大森林への訪問者
ハンター組合から帰ってきたハルは大森林にてリルと日課の稽古をしていた。
「そういえば神級ハンターのやつがリルに会いたいって言ってたやつがいたぞ」
「私に?それはなぜでしょう?」
「そいつは魔法師でな。俺よりも魔法の扱いが上手い。それで魔力が変わったことに興味があるんだってさ。魔力の性質が変わったのは眷属化が要因だからその魔法を使ったやつが見たいんじゃないのかな」
「なるほど。私は構いませんよ」
リルがいいと言うのでハルはまた数日ダリノクスに行くことにした。しかし、それは行く必要が無くなってしまう。稽古中に強大な魔力が大森林の中で広がっていく。これには幻獣種たちも驚きが隠せない。王獣種など比べ物にならない強大さだ。しかし、ハルはこの魔力に覚えがあった。
「この魔力のやつだ。待ちきれなくて大森林に来たみたいだな。ここらで稽古切り上げるか。少し迎えに行ってくる」
「わかりました。それじゃあ待っていますね」
ハルは魔力の反応がする方に向かっていく。ダリノクスの帰りには会わなかったが彼女のことだ。ハルがいつ頃着くか計算してきたのだろう。
ハルが魔力の発生源に着くとそこにはマーブが座り、目を閉じて瞑想していた。そしてハルの魔力に気付き目を開いた。
「随分大きなベルだな。眷属の幻獣種たちは大慌てだったぞ。魔力だけなら幻獣種以上だ」
「やぁハル。大森林は広いからね。こうすればハルから来ると思っていたわ。まあ問題はモンスターも寄ってきてしまうところだけどこれだけ魔力を練り込めば簡単に倒せる。それに自然の摂理で強い存在には近づかないからバカなモンスター以外は来ないし」
「この森は戦闘狂みたいなモンスターが多いから気を付けたほうがいいぞ。下手すると群れで来る」
この大森林は他の危険地帯と違うところがあり、モンスターたちが魔力に恐れないのだ。それだけしっかり繁殖しているということでもあるのだろう。群れを形成しているというのもでかい。格上でも群れで統率さえ取れていれば倒すことが可能だ。しかし中には例外ももちろんいる。例えばリル、彼女の魔力は人族や古代人種とは違い、純粋なモンスターも魔力だ。これは人型になっても変わらない。なので格上すぎて魔力に寄り付かないのだ。このような芸当が可能なのは神獣種のみだろう。この森のモンスターは幻獣種にすら喧嘩を売りかねないのだ。それをハルはマーブに家に向かいながら説明した。
「よし、着いたぞ。ここが今俺が生活してる家だ」
「これは…凄いわね…」
そこには周りに生えている木々同様に高く太い木に家が作られている。エルフの国であるセルフィルドのような光景がこの大森林に広がっていた。マーブの故郷でもあるので既視感があるのだろう。しかしハルはその国には行ったことがないので想像でしかないのだが。
「どうだ?マーブの故郷に似てるか?」
「それ以上ね。これほど立派な木に住めるのは王族くらいじゃないかしら。それこそ会長とかね」
大森林の奥地にはこのような木が大量にあるがこの森以外にはハルが見たことあるのはユグノリアの世界樹のみだ。世界樹はこの木よりも大きいのだがそれ以外に比べられるものがない。そしてばぜ会長の名前が出たのかというと会長であるアラン・セルフォードはセルフィルド出身の王族であり、現王の兄である。性格的に国を治めるのは向いておらず弟に任せ彼は自由に生きることにしたらしい。それを国王も支持しているらしい。アランに任せたら国が傾くとすら言われたらしい。
「アランの家か。まだセルフィルドに行ったことないんだよな。今度行ってみるかな」
「気を付けたほうがいいわよ。あそこ結構排他的だから。私か会長連れて行けば平気だと思うけど」
そう言いながら家に案内する。その時にマーブは足を止めた。中から今日ぢな魔力が溢れ出てきているのだ。ハルはこれを感じ取っているがマーブは直に眼で見ている。それで足を止めてしまったのだ。そして家に扉が開き、そこには白髪の少女が立っている。リルだ。
「ようこそ。魔眼を持つ少女よ。どうぞ入ってくださいな。おもてなしさせていただきますよ」
リルはそういうと魔力を抑えた。圧倒的威圧感がなくなりマーブはその場に座り込んでしまった。
「リル、あんまり驚かせてやるな。この魔力の量は一般のハンターなら意識が飛んでるぞ」
「あら、神級と言っていたのでその辺りは見極めていますよ。それに彼女も大きな魔力をここに来る前に使用していたじゃないですか。それの返答ですよ」
リルはフフッと笑いながらそう言った。ハルはため息をついてマーブに声をかけた。
「大丈夫か?彼女が神獣種のリルだ。系譜的には狼のモンスターだな」
「え、ええ。平気。魔力で圧倒されたのが初めてだったから驚いてしまったわ。初めまして、神狼リル。私はハルと同じ階級ということになっているハンターのマーブよ。よろしく」
「はい。私はこの大森林の主ということになっているリルっていいいます。よろしくね」
マーブが落ち着いたので家に入り、お茶を飲みながら雑談に花を咲かせているとマーブがリルに先ほどのことを聞いた。
「さっき魔眼と言っていましたがそれはなんですか?なんのことか私はわからないんですけど」
「知らないんですか?あなたのような特殊な眼のことを総称して魔眼と言います。あなたの目は魔力を可視化していますね。それと動きも見逃さない洞察力も持ち合わせているようですね。洞察力の方その眼を持っている前提ですが努力の賜物ですね。しかし魔力が見えるのはその眼の効果です。久しぶりに魔眼を持っている人に会いました」
「魔眼ですか。生まれてこの方ずっと魔力を見てきたのでこれは全員が見ている景色だと思っていました。ちょくちょくかみ合わないことがあったのはそのせいですか。このことを聞けただけでここに来たかいがありましたね」
魔眼とは基本的には遺伝である。魔法を昔から得意としてきたエルフが多く持っていたとされているが現在その存在は確認されていなかった。マーブは小さいころから魔力が見えており、それを疑問に思っていなかったため調べることもしなかった。全員が魔力を薄く広げることで探知しているのに対してマーブはただ見ているだけ。遮蔽に隠れていようが魔力はゼロにすることができない。なのでそれを見ることができるマーブは魔法支援のほかに索敵にも長けていた。今はハンターなのであまり役に立たないがこれが人族同士の戦争ならばその有用性は計り知れないだろう。そして魔法支援を好んで使っているがシンプルな魔法攻撃でも圧倒することができるだろう。
「過去、先祖が魔眼を持っていたんでしょう。それがあなたに発現したと考えられますね。まああって困るものじゃないしいいんじゃない?」
「そうですか。それならよかったです。あともう一つ、聞きたいことがあります」
マーブは一呼吸置きリルに向かって言った。
「私も眷属にしてもらうことは可能ですか?魔法特性の変化に興味があります。これだけの理由で眷属にしてもらえるか打診するのは忍びないのですが」
今度はリルが驚く番だった。ハルもこのような話は聞いておらず驚いている。リルは驚きはしたがすぐに冷静になり返答をした。
「あなたを眷属にすることはたぶんできないと思います」
リルはそう返答したのだった。




