マークの選択
ダリノクス支部に帰ってきたアランは不在の間、ロッドに何か進捗があったかを聞いていた。
「マーク君とかから何かあった?」
「いえ、特に何もありませんでしたね。相当悩んでいるようです」
マークはパーティを組んでいる普通のハンターだ。今まで神級になってきた者たちとは違う。その昇級は普通のハンターでも神級になれるという希望の象徴である。今回、アランはマークに表舞台に立ってもらおうと考えている。そのためならばパーティメンバーを丸ごと神級に上げることもやぶさかではない。そしてついにその時が来ることになる。ロッドが普段業務を行なっている執務室のドアがノックされる。外には二人の魔力反応があり、一人は組合職員、そしてもう一人はマークである。
「失礼します。会長、組合長に面会を求める者が来ています。事前に聞いていたのでここまでご案内しました」
「ああ。入っていいぞ」
アランではなくロッドが答え、マークが入室してくる。職員はそのまま入らず自身の業務に戻っていった。アランはマークに椅子をすすめ、マークが腰を下ろしたところで本題に入った。
「決まったかい?」
アランは優しくマークに問いかける。各国に存在するハンター組合の長のようには見えないとてもやさしい声色だった。
「はい。神級への昇級を受けようと思います。パーティメンバーへの説明が上手くできず話してしまったんですけどそれに関しては平気ですか?」
「平気だよ。そもそもパーティを組んでいるものが神級に上がることがなかったからある意味正規の形で上がった第一人者だからね。この間は君個人という話はしたと思う。これに関しては変わらないが神級ハンターがリーダーをしているパーティというもので他のハンターたちの見本になってほしいと思っているんだ」
アランは神級、そしてハンターの顔になってくれと今、マークにお願いしている。これは誰でもできることではない。今までの神級ハンターたちは実力はあっても社交的ではない者たちが多い。それに比べてマークはパーティのリーダーと務めている。そして他の後輩ハンターたちの育成というのも結構しているのだ。そのおかげか後輩パーティには慕われている。そして人柄のおかげかランクがマークたちより低い先輩ハンターたちも彼らを評価していた。
「それは構いませんが今までにも神級の方はいらっしゃるんですよね?自分でいいんですか?」
「そうだね、むしろ君の方がいいんだよ。他の神級はかなり曲者が多くてね。パーティもろくに組んだことがない者もいる。そういうやつよりも君の方が適任だと僕は思っている。そして君と君のパーティを宣伝するのは他の理由も存在するんだ。神級は個人に与えられるものであり、パーティは幻級のままだ。しかし、今までは個人で依頼をこなせる者しか神級になれなかった。その段階で神級の発表をしてしまうと無謀な挑戦をしてしまうハンターが増えかねない。だから君に表舞台に立ってもらってパーティで神級になった者がいるという風に公表したいんだ」
今までは眉唾物だったものが現実として公表される。これはハンターたちのやる気を出させることも狙っている。
「わかりました。その役目、私が請け負います」
「ありがとう。助かるよ。これからも今までの活動通りでいいからハンター組合から依頼があった場合にはそっちに行くようにしてくれるとありがたい」
「はい」
こうして正式にマークは神級になった。ハンター証をアラン自ら書き換えていく。普段は職員が昇級していくごとに書き換えているのだが神級は会長であるアランと各支部の組合長ができる。よほど予定が合わないことがなければアランが行う。それほど重要なことなのである。
「これで君は正式に神級ハンターだ。ハンター証に魔力を通してみてくれ」
マークは言われたとおりに魔力を通す。そうすると幻級の部分が神級に変わる。これが今まで神級ハンターを秘匿できていた理由である。
「すごい、こんな魔法があるんですね」
「これは僕のオリジナルだよ。結構時間かかったけどね。他の神級と違うのは僕が特定の魔法を使うとその文字が神級に固定されることだね。君には神級の看板として頑張ってもらわないとだから秘匿の効果を無くしたいと思う。それはフィスティリアのハンター組合本部で祭典をする時にするから予定が決まったら連絡するね。それじゃあ改めて神級昇格おめでとう。これからもこの国、そして世界のために頑張ってくれ」
「ありがとうございます!それでは失礼します!」
マークが退室していってまたアランとロッドが残った。ロッドはアランとマークで話していて神級になると発言したときからすでに書類の作製を行なっていた。
「会長、各支部に送る書状はもうすぐ終わります。しかし、ハルやマーブはどうしますか」
「んー、まだ開催時期は決まってないからなぁ。ここで決めちゃおうかな。三か月後にしよう。それで書類を作ってくれ。僕はまた大森林に行って伝えてくるよ。僕が行くのが一番丸いと思うから」
「そうですね。実力的に今ここに会長以上に強いものはいませんから」
「それでも神級と比べたら下から数えたほうが早いのが恐ろしいよね」
「全くです」
「それじゃあ善は急げだ、行ってくるよ」
「はい」
こうしてアランは大森林に再び向かう。アランは自分が帰ったときにはもうすでに話し合いが終わていると思っていた。それならば書状をロッドが送って終わりであったが自分が直接聞いてしまったので先延ばしすることができなくなっていた。もう場所はわかっているのだ。使い魔を持ってくればよかったと思いながらアランはサンダルホースに乗り駆け出した。




