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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
ハンターの宴
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戻る日常、変化する日常

 ハルはこれまで通りの日常に戻りつつあった。突発的に行われた序列決めも終わり、その後にフィスティリアで正式にマークの神級昇級の発表がされた。その式典に出席した既存の神級ハンターがいないというのがこれまた今までの神級ハンターが矢面に出ていないかを物語っていた。そして神級ハンターがリーダーとしてパーティを持っているということも同時に発表された。これを聞いた幻級ハンターたちはどうしたら神級になれるのかを組合職員に聞きに来るものが後を絶えなくなった。そのためアランは条件を幻級ハンターにのみ開示した。本当はもう少し時間を空けてするつもりだったのだが職員たちが仕事にならなくなってしまったので仕方がない。


「これで落ち着いてくれるといいんだけどねぇ」


 アランは自分の執務室でそうつぶやく。ここ最近はいろいろなことがあった。神級ハンターへ炎神龍の討伐依頼、そして新たな神級ハンターの誕生、それに伴う序列決め。アランがそれを取り仕切り、すべてを終わらせた。元々大森林に自分の腕を慣らすために行きたかったのだが全く別の用事で行くことになってしまったのだ。そのせいでアランはあまり自分の戦闘勘を取り戻すことが未だにできていない。リルにまた来るかもしれないとは伝えているのでその時にまた世話になろうと考えていた。


「マーク君も自分を鍛えると言ってパーティで依頼を受けていったしなぁ」


 マークは序列決めの戦いを見て自分には全てが足りないといい、パーティの面々と様々な依頼をこなしている。神級と発表されたことで指名依頼もかなり増えているようだった。フィスティリアの貴族やダリノクスの貴族もマークに依頼を積極的に出していた。いつかは私的な専属ハンターにしたいと考えているのだろう。これは口外していないことだが神級ハンターは専属にできない。これは一人で戦力をひっくり返すことができてしまうからだ。




 ハルは大森林にてリルといつも通り刀の稽古をしている。それをまだこの森に住んでいるマーブが眺めている。彼女には高速戦闘は見えない。ハルとジットの時よりも今の方が速いのだ。その稽古ももうすぐ終わる。かれこれ一時間ほどこの速度で打ち合っているのだ。そのようなことを考えていると終わったようだ。二人は笑いながらマーブの方へ歩いてくる。


「あらマーブ、勉強になったかしら?」


「全然ですね。全く見えませんでしたし」


 リルとマーブもだいぶ打ち解けているのでこのように気軽に話すことができる。それを見たハルは何とも言い難い気持ちになっている。元々リルが勝手に婚約と言ってきたのだがそれも今ではいいかとハルも思ってきている。そのリルが自分以外の神級ハンターと仲良く話しているのはなんか釈然としないのだ。


「それじゃあ休んだら私の魔法も見てくださいよ」


「いいですよ」


「ハルもね~」


 急にマーブからそう言われハルは何を言っているかわからなかった。リルが要れば魔法の知識については問題ない。そして魔法の扱いについてはマーブの方が上手いのだ。ハルにこれ以上教えることなどなかった。


「俺が何かできるのか?魔法はお前の方が扱いが上手いだろう。それに俺は魔法師でも近接職でもないんだがな」


「今更近接職は否定できないでしょ。現に近接職の神級に勝ってるんだから。あと、試してほしいことがあるんだ。隠蔽魔法なんだけど」


 マーブの隠蔽魔法という言葉を聞き、ハルは納得する。確かにアリエス以外で隠蔽魔法をしっかり使えるのはハルだけであろう。アリエスはスクリスの魔法特性の継承だがハルは自分で磨いた技術だ。


「アリエスの姿は見ることができた。そもそも隠蔽魔法は魔力が見えるから私には関係なかったし。でも今回、アリエスの戦いを見て武器を判別することができなかった。それは魔力探知をせずこの魔眼に頼ていたからだと自覚したの。だからそれを磨きたい」


 マーブの眼に映るアリエスの魔力に違和感はあった。しかし、それが武器だとは思わなかったのだ。違和感の時に気付くべき問題なのだが自分の眼を信じて生きてきたのでそれを強制するのはなかなか難しい。しかし、今ならば大森林にてリルに教えてもらいつつ、隠蔽魔法が得意なハルもいるのでこれを機になれようと考えたのだ。


「なるほど。しかし、武器はどうする?俺がどの武器を持っているか当てるのは多分リルでも難しいぞ。それに俺はそんなに武器を持っているわけじゃない。隠蔽魔法自体は見えているからそこに隠れたものを探す訓練をしたいんだろ。適当に魔力のこもったものを持っておけばいいか」


 適当に魔力が含まれているものをハルは見繕った。ハルがメインで使っている狙撃銃の弾丸だ。これは付与魔法をかけているので魔力を含んでいる。そして普通の武器よりも少ないので見極める訓練には最適だろうと判断した。


「いつから始める?そろそろ飯の時間だし、午後にするか?」


「そうね。それがいいわ」


「エミーのご飯、楽しみですね」


 リルがそう言ってエミーとドーボンの家に向かって歩き出す。ハルとマーブはその後に続いて歩き出した。




 ここはガノリア大陸の火山。そこには炎神龍バクリスクが住み着いている。兵士をほぼすべて食い殺し、少しだけ残した兵士たちに言った。


『大量の食糧を運んで来い。私は隣の大陸に用があるのだ。それには今の力では足りない』


 バクリスクは復活したばかりだ。今までかなり長い休眠状態であった。傷を癒すために魔力を消費したため魔力が枯渇している。そのため人を食ったがこちらの大陸の人々は魔力が少ないとバクリスクは感じ、それならばモンスターの血肉、そして魔力核を食らうことにしたのだ。今のままでも自分でどうにかなるだろう。しかし、自分で動こうとは思わない。自分よりも弱い者がいるのだ。彼らをこき使うことで自分は回復に専念できる。回復したらこちらの人間を眷属にして陽動として攻めてもらおうと考えている。獣人族でも無理だったのだ。たかが人族には無理だろうが最低限の仕事はしてくれると考えている。


 仲間を食い殺された兵士たちは目の前にいるモンスターに対して動けなくなっていた。彼らが見たことあるモンスターはせいぜい大獣種程度である。目の前のモンスターは自分たちに食料を持って来いと命令してくる。話すことも驚きだがそれどころではない。残った数名の兵士たちが返事をしてその場を去ろうとする。その後ろからモンスターが言った。


『もし、このままいつまでたってもこなかったらわかっているな?私は気が長い方だ。それにかまけていたら覚えていろ。先ほどの兵士たちよりも残酷に殺してやろう』


 その言葉に兵士たちはもう一度返事をしてその場を後にした。

 その後に隣の大陸で大きな魔力が放たれた。それを感じ取ったバクリスクは忌々しくそちらの方向を見る。


『忌々しい狼め。私は忘れていないぞ。あの時の屈辱を!』


 リルの魔力を感じ取ったバクリスクはそう言い、咆哮をあげた。

これでハンターの宴編は終わりです。これからも更新はしていきますのでどうぞよろしくお願いします。

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