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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
ハンターの宴
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突発的な摸擬戦

 ヴィノとハルは数日間、一緒に狩りに出かけていた。マーブは相変わらずリルとの訓練だ。ヴィノはハルが扱う狙撃銃を狩りの間、じっくり観察していた。


「その武器、遠距離で使い勝手がいいと思っていたがじっくり見ると俺には扱えないな」


「まあヴィノのいいところを無くしてまで使うことはないだろう。それに俺もヴィノの武器を使うことはできないだろうしな」


 お互いがそう思っている。ハルの狙撃銃は元々ドーボンの構想した武器であり、その構想をヴィノはたくさん聞いてきた。それを実用ベースまでにしているのは完全にハルの技量によるものが大きいだろう。それをヴィノはこの数日間で改めて実感していた。同時にハルもヴィノの戦い方は自分にはできないと思っていた。ヴィノの体には無数の傷が刻まれている。これは肉体強化で相手の攻撃を受け止めてその後にハンマーでたたくというかなりの力業で戦っているからだ。ハルには劣るもののヴィノも十分な速さを持っている。しかし、生まれ持った肉体強度を考えたときに避けるより受け止めて確実に当てる方がヴィノには合っていたのだ。鍛え抜かれた体は大獣種程度では傷をつけることはもうできないだろう。神級の中にもう一人、このような戦い方をする人物がいる。


「そこはお互い様か」


「そうだよ。遠距離支援が欲しいモンスターが出たら呼んでくれればいつでも行ってやるから慣れないことはしないことだな」


「心得ている。そうしなければ生き残れないからな」


「そりゃそうか」


 こうした会話をしながらも二人は狩りを続けている。大獣種であるファキングの群れに遭遇し、今はそれの対処をしているところなのだ。二人は息を切らすこともなく戦い続ける。そして残り数体になったところでモンスターが逃げ出した。二人はそれを追うことはしなかった。ここは大森林の奥地だ。数体の大獣種程度なら多くいて、猪系のモンスターの総数を大きく減らすわけにもいかないので追わなかった。


「数体逃げたな。まあこれだけ狩れれば十分か。ハンター組合に行くときの飯にももう困らなそうだな」


「ああ。それでいつ出るんだ?もうすぐだろう」


「数日中には出ようと思ってるよ。マーブの杖が完成次第かな」


「わかった」


 二人は多くのファキングから小さな魔力核を剝ぎ取って、解体していく。肉は鮮度が重要なので新鮮なうちに解体して世界樹でできたマジックボックスに入れていく。小さな箱に空間魔法を付与してあり、世界樹の魔力も相まって大容量になっていた。十数体の解体を終わらせ、食用と素材で分けて別のマジックボックスに入れていった。作業が終わり、二人はハルの家に戻った。


「できたぁー!」


 家に戻るとドーボンの工房からエミーの大きな声が聞こえてきた。マーブはリルとの訓練で地面に転がっていたがエミーの声を聞くとすぐに起き上がり工房に向かっていった。リルはまだ終わりと言っていないのにという顔をしていたが止めることはしなかった。リルにもマーブが待ち望んだ物の必要性をわかっているからだ。リルがハルを見つけ足早に近寄ってきた。


「マーブの訓練は休憩中だけど、二人はもう狩りは終わり?」


「ああ。大分狩ったから今後しばらくは外周部に出ていくことはないと思うよ。いっぱい肉を取ってきたから食べよう」


「わかった」


 リルはハルの言葉を聞き少し不機嫌だったことが嘘のように笑っていた。ヴィノはそれを笑ってみていた。

 マーブは今出来たであろう杖を持って外に出てくる。そしてハルはその杖を見て驚いた。世界樹の魔力がマーブの体を守るように漂っている。ハルは見れないので感じ取っているだけだがそれでも数段魔力の出力が上がっていることが分かった。マーブは杖から溢れ出る魔力に体がおおわれていくように見えた。しかし、それに抵抗はしない。それが危険な物ではないとわかったからだ。マーブは自分の魔力をその魔力に馴染ませていく。普通の木々は微量の魔力はあれどほぼ感じ取ることが不可能なほどであることに対して世界樹の魔力は強大だ。杖は自身の魔力を増幅させ、魔法を発動しやすくするためのものだがこの杖は別格であった。マーブはハルとヴィノを見つけ近づいてくる。


「今ならハルにも勝てる気がするわ。少し摸擬戦をしましょう」


「まあ慣れることも必要か。やろう」


「リルさん、ヴィノ。判定は二人に任せるわ」


「おう」


「わかりました」


 こうして突発的にハルとマーブの摸擬戦が始まった。二人は身体強化を施し、高速戦闘に移行していく。そしてマーブは魔法強化も付け足し、魔法による砲撃を開始した。魔法強化をしたマーブの魔法は破壊の限りを尽くすと言われるほどに高威力、そして広範囲だ。ハルは大森林の木の裏に入り視線を切る。魔眼による魔力探知があるので意味はあまりないのだがハル自身が見られていないことに意味があった。ここの木は頑丈で幹も普通の木とは比べるまでもなく大きい。その後ろでハルは狙撃銃を構える。見えていないが感じている。ハルは魔力探知の精度をあげ二発撃った。リルに前に見せた技術だ。マーブは不意を突かれたが肉体強化も施していたので避けることに成功した。しかし、不意を突かれたことによりハルへの意識を少し話してしまった。これが勝負の決着を決める。マーブに肉薄し、そのまま頭を掴んで木の幹に抑え込める。そして腰に下げていた切絶を首につける。ハルの勝利で終わった。


「ここまでですね。ハルの勝利です」


 リルがそう告げヴィノは頷いた。マーブは悔しそうな顔でハルを見ている。


「いい線行けると思ったんだけどな。流石に強いわね」


「まあ俺はリルの眷属だからな。それにあの魔法の砲撃は流石に避けるのは大変だな。ここが何もない場所ならどうなるかはわからかった」


「強者の余裕かしら?リルさんとの訓練をしていればいつか並べるかもしれないから気長に待っていなさい」


「それは楽しみだな。でももうすぐハンター組合に行くぞ。会議に出席する」


「もうそんな経ってたのね。訓練がちゃんとした環境でできなくなるのは嫌だけど会長の呼び出しだしね。それに新人君もいるみたいだし」


「どんなやつかな」


 新たな神級ハンター。そして固定パーティを組んでいた者の中では初めての神級ハンターだ。ヴィノは全く見たことがないがハルは見かけたことがある。マーブに至っては傷を治したのだ。三人はそれぞれ考えていることに違いはあるが楽しみにしているという一点のみは一致していた。

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