幻想郷への道のり
リルとハルはそれぞれ説明に回っていた。リルはマーブに、そしてハルはドーボンとエミーにこれから少し大森林を空けることを説明した。その中で幻想郷の名前は出すことはしなかった。そもそもハルも行ったことがないのだ。ハルは上手く説明できないがリルについて行くとだけ伝えた。ドーボンとエミーはハルのその説明で納得し多くは聞かなかった。リルの方も亜人も幻想郷の名前を出さずに納得させていた。修行の内容についてはリルが事前に伝えたことをしている段階なのでそれほどリルの手が必要なことはなくなっていたのもタイミングが良かっただろう。そして二人は準備をして幻想郷に向けて出発した。
二人は足早に大森林を抜け、街道を進む。火山地帯に向けて進んでいるがそちらの方面にはマグノリアが存在しているので道がそこそこ整備されている。この世界には国境は決められているがそれを超えるための関所などは存在していない。それはハンターという職が多く広がっているからであろう。いちいち関所などで時間を割いていると被害が大きくなってしまうのでそれをしないためだ。それでも街に入るには身分証明が必要になってくるので街に立ち入ることは今回しない。普通のハンターならば補給が必要だがこの二人、いやハルには必要がない。それほどの環境でこれまで生活してきたのだ。いまさらである。
「火山地帯の裏側って言ってたけどどうやって行くんだ?あそこは多くの火山が連なっている。大きく回るにはかなり時間がかかるが」
マグノリアの近くにある火山は一座だけでなく、連なっているのだ。なので魔法を使える人族でも未だに調査が進んでいない。
「火山と火山の間を抜けます。一般的には知られていませんが過去、私が仮で作った道があるのでそこを使います。普通に人にはと通れないようなかなり険しい道なので誰も知らないと思いますよ。大森林に来ていた神級ハンターならば通れるでしょうがその奥地まで行こうとは思わないと思います」
マグノリアを拠点に活動している神級ハンターはヴィノのみであり、彼は鍛冶師も兼業している。その素材のためによく火山に立ち入るのだが武器の素材となる鉱石は取れる場所が決まっているのでリルの言う通りそこまで奥地に行く必要はない。ハルも火山には何回か行ったことがあるが知らなかったのだ。リルの言葉を信じることにした。
「わかった。火山地帯についたら少しだけ待っててもらえるか?ヴィノに挨拶し用と思ってるんだ」
「わかりました。それくらいなら問題ないですよ」
二人は野宿を何回かしながらマグノリアに無事到着した。来るまでに数体のモンスターと遭遇したがそこは神獣種と神級ハンターである。危なげなく狩り素材を回収した。
「それじゃあ少し行ってくる。ばれないようにしていてくれよ」
「わかってますよ。何回ここに来ていると思っているんですか。いってらっしゃいね」
そしてマグノリアのヴィノの家にハルは到着する。扉をノックすると中から野太い声が聞こえる。そして扉が開かれそこにはヴィノが立っていた。
「魔力的にそうかと思ったが本当にハルだったとはな。今日はまたマグノリアまでどうしたんだ?」
「少しリルと出かけていてな。ついでに寄ったんだ。リルはこの街に入れないから外で待たせているからそんなにいられないんだがこれは土産だ」
ハルはヴィノに来る道中に狩ったモンスターの魔力核を渡した。そこまで珍しいものでもないのだがそこは気持ちだ。渡したハルも受け取ったヴィノも気にしていなかった。
「おお、ありがとな。最近じゃマグノリアのハンターが武器を作ってほしいとよく来るんだ。そいつらの武器の素材にしよう」
ハルと話すときは結構話すのだが他の人と話すときはかなり口数が少ないヴィノだがしっかりマグノリアのハンターと仲良くしているようだった。もしかするとハルよりも顔が広いのかもしれない。
「それじゃあまたしてるから行くな。帰りにまた寄れたら寄るよ」
「おう」
こうしてヴィノに挨拶したハルはリルと再び合流し火山地帯に向かった。ハンターが入山するときに使う通路は使わず、そこを過ぎて道なき道を進んでいく。そこを進んでいくと獣道に当たった。これがリルが作った道なのか聞いてみたが通っているのが事実だが作ったわけじゃないらしい。そもそも今通ってきた道も前来たときはこのような道ができていたらしい。大きさ的にもモンスターの類ではないので普通にモンスターにならない獣の類だろう。それならば問題ない。基本的に攻撃性がある獣はモンスターになるのだ。リルの言葉を借りるならばそのようなモンスターを厳選して過去の人類は実験していたのだろう。なので現在モンスターと言われない獣たちが原種のモンスターに近い生態なのだそうだ。それでも進化して魔石が成長しない、そもそも存在しないものになったらしい。リルとハルはその獣道を話しながら進んでいった。
「そろそろくるかなぁ」
「時期的に来ると思うよ」
明らかに人でない、上半身が人で下半身が獣の子供たちがそのように話していた。彼女らは数年に一度のこの時を楽しみにしていた。彼女らは外の世界を知らない。親も知らない。知っているのはこの幻想郷で一部の長老と言われている者たちだけだ。それが彼女たち亜人種であり、この幻想郷が彼女らの全てだ。
「リルお姉ちゃんのお話好きだから早く聞きたいなぁ。そうだ!アリアに聞きに行こうよ!リルお姉ちゃんより外の世界を知っていたらきっと驚くよ!」
「何回も聞いているでしょ?アリアもミゲルもそんなに多く話すことないって言ってたじゃない」
「それでもだよ!ほら、行こう!」
二人が待ちわびる者、それがハルの主にして神獣種であるリルであった。そのリルももうすぐ幻想郷に着く。そして今回、普段一人で来るリルには供がいる。ハルとの出会いがこれからの彼女らを変えることになる。そして亜人種でない彼らもまた、今後の人生が大きく変わることになる。




