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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
ハンターの宴
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アリエス対マーク

 アランの合図で摸擬戦が開始された。はじめは静かな立ち上がりである。二人とも見つめ合い動かない。


「新人さん、お先に攻撃してくれていいわよ」


 アリエスは煽るようにマークに言う。そのような簡単な挑発にはマークでも流石に乗らない。二人とも武器は構えているがどちらも大振りな武器であるため、しっかり流れをつかむために牽制しあっている。


「あなたこそ、本当は近づくのが怖いだけじゃないんですか。その武器はどう見ても対人戦に向きません。少しの実力差なら武器で覆せます」


 マークはアリエスの大鎌に対してそう言い放った。確かに間違いではなく、対人戦をアリエスは得意としていない。それでもつい先日神級に上がったハンターには負ける気がしていなかった。アリエスはスクリスの眷属特有の魔法特性を持っている。それは隠蔽。身体強化をマークにバレることなく自身にかけていく。マークは今のところ気付いていない。結局しびれを切らし始めたマークが身体強化魔法を発動した。発動兆候を察知したアリエスは既に発動していた身体強化魔法をフルで使い、マークに突撃をした。


「っ!?!」


 マークは完全に虚を突かれた。始まったときに身体強化をかけていればこのようなことにはなっていなかった。普段のマークならばどのようなことでもまじめに取り組むので摸擬戦開始時に身体強化をかけていただろう。アリエスの雰囲気に知らないうちに飲まれていたのだ。


「始まってすぐに身体強化をかけておかない駄目よ。だからこうして足元をすくわれる」


 大剣で大鎌を受けることには成功したマークだったが身体強化が間に合っておらずそのまま力負けし後ろに吹き飛ぶ。すぐに体勢を立て直しアリエスの方へ向きなおす。そこにアリエスの姿はない。土煙が舞っているので姿の認識はできない。マークは魔力探知をすぐに行うが反応がない。これが神蛇スクリスの魔法特性を受けたアリエスの強さである。狩りは正面から戦うことだけではない。陰に隠れ隙をついて一撃で決めるのも狩りである。それでもハンターたちがモンスターと正面からやりあうことが多いのはモンスターの気配察知に引っかかるからだ。アリエスは眷属になったことでハルのような狩りの仕方をできるようになっていた。


「こういう視界がない状態での魔力の隠蔽は脅威だな。それに加えて一撃で終わらせることができる大鎌だ。それに……」


 ハルはアリエスの動きをとらえることができていた。ハルの魔力探知がリルの眷属になったことで隠蔽を見通すほどの精度になっているのもあるが元々の精度が高いのだ。そしてもう一人見えている人物がいる。それはマーブだ。マーブは魔力そのものを見ることができるため隠蔽の魔力も見えている。アリエスにとってマーブが一番厄介な存在なのだ。マーブは魔力を見て戦況を把握する。土煙の中でマークの視界を奪い、一方的に攻撃している。そして土煙が晴れるとマークは膝をつき、大剣を地面に突き刺し支えていた。その向かいには大鎌を肩に乗せて無傷で立っているアリエスの姿があった。


「会長、もういいんじゃないの。私にすらこのザマなんだから他の神級には勝てないわよ」


「まだ、だ」


 傷だらけのマークはそういい、立ち上がる。もはや気力だけで立っていると言われても不思議じゃないのだがその眼はまだ死んでいない。


「そう、じゃあもう一回行くわよ」


 アリエスは風の魔法を地面に撃つ。魔法師でなくとも使える初歩的な魔法だ。それでまた土煙に身を隠す。そして先ほどのように攻撃を開始しようとした。マークはそこで動いた。自身の持っていた大剣に魔力を込め、薙ぎ払うように振り抜く。マークの使う大剣は火属性の魔法を扱う飛竜の素材を使用して作られている。そしてマークの得意とする魔法属性は火だ。マークに相性のいい武器に仕上げていた。土煙が晴れ、アリエスが姿を現す。今度はすかさずそこへ切り込む。大剣を水平方向に振り抜く。手加減なしの一撃であった。しかしアリエスは笑顔を崩すことなく跳び上がる。薙ぎ払いをジャンプで除けその大剣に大鎌をひっかけた。そして遠心力を使って距離を取る。かなりのスピードで跳んでいくが姿勢は整っている。そして大きな幹に着地し、そのまま跳ねてマークに向けて突っ込む。


「これは決まったかな」


 ハルがそうつぶやいた。神級がハルの独り言に耳を傾けた。そしてジットがその真意を問う。


「なぜだ。アリエスは確かに攻めの姿勢だが正面からいったのではあの大鎌をうまく使えるとは思えん」


「それだ。それを意識させることが目的なんだよ」


 ハルとマーブ以外は土煙の中でアリエスがどのように動いていたかを認識できていない。そしてマーブは魔力を見ているので小さい武器は魔法が付与されていようとも人という魔力を多く持つ存在の近くにあるものは詳しく見ることができない。なにか魔力に違和感がある程度しかわからない。


「馬鹿みたいに突っ込んできたな!その勢いでこれを避けることはできないだろ!」


 マークは大剣を大きく振りかぶりそのまま振り下ろす。身体強化、そして大剣そのものの重さも相まって当たればただでは済まないだろう。アリエスは大剣が当たる手前で大鎌を地面に突き刺しブレーキをかけた。大剣をスカすことに成功した。しかし、マークはそれも予期していた。自分の考えた通りになったことにマークはニヤつく。地面をえぐるマークの大剣。その大剣から火が噴き出す。これがマークの狙っていたことだった。アリエスは火に包まれる。マークの視界からアリエスが消えた。それでも火魔法を止めない。魔力隠蔽を最後の力を振り絞って使った可能性を考えたのだ。そしてそれは当たっていた。後ろに急に魔力が現れ、首に刃物が当てられた。


「はい、私の勝ちね」


 マークの後ろには短刀をマークの首に突きつけているアリエスの姿があった。

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