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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
砂漠の世界樹
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会合は続く

 異様な静けさが部屋を包んでいる中、ハルは質問に答えた。


「行くことについては問題ありません。しかし、今の私の立場はリルの眷属です。それも加味して考えていただけると嬉しいですね」


 ハルはあくまでもリルの眷属だと主張した。これにリルは満足そうな笑みを浮かべる。オシーアも行くことについては問題ないと言ってもらえたので一安心していた。


「行くことは問題ないとな、それは重畳。リルよ、眷属はこう申しておるがおぬしはどうじゃ」


「まあ私もハルがいいならいいけれど。その場合は私も行くわよ。人族の国が無くなることになるかもしれないけれど、ね」


 これがリルなのだ。魔力を込め周囲の神獣種を威圧する。アラン曰く、神獣種の中で一番強いと言われる神狼リルが今ここに再び相まみえた瞬間である。ここで口を開いたのは驚くことにハルである。


「まあ落ち着けって。俺は死なないし無事に帰るからそんなに心配しなくていいよ」


 ハルは普段は謙虚であり、神級ハンターの中でも常識があるほうだ。それでも比較対象が神級ハンターなのだ。常識にとらわれないものしかいない中での話であり、ハルも一般とはかけ離れている。相手が神獣種だというのにこの返しが出るのは神級ハンターのみだろう。


「ふむ、そう言っているようじゃが?リルはそれでも考えを変えんのか?」


「まあハルがそこまで言うなら私が出張らなくてもいいかしらね。私にも届くかもしれない力を本当はこの目で直接見たのだけれどね」


 こうしてハルの火山地帯の遠征が決まった。しかしこの話はいつになるかわからない話でもある。なにせついこの間休眠から復帰したばかりだ。そして狡猾な炎神龍のことだ、準備は欠かさないだろうと神獣種たちは判断していた。


「それではハル殿にこの件は任せよう。どうせいつ来るかもわからないのだ。もしかしたら向こうの大陸の居心地が良すぎてこない可能性もなくはないからな」


「あんな逃げ方しといてそれはないわね。あいつは無駄にプライド高いから」


 バンゴスタの意見を真っ向から否定したスクリス。バンゴスタも本気では言っていないのだがそれでも噛みつくとはもうスクリスの癖なのだろう。自然界の中での強さがこの傲慢な性格を作り出していた。それに比べて他の神獣種はまだましである。


「すぐに噛みつくでない。バンゴスタもわかっておる」


「ふんっ、うるさい爺さんね」


「そんなだからおぬしの眷属が大変な思いをしておるのじゃ」


 そんな軽口をたたきながら話は進んでいく。ハルは仮にも仲がいいとは言えないこの神獣種たちが数百年に一度とはいえ集まっていることに疑問を感じている。しかし、今聞くのも憚られるのでハルは聞かずに火山地帯にいるハンターについて話すことにした。


「ひとつ、いいですかね。火山地帯にある人族とドワーフの国、”マグノリア”ですがそこには私とアリエスと同じ階級である神級ハンターがいます。その彼にも声を掛けますか?私もアリエスも面識はありますし」


「ふむ、戦力は多いに越したことはないか。その者は強いのか」


「力だけならば私以上です。少しばかり考えが浅はかなときがありますが。あとは意外と器用ですね。力で戦いますが魔力操作もなかなかです」


「私はあのおっさん嫌い~、話通じないし」


 マグノリアを拠点にしている神級ハンターであるヴィノは口数が少ない。ハルに対してはそれなりに話すがアリエスなどはほとんど交流がないのもあると思うがほとんど話したことがないらしい。二人とも自分の世界を持っている人物だ。


「それは二人とも自分の分野の話しかしないからだろう。ヴィノの話をアリエスは聞いていないだろう。それと一緒だ」


 ハルがアリエスの意見をバッサリと切り捨てる。アリエスがこの作戦に来るわけでもないのでいいとハルはそう思っていた。


「なんで私を蚊帳の外にしてんの?私もその作戦参加するよ?神獣種と戦う機会なんて今後ないと思うし行きたい」


 ハルは今度こそ頭を抱えることになる。ハルは戦い方を合わせることができるがヴィノとアリエスは無理だ。自分を通すだろう。そこにバンゴスタが口を挟む。


「それもアランが来たらでいいだろう。ここの神級ハンターが二人いることもかなり想定外なのだ。まとめて報告したほうがアラン的にも楽だろう」


 決してそのようなことはなく、アラン的には一気に来るより小出しのほうが精神衛生上うれしいとは思うのだがこの場でその結論が出ることはなかった。ハルもアリエスもあまりそのようなものを苦にしない性格だったのがアラン的には災いした。そのような話をしていたところに扉がノックされた。その対応をドーグがして、開けてみると給仕のエルフが一人立っていてそのままドーグとともに退室した。そうして少ししてドーグが戻ってきた。


「アラン・セルフォード様がサンドリアを今発ったそうです。途中でこちらの砂上船に乗り換えて到着予定です」


「そうか。明日の夜には着くだろう。この話の続きは明後日再度行おう」


 そうバンゴスタが言い、今日の話し合いは終了した。


「ハル、ご飯に行きましょう。つまらない話して疲れました」


「ははっ、そう言わずにな。ご飯行くか」


 こうしてハルはリルとともにご飯を食べに行ってしまった。スクリスはアリエスと今後の話をしながら部屋を出ていく。オシーアとバンゴスタが残る。


「ハルとやらはバンゴスタから見てどうじゃ。進化の方は」


「進化しないとも限らない、としか今は言えないな。進化しなくとも我々に届きうるぞ。そもそもリルの時点でわれらよりも頭一個抜けている。それにあの眷属だ。性格的にも平気そうだが変な気が起きなければいいのだがな」


「その時はわしら、他の神獣種で潰すしかあるまい」


 神獣種の力で幻獣種になったモンスターは強くはなっても進化はしない。しかしハルは人族でありながら眷属になった。それがどうなるかわからないのだ。そのような心配事を抱えながら二人は部屋に残って話し合っていたのだった。

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