帰宅の準備
ハルはリルの結界魔法、そしてガリウスの環境魔法の発動を見届け、リルと大森林に帰る準備をしていた。
「これですることはしました。スクリスの力を借りずとも隠蔽魔法はしっかり機能していましたね」
「そうだな。これならばマーブのような魔眼持ちでもなければ見つけることはできないだろう。魔力を消すのではなく偽る。これが隠蔽魔法の神髄と言ってもいい。隠れていることがないリルにとってはなかなか貴重な体験だったんじゃないか?」
「そうですね。モンスターを近寄らせないのならば魔力を放出すれば済むことなのでなかなか貴重な体験でした」
リルはモンスターの頂点として長く降臨している。なのでリルに喧嘩を売るモンスターは存在しないのだ。それが知能がないモンスターだったとしてもだ。今回の経験がリルの魔法のレベルをまた一つ上げる結果となったのは間違いない。今まで使用していなかっただけだがそれでも使ったか使っていないかだけでかなりの差が生まれることも確かなのだ。
「このあとはどうする?もうここですることは終わったろ?帰るのか?」
ハルはリルに聞いた。まだここにいるのならハルはそれでもいいと思っていた。それはここに両親がいたということも関係しているだろう。しかし、リルはハルに告げる。
「数日間魔法の経過を見て満足のいく結果なら大森林に帰ろうと思います。そもそもここは私の領域外ですしね」
「わかった。俺は母さんと父さんにこれからどうするかを聞いてみるよ。帰るっていうなら一緒に帰った方が安全だ」
「わかりました」
リルと話を付けハルは両親のもとに向かう。二人が住んでいる家に到着すると二人が迎えてくれた。
「いらっしゃい、ハル。今日はどうしたの?」
アリアがハルにそう問うとハルは真剣な顔でいう。
「二人は人族の国に帰りたい?俺は魔法の経過を確認し次第リルと大森林に戻る予定だ。二人が一緒に来るというなら俺とリルと一緒に帰った方が安全だと思うんだ。父さんの手のこともあるし」
ハルは殺気リルと話したことを伝える。二人は少し悩んでから口を開く。
「もう少しここに残るわ。もちろん、私たち二人はこの村では部外者よ。だからずっとここにいることはしないと思う。それでもあいさつ回りとかはゆっくりやっていきたいの。それが終わったらハルのいる大森林に向かうわ。そこにエミーちゃんとドーボンさんがいるんでしょ?」
元々パーティメンバーだった二人の名前を挙げる。彼らにはハルをここまで育ててもらった恩を感じているようだ。ドーボン夫婦にしてみれば勝手に育っていったというだろうが見守っている人がいるというのは結構重要なのだ。
「二人もリルの眷属だからな。わかった。それじゃあ先に大森林に帰るよ。父さんもそれでいい?」
「ああ。俺もこの村の人にはかなり世話になったしなぁ。この義手も俺に合わせて作ってくれたんだ。魔力で動くからかなり使い勝手がいいし」
ハルは二人の意見を聞き、先に帰ると伝えた。ハルの家はもう既に大森林なのだ。ここは家ではない。それはハルの両親も思っているのだろう。ハルは二人の家を後にした。
次に訪れたのはここ幻想郷の長老であるガリウスの家だ。ハルが来るとそこにはリルがすでにいた。もう幻想郷を出るということを伝えているようだった。
「ようハル。リルと一緒に出るんだってな。いいのか?両親にも会えたんだろ?」
「はい。俺の家はここではなくリルと住んでいる大森林なので俺の親もこれから長老のところに来ると思いますよ」
「それも覚悟していたことだ。二人は何もできていないと思っているようだがそれは違う。外の世界を知らないこの村のガキどもに外の世界を面白く教えていたしな。まあそのせいで最近はガキどもが外の世界に行きたいってことあるごとに言ってくるんだがな」
外の世界に興味がある。それは子供の好奇心的に言えば当たり前のような気がするとハルは思った。この決して広くない幻想郷が世界の全てだった子に急に外から来た者がその話をしたのだ。興味を引くだろう。
「それは大変だな。興味が出るのは理解できるが外は危険だからそう簡単に許可も出せないだろう」
「そうなんだよ。だからそれについてリルと話していたとこだ。成人の儀式で眷属になるかどうかを決めると話したな?だからそれまではここで過ごせと言ってんだ。俺を含めて数人は外でモンスターを狩って食料を調達してるからそれに経験として付いてくることも考えてる」
ここだけで生活をするのはなかなか大変だ。食料の問題もある。だからこそ数人の実力者が外に出てモンスターを狩っているのだ。その狩りに同行させ、覚悟を決めさせるようだ。
「それにここにいる亜人種は魔力が基本的に人族よりも多い。まあハルみたいな例外はいるがな。そして身体能力も総じて高い。十分戦えるとは思うが戦うだけではどうしようもないからな。外の世界は」
戦うだけで解決するのならば人族の国はもっと造りがシンプルだろう。モンスターという脅威があるのと政治的なしがらみで戦争が起きていないだけだ。幻想郷の子供にはわかりづらいとハルは思った。そもそも人族の子供も理解していない子が多いのだ。外の世界に触れていない子は理解できないだろう。
「そうだな。その勉強期間も兼ねているのか」
「まあそういうこった」
その後はリルとハル、そしてガリウスで予定を詰めていった。
ハルとリルが帰る日、幻想郷の住人が集まった。そこにはハルの両親の姿も見える。
「それでは短い間でしたがありがとうございました。また時を見てこちらに来ようと思いますね」
「父さん、母さん。それじゃあ帰るよ。また」
「ええ。またね」
「気を付けるんだぞ」
挨拶を済ませ二人は幻想郷を後にした。
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