ハルの可能性
リルとハルの摸擬戦が終わり、二人が観戦していた者たちのところに帰ってくる。リルはハルに先ほどの摸擬戦でだめだったところを入念に聞いていた。リルが戦闘面において真剣に取り組んでいるところを見たことがなかった神獣種たちは驚いている。しかしハルは出会ってからこのような状況だったので何に驚いているかもわかっていない。そこにアランが来てハルに話しかける。
「ハル君、神級に上がったとき以来に戦闘を見たけどだいぶ変わったね。あの時ですら敵がいないくらいだったのに今は本当に戦いに負けることないんじゃないのかな」
「どうだろう。今のは魔法なしの状況だったしな。それに俺の魔法よりも神獣種のほうが強いと思うぞ。リルがそうだしな」
ハルは神獣種は全員が同じような実力があると思っている。そして魔力の感知的に言うとリルよりも他の神獣種のほうが異質な魔力をハルは感じていた。スクリスはステルス性の高い魔力操作をしているようだ。ハルでも初見で見逃すほどの魔力操作をしている。バンゴスタとオシーアに関しては得体が知れないという感想しか出てこない。ハルがリルの眷属であるというのも関係しているのだがリルの魔力はしっかりと感じ取れている。それが問題なのだ。リルは神獣種の中で一番強いと言われている存在である。だからこそ戦いの研究もされているしそれは今も続いている。それでも他の神獣種は勝てていない。数千年に一度だけ神獣種同士の戦いが勃発することがある。些細なことで喧嘩になりそこから始まるのが通例なのだがリルはそこで一回も負けていない。最新だとスクリスとリルが行なった喧嘩だ。スクリスの性格的に結構煽る場面がある。それをリルは普段、無視するのだがその時は機嫌が悪かった。その煽りを聞いてそれに乗って喧嘩が始まった。その時は豪雨林の半分が焦土と化した。燃えづらい木々が特徴の豪雨林の木々が、だ。それほどの戦闘であった。そのあたりでバンゴスタが止めた。止めていなかったら多分スクリスはこの世からいなくなっていただろう。
「それは神狼さまが強いんだって。眷属だから強さはわかってるでしょ?」
「わかってるよ。でも空神龍や海神龍のほうが俺には強そうに見える。魔力が今まで感じたものと系統が違くて読み切れない。神蛇に関しては俺と魔力の使い方が似ているからある程度予想できる。それでも勝てるか微妙だと思うけどな」
そもそも神獣種に勝てる可能性があるだけでおかしいのだ。それもタイマンで。普通は神級ハンター、幻級ハンターを総動員して勝てるかどうかの戦いのはずなのだ。しかし、今の状況ではかなりこちらにいい働きをしている。過去の神獣種の復活、それをソロで倒せるかもしれないハンターの出現。今後どうなるかはわからないが寿命もないようなので少し安心できる。
「戦いを見たこともないのに魔力を見ただけで戦い方がわかる君がおかしいだけだよ。普通はわからないものなんだから」
「アラン、もういいでしょ。ハルとこれからご飯だからこれで失礼するわよ」
「神狼さま、すみません。ではハル君また今度ね」
「ああ。どうせまだいるんだろ」
「そうだね、もう少し滞在するよ」
こうして二人は会話をやめ、ハルはリルに連れていかれてしまった。この場にはあの二人以外が残っている。もちろん先ほどの摸擬戦の話になった。
「はぁ。これならわざわざ王獣種を出す必要なかったじゃないか。眷属にするかどうか悩んで仕方なく王獣種のまま残しておいた個体だったのだがな」
「それにしても圧巻じゃったな。ワイバーンの時はわしらに戦い方を見せているのを感じてはいたがリルとの戦いでそれがよくわかったの」
「あれはやばいわね。どうしてリルが眷属にしたのかを理解できたわ。強さが別格ね」
バンゴスタは王獣種が無駄だったと愚痴をこぼしているが他の神獣種はハルの戦いの話に夢中になっていた。リルがどうしても欲しいと言っていた意味が理解できる強さだった。スクリスも魔力の感じをここに移る前に感じていたのでわかったつもりであったが実力についてはだいぶ見誤っていたようだった。
「しかもあれで魔法無しでしょ?ありえないわよ。眷属になって分類的には幻獣種だけどそれにしてもイレギュラーすぎる」
「獣人族の特徴が表れていたがあれはリルの狼の特徴に引っ張られた結果かの。獣人族とは生物として違ったのぅ」
「ま、まあ今はあの二人が敵じゃなかったことを安心しましょうよ。炎神龍と戦うのに被害を抑えるためにハル君にしようと思ってたけどもしかしたら同じくらいの被害想定しとかないとかもしれないなぁ」
スクリスとオシーアは強さの根源を探っている様子であった。そしてアランは本当にハルに戦いを任せて平気なのか疑い始めていたが近距離戦闘ならば平気だろうと高を括っている。しかし、ここにいるアリエス以外ハルのメインの武器種を知っている者はいない。そしてアリエスも誰にも聞かれないことを答える気はなかった。それにそもそもアランは知っていると思っているのだ。現実はハルの戦闘スタイルをアランは知らない。
「そうだな。今は仲間であるし、問題あるまい。そもそもリルは面倒ごとを嫌うからな。反旗を翻すことはないだろう」
こうしてバンゴスタたちは片付けを竜人の兵士たちに任せ、ここを後にした。ハルとリルの戦闘でだいぶ汚れたり壊れたりしたのでそれの改修や掃除に竜人たちは奔走していた。




