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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
ハンターの宴
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大森林での一幕

 ハルとリルが大森林に帰る少し前。ついに工房が完成したドーボンが幻獣種たちと昼食を食べていた。その時に一人の幻獣種が何かに反応した。


「ん?この反応は…」


 明らかにでかい魔力の反応。彼らにとってはなじみ深いものでもあった。それを感じた幻獣種にドーボンは聞く。


「どうした?なんか気になることでもあったか?」


「いえ、今のところ問題はないんですがファキングが王獣種に進化しましたね。ここからは離れているので問題ないでしょう」


 彼ら幻獣種にしてみれば王獣種など恐れるに足らない相手である。例外的に強い個体なども存在しているがその類ではないのは魔力を感じればわかる。なので幻獣種たちは気にせず昼食に戻った。


「そりゃ、大変じゃねーか。魔力的にどう感じる?ハンターたちはいけそうか?」


 ドーボンはこの森に入ってくるハンターたちを心配していた。王獣種に進化するためには魔力がある程度充満している空間が必要だ。それは気揚力なモンスターがいる必要があり大森林の奥地になってくる。最奥に位置するここに幻獣種が多くいることが決定打になっている。


「王獣種の反応する場所に他の魔力反応はないです。少し離れたところにはいますがこちらもパーティで相当な反応がありますから進化したばっかの個体ならば平気でしょう」


「そうか。それなら平気か」


 こうしてドーボンも気にせず昼食に戻ることにした。このハンターたちは不運にもこの後すぐに王獣種に遭遇してしまう。しかし、それが新たな神級ハンターの誕生の瞬間でもあった。




 マークたちはファキングの素材調達の依頼を受けてこの大森林に来ていた。マークはパーティリーダーであり前衛も張るまさにパーティの要だ。仲間たちと歩いていると強大な魔力反応を感じた。パーティの魔法師にマークは探知をお願いする。


「すまない、この魔力の持ち主を詳しく知りたい。探知魔法でモンスターを調べてくれ」


 そう言われ探知魔法を使用する。マークも魔力を持っていて魔法を使うことができるがさすがに本職には使い方では勝てない。なので任せて自身は他に注意を払っていた。


「こ、これは…」


「どうした?」


「い、猪系モンスターの王獣種です!こちらの魔力も感知されました!」


 王獣種と遭遇してしまった。マークたちは幻級ハンターのパーティだがそれでもう役不足は否めない。しかしこの状況も無視はできなかった。


「お前たち!ここからすぐに離脱しろ!そして組合に行って報告を頼む。俺はここで足止めをする!」


 パーティメンバーからはやはりというべきか反対意見が出る。しかしマークは引かない。


「俺はパーティリーダーだ。パーティメンバーをしっかり守らなければいけないんだ。俺はそう簡単に負けない。だから早く組合に行って報告してくれ!」


 そう言われるとパーティメンバーは覚悟が決まった。マークを残しその場を離れていった。そして森の奥から王獣種が歩いてくる。


「さあ、俺が相手だ。そのでかい図体を真っ二つにしてやる!」


 こうして王獣種とマークの戦闘が始まった。マークは自身の身長と同じくらいの大剣を使っている。それを肉体強化魔法で振り回すのがマークの戦闘スタイルだ。今までと同じ戦い方で戦闘を開始したが流石は王獣種。動きが大獣種であるファキングとは比べ物にならないくらい速い。しかもファキングよりも数倍の体躯でだ。マークは少し焦り始めていた。


「これだけの大きさ、そしてパワーもあるのにこれほど早いのか…」


 今は五分の戦いをしているがマークは相当切羽詰まっている。対する王獣種は余裕があるように見える。このままではだめだと思ったマークは魔法の使用を決めた。大獣種にすら魔法は絶対に倒せる状況でない限りの使用は厳禁だ。倒せなかった場合その魔力がモンスターの魔力核に馴染んでしまうからである。幻級であるマークはそのことは重々承知しているのだがこのままでは埒が明かないので使用することにしたのだ。王獣種は土系統の魔法を要所要所で使ってきている、間違いなく魔法特性は土系統だ。しかし、巨躯を利用した戦いをしているようでハルが対戦していたモンスターのように土を固め鎧のように纏うことはしていなかった。なのでマークは火魔法を大剣に付与し、それでたたき切ろうと振り上げた。


「これでまずは大ダメージを与える!これさえ決まればその後はどうにでもなる!」


 王獣種が突進してくる。構えをやめて横に跳んで回避する。マークがいた地面から土の針が生えてきて、そこに王獣種が突っ込んだ。串刺しにした後に突進でとどめを刺そうとしていたのだ。


「モンスターでもさすがは王獣種と言ったところだな。判断を間違えていたら俺は死んでいたな」


 王獣種は知能が他のモンスターよりも高い。そして老齢になるにつれて戦闘経験を積んでさらに賢くなる。そうなる前に狩るのが基本だ。そしてこの王獣種は進化したばかりの個体であるためその辺りはまだ弱い。マークは隙ができるのならばそこだと決め、再び構える。土煙から大きな影が見える。自身が作ったものだがそれでも硬いはずだ。しかし土煙から出てきた姿には傷一つない。王獣種はマークの方に狙いを定めるように睨みつけ、再び突進してきた。


「その突進はさっき見ている。その針もな」


 先ほどと同じように地面から針が生えてくる。それを躱し王獣種はもう一度突っ込んできた。前回と違うのはマークが先ほどよりも離れていないことだ。マークは大剣を横に振りかぶりそのまま振り抜いた。王獣種はそれを避けることができずにダメージを受けた。前足に使い物にならないくらいのダメージを受ける。そして大剣には火魔法が付与してあるため傷口が焼けている。王獣種は低い声でうなっている。しかしまだあきらめた顔はいしていないようにマークは感じていた。


「そんな顔してももう動けないだろう。俺の勝ちだ」


 マークは少し油断していた。普段ならば絶対しない油断であった。野生のモンスター、動物は瀕死の状況が一番危険なのだ。それは幻級ハンターであるマークには常識だった。しかし、今回は王獣種という明らかな格上相手に勝ったのだ。王獣種に歩いて近づくマーク。王獣種が作った土の山が点在している中をマークは歩いていた。その山の一つから不意に針が飛び出る。マークはとっさに反応したが左の肩を貫かれてしまった。


「ぐっ!」


 その傷から血が滴る。王獣種が起き上がる。そしてマークを見下ろしてきた。


「なんだその目は。俺はまだ死んでいない」


 マークの武器は大剣だ。いくら肉体強化の魔法を使用していても片手で自由に振り回すことはできない。マークは回復薬を腰のカバンから取り出した。これほどの傷には効果が薄いが止血はできる。そして麻酔効果も少しあるため傷口に回復薬をかけた。


「ゔっ、いってぇ。でもこれで血は止まったし、だんだん効いてきたな」


 かなりの痛みを伴う行為なのだが今までにこのようなことはしたこともあるので慣れている。上から見下ろしている王獣種に対して大剣を切り上げるように攻撃した。王獣種は前足がもう使えなくなっていて機動力が無くなっている。その攻撃があたりマークはさらに追い打ちをかける。そして王獣種の頭に体験を突き刺した。王獣種は動かなくなった。マークは幻級ハンターでありながら王獣種のソロ討伐を成し遂げたのだった。

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