぎない。」

うーん、やっぱりよくわかんない。

まあでも、それだけかけ離れた存在ってことだよね。

そのマシロサマがボスとかご主人様とか呼ぶ人だから、畏れ多いってことかな。

まあいいや。私には関係ないし。

さて、それで。

久世那宗一郎がおじいちゃんとお父さんを呼んだ理由がもう一つ。

自分の助けになるような力を持つものを探してたってことだよね。

お父さんは、最初久世那宗一郎が殺人犯だって考えてたみたい。

でも、その理由がわからない。

ファイルには、そこは書いてなかったし。

「推測だが鷹塔基彦は、無能力者であるという偽装を見破られたと思ったのではないか?久世那の能力者でありながら久世那宗一郎への協力を拒むということは、敵対するに等しい。ならば先手を打って殺害しようと思ったかもしれないと結論付けたのだろう。」

「あ…、お父さんの本当の能力がバレたりしたら、大変なことになるよね。」

コンピュータを自由に覗き見る力。

それはやっぱりとんでもないチートだ。

「誰にとっても非常な脅威だろうな。だから自分の陣営に加わらないのであれば、何が何でも潰すしかないだろう。」

だからお父さんは、久世那宗一郎が犯人と考えたんだろう。

でも、実際は椿さんの仕業だった。

お父さんにとっては、どちらでもよかったんだろうね。自分が遠からず死ぬってわかってたわけだから。

完全に消滅するよりはマシって思ってたんだろうし。

でも、お母さんは…。


やっぱり複雑。

椿さんを恨む気はないけど、お母さんにどうやって伝えたらいい?

お父さんの最期の言葉。

生きろ、って。


お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしく。

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