主の帰還
昼食もそうそうの食べ終わり内装もほぼ終わりを迎えていたドーボンたち。作業に入ってしまえば王獣種のことは頭から抜けていた。その時一人の幻獣種が反応した。彼は王獣種の発生も察知していた幻獣種だ。
「どうやら王獣種は討伐されたようですね。ハンターの方はそこまで強いという印象はない魔力でしたが勝てたようです。しかも一人で倒したみたいですね。これは私の魔力での感じ方に上方修正が必要かもしれません」
「ハンターたちはかち合っちまったか。それでも倒せたのならよかったな。幻級ってところか。新たに神級ハンターが生まれるかもな。そいつ一人で討伐したんだろ?」
「はい」
一人で王獣種を倒すというのはハンターの頂点にのみできるとされている偉業だ。ハルがほいほい倒してはいるが本来幻級ハンターのパーティが複数で組んで倒すほどの脅威度なのだ。それを今回のハンターであるマークはソロで討伐した。これは驚くべきことなのだ。他の神級ハンターに比べるとまだ粗削りで比較するまでもなく弱いが神級に至る条件は揃った。あとは状況証拠が必要になるがそれは聞かれればドーボンが主張してもいいと思っていた。
そうこうしているうちに王獣種の反応があった魔反対側に強大な魔力反応があった。ここに着くまではまだ数日はかかるだろうがそれでも見覚えがある魔力反応だった。
「リル様が帰還なされるぞ!宴の準備だ!」
幻獣種たちは浮足立って宴の準備を始めた。ハルが眷属になる前までは砂海まで護衛が付きそこからはリル一人でユグノリアに向かっていた。護衛なんて本来は必要ないのだが護衛という名目にしているだけでまじめに行くかの見張りの仕事がほとんどだ。リルは自由気ままな性格なので気になることがあると神獣種の会合であろうとそちらを優先する。なので幻獣種の眷属である彼らが注意をしていたのだ。今回はハルとともに行くので心配はしていなかった。ハルが砂海に興味を示したのでリルはそれを尊重すると読んでいたのだ。そしてその読みは当たった。長年眷属としてリルに仕えている者たちの理解度をバカにできないと学ぶ機会にドーボンとエリーはなったことだろう。そしてこのような長い期間、大森林を空けることがなかったので眷属たちは張り切っていた。もう彼らは王獣種のことなど忘れていたのだった。
マークは王獣種から魔力核を回収した。そして帰路に着く。ファキングの素材は仲間が渡していることだろう。なのでマークはそのまま帰ればいいのだ。しかし、ここで視界が揺れていることに気付く。マークは限界が来ていたのだ。今までソロで戦ったことのない王獣種との戦闘、そして止血をしているが方には穴が開いているのだ。止血する前にそこそこの血が流れている。やっとの思いで野営地に到着しそこでマークの意識が飛んだ。
「あら、こんなところでモンスター除けの魔石も使わないで何しているのかしら。なにこれ、凄いケガじゃないの」
たまたま通りかかった魔法師が治癒の魔法を使う。そうすると肩に空いていた穴が塞がった。そしてモンスター除けの魔石をその場で使用しそのまま去ってしまった。
マークは目を覚ます。体が軽くなっていた。体を起こし肩を見ると傷がない。王獣種との戦いがなかったかのように痛みもなくなっている。不安になりマジックバックを見るとそこには魔力核がしっかり入っていてあれが現実だったのだと認識できた。あの傷を治せる魔法師をマークは知らない。自分のパーティメンバーにも魔法師はいるがそれでも傷跡は残る。それにけが人の魔力を使って馴染ませながら治すのが一般的な治癒魔法だ。しかし、今回は魔力が少ない時に感じる独特な倦怠感がない。治した者が誰かはわからないがマークは感謝し、もう一度立ち上がり街に向けて歩き出した。
ハルはリルとともに大森林を歩いている。他愛のない話をしながら歩いていると前から大きな魔力を発しながら歩いてくる狼系のモンスターが大勢出てくる。そして獣の耳が生えている人物が一番先頭に出てきて跪く。
「おかえりなさいませ、リル様。そしてハル様。我々眷属一同お喜び申し上げます」
「毎回会合が終わるたびにそう出迎えるのやめてくんない?私はあなたたちよりも強いのだから平気よ。それに今回はハルもいるしね」
「ちょっと仰々しいな。俺も平気だから顔をあげてください」
顔をあげて二人を護衛するように両サイドに並びその中をリルとハルは歩いていく。リルは呆れながら歩いているがハルは何が起こっているかわかっていない。そもそも大森林に来た時にはこのような感じではなかったのだ。変わりように驚いていた。
「俺が大森林に来たときは結構フランクに俺にもリルにも話していたがどうなってるんだ?」
「なんだかんだで彼らはさみしがり屋なんですよ。私はほとんど大森林を空けることがないので少し期間が開くと寂しくなるそうですよ。一個前の会合の時にそう聞きました。全く、自然界の最上位の存在たちが何しているんだって感じですけどね」
「まあ歓迎されないよりいいじゃないか」
そして家に着いたところでドーボンとエミーが迎えてくれる。
「よぉ、戻ったなハル。出かけた後すぐにアリエスが来てびっくりしたぜ」
「お帰りなさい、ハル君、リルちゃん。ご飯作ったから食べて頂戴」
二人はいつも通りのようだ。リルとハルは二人にただいまと言い、そのまま家に入っていく。そこには多くの料理が並んでいる。四人で食卓を囲んで食べ始めた。
「そういえば私たちが不在の間、何かありましたか?」
リルは二人に聞いた。ドーボンが酒の入ったグラスを置き、話し始めた。
「まず、さっきも話が出たがアリエスが来たってことだな。ユグノリアで話したか?」
「ああ、話したよ。相変わらず好き勝手生きているって感じだったな」
「お前も人のこと言えねぇけどな。他にはつい数日前に王獣種が出た。幻獣種の人が言ってたから間違いないだろう。でもたまたま近くにいたハンターが討伐したみたいだぜ、それもソロでな」
「ほう、神級のやつらではないんだろう?であればかなりすごい奴が出てきたことになる」
「直接見に行ったわけじゃないからわからないんだ。魔力反応的にはそうでもなかったみたいだけどな。そうなんだろ?」
給仕に徹していた幻獣種の者が話を振られる。焦るそぶりもなく彼は淡々と話し始めた。
「はい。魔力の反応的にはそうでもないと思いましたね。しかも私が感知したときにはパーティでしたしね。足止めで残ったのでしょう」
「なるほどな」
ハルは幻級であると断定した。神級の者たちは基本ソロで動いている。中にはパーティに混ぜって動くものもいるが彼女は魔法師なのでモンスターとのタイマンは向いていない。出会いがしらならば勝てて大獣種だろう。入念な準備期間があれば王獣種でも倒せる実力はあるが。
「パーティで行動しているのならば幻級だろう。魔力核がどうせ組合に持ち込まれるからその時俺たちには知らせがくるだろうさ」
「そうだな。他は特に大変だったとかはないぜ。工房も予定通りできたしな」
そのまま夜が更けていく。家の外では幻獣種たちがお祭り騒ぎをしていた。




