表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥居の杜の  作者: WR-140
2/37

チュートリアルって必要かな?

「おまえはさ、転換したんだ。転移、ともいう。」

何を言ってるの?それじゃ全然わかんないよ!

葉っぱのイチハは、くるりと回る。やっぱりイライラしてるみたいだけど、こっちはそれどころじゃない

「あー、自分が変わっちまってるのはわかるよな?」

わかんないわけないだろ!

つい、言葉遣いが乱暴になっちゃうけど、私だって実はもうパニック寸前だし。

変わったのはわかってるから、何でこんなことになったのかって、そこでしょ!

元にもどる?戻んない?

それも含めてどうなっちゃってるのか知りたいわけで。

言葉なんてどうでもよくて。

で、あなたは一体何なの?

「おれはお前のナビゲーターだ。」

はあ?

「とりあえず、落ち着けナル。ここはお前のよく知ってる場所だが、そうじゃないとも言える。神社ってのはな、インターチェンジとか交差点みたいなもんだから。」

交差点?

「そうた。道と道がクロスする場所。だが通常、それぞれの道を通る者は、別の道にいるものを見ることはできないんだ。」

でも、道はクロスしてるんでしょ?

「ああ。だが、見えないだけじゃなく、お互い触れ合ったりぶつかったりすることもない。ここは時空の特異点とも言える。」

いや、その時空のナントカみたいなややこしい解説はいいから、私の体が無くなっちゃった件、どうしたらいいの?

「無くなっちゃいないんだ。位相が複数にずれて重ね合わせが捩れた結果、存在に振動が加わり、そのせいで知覚情報に…」

あー、もう!

そんなのわかんないよっ!

それにさ。それ聞いたからって、状況変わんないよね。

私が知りたいのは、戻れるかってこと。そのためにどうしたらいいかってこともね。

「戻れるさ。ただし、いつ戻れるかはわからないし、戻るためにお前ができることはない。」

えっ?ち、ちょっと待って!

学校、どうするの?あーっ!て、テスト!

それから部活!

「大丈夫だ。戻るときは、転換した時点だから。」


それから、葉っぱのイチハに色々聞いた。

よくわからない説明も多かったけど、私にわかった範囲は、こんな感じ。

①私は元に戻れるけど、それがいつかは不明。でも、戻ったら時差はない。主観時間がいくら経ってても問題なし。

②神社は、いろんな世界がクロスしてる場所。辻、というか、交差点みたいなもんだけど、交わる道、つまり世界は2本だけとは限らない。前後上下左右、3Dまたはそれ以上の次元で立体交差してて、とても複雑。

③私は、交差してる世界の一部を見ることが出来る。これは転換している間だけなんだ。つまり目だけが切り離されて、世界を浮遊してるような状態。


「だが、お前の存在自体は神社にピン留めされているから、他の世界に流されて行ったりはしない。だがもし、体ごと転換してしまったら…」

ど、どうなるの?

「その状態が神隠しだ。つまり元の世界から完全に消えてしまう。」

ホラーとかファンタジーによくあるあれだよね?

「そうだ。伝承では、神社や山岳信仰がらみが多い。そういう場所には安定した辻ができやすいからな。まあ山は事故が起きやすいし、場所を選ばす突然なんてこともあるが。」

じ、じゃあさ、ピン留めが外れたら?

「それはもちろん、まずいことになるわけさ。」

だよね。それで、私いつまでこうなのかわからないんでしょ。イチハは、ナビって言ったよね?何で?

「そりゃお前はここで育ったからな。宮参りもここだ。だから、うぶすなの加護があるんだ。おれは、言うならば神の遣いってことだな。」

なんかふんぞり返った気がするね。

破れた虫食いの葉っぱだけど、神様のお遣いってこと?

「虫食いで悪かったな。」

はいはい。

で、イチハは何が出来るの?

「ナビゲーターっつったら、その状態のお前がどうやって動くか、何が出来るか、危険を避けるにはどうしたらいいかをレクチャーするわけだ。」

チュートリアルかあ。それって、必要?

「お前、危機感薄くないかナルよ?まさかこれが夢だとか思ってないよな?」

あー。ひょっとしたら、たぶんリアルなのかなーって、まあそんな感じ?

「リアルに決まってんだろ。残機1でリセットもコンティニューもナシ。」

なんか呆れてる?

その上、ナビゲーターが虫食いの葉っぱっての、かなりハードモードっぽいんですけど?

「見た目は重要じゃない。」

実力主義ですか?

だったら、私が危ない時は颯爽と助けてくれる、とか?

ちっちゃいけど、ぜんぜん強そうに見えないけど、ほんとはすごく強いとか?

思わず期待しちゃうんですけど?

「あー。いや、危険は極力避けろ。生き延びたいなら。」

え?今アナタ一回り縮まなかったぁ?

「なんだその疑いの目は。おれはナビゲーターであって、ボディガードじゃない。自分の身は自分で守れ。」

え〜、ケチ。期待したんですけど、ちょっぴりだけ。

ハードモードでチートなしなんてさ、ヒドくない?

ゲームオーバー確定じゃない?

私、ゲーム得意じゃないんだよ?

「だ・か・ら!おれの存在自体ががチートなんだったら!危ないことは教える。そうじゃなきゃ、おまえ今頃消滅してたかもしれない。」


この時は、イチハのことを完全に信用したわけじゃなかった。だけど、他に頼れる人(?)なんかいないじゃない。

てか、会話出来るのはイチハだけだ。

なんでか私の名前知ってたし…。

フッて吹けば飛んじゃいそうだから、全然怖くはないしさ。


「さて、それじゃ動き方からだな。」


見ることしか出来ないってことは、自由に動けるってことでもある。

とっくに気付いてたけど、とにかく軽い。

体がないんだから、当たり前だけど。

ただこんな動き方には慣れてないから、イチハに教わんなきゃ、自由に動けるまでにもっと時間が掛かったかも。

そこんとこは確かにチート級だね。


「うん、動きはそんなもんだろ。じゃあ次は、見方と聞き方だ。」


見ることや聞くことなんて、14年間フツーにやってきた、はず。

最初そう思ったけど、違うんだなこれが。

まず、見ること。

近くと遠くでは焦点の合わせ方が違うけど、それ以外のピント調整ってあったんだよね。

今まで考えたことのないやり方だった。

上手く言葉にできないんだけど、重なり合った世界から世界へと視点を動かす。

どうやってもはっきり見えない世界もあれば、大して努力しなくても見える世界もあった。

一度に見える世界は一つだけだ。

どの世界にとってもここは交差点らしかったけど、その景色は色々だ。

木に囲まれた神社みたいな場所もあれば、山の中の開けた場所みたいなところとか、小さな島、砂漠、真っ白な氷の平原まで。

昼だったり夜だったり、その中間みたいな時だったり。

温度はわからない。

特に暑くも寒くもないっていうか、温度ってものを感じてるかどうかもはっきりしない。まぁ変な感じってこと。

これ、チュートリアル要るわ。うん。

それがいまの結論ね。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ