大森林突入
翌日、ハルは大森林へ入っていった。大森林で王獣種の目撃情報があった場所まではハンターが作った野営ポイントをいくつか経由しなければたどり着けないほどの場所であるのでハルは焦らず進むことにした。外縁部は駆け出しでもクエストに来るほど落ち着きはしているがそれでもモンスターは存在する。外縁部は食用のキノコの原生地なのでそれを食べる猪系のモンスターが多く、そのモンスターを食べる肉食のモンスターも来る。外縁部で十分に育つことができたモンスターはハンターの狩猟対象になりやすい。そして大きくなるとエサも相対的に少なくなるため、大きなエサを求め大森林の奥へ進んでいくのだ。猪系のモンスターは人族のご飯としても狩猟されるため数を保つために狼系のモンスターをハンターが間引きする。こうすることで外縁部の環境は整えられているのだ。しかし、それはあくまでも外縁部の話である。奥に進むにつれて人の手は届かなくなり自然が猛威を振るってくることになる。
ハルは外縁部にいるモンスターを適度に間引きながら奥へ進んでいく。ここにいるモンスターは獣種と言われる小型のモンスターばかりなのだが今は王獣種の出現によって低級ハンターたちがここに来れない状況になってしまっているためこの作業も重要であり、食料は現地調達が基本なのでそのためでもある。このあたりで異変に気付き始めていた。
「なんか普段よりファピングの数が多い気がするな」
ファピングは猪系の獣種モンスターである。もうすぐ大獣種のファキングになるのではないかという個体も存在していた。ここよりも奥に出現するレベルのモンスターであり、明らかに王獣種の影響である。早く王獣種を討伐しなければもっとひどくなり、ドーボンの工房を含め近隣の村に避難勧告が出かねないので早期発見できたことを幸運に思うしかない。少しばかりペースを上げようかと考えていたところでそれは起こった。ファピングに対して鋭い速さで跳びかかり動かなくなったファピングを食べ始めた狼系のモンスターがいた。そのモンスターはキングルフ。狼系の大獣種だ。
「ここにキングルフか、なかなか奥地はエサが少なくなってるかもな。しかも雷系統の魔法を使うか、噛みついたときに電気を流して動きを止めたな」
木の陰からその様子を見ていたハルは大獣種が使った魔法も看破していた。育った環境によって使う魔法が決まるのだが雷系統の魔法を操るモンスターは非常に少ない。高い山に生息しているモンスターならばあり得るがここは森であり、奥の高い木に基本的には雷は落ちる。ここら辺のモンスターは無縁の系統なのである。しかし、現にキングルフは雷系統の魔法を使っている。つまり雷が落ちる可能性がある木の近くが縄張りのモンスターであり、かなり外側までエサを求めてきたことになる。このようなことを考えていた時にキングルフが食事をやめこちらを睨むように見てきた。明らかに臨戦態勢だった。
「気づかれたか。まあこいつはここで狩ったほうがいいだろうな」
腰に掛けていた刀に手を伸ばし居合の姿勢をとる。キングルフは咆哮をあげ跳びかかってきた。前足を鋭く振り下ろし爪も立てている。潰すか爪で切り裂くつもりなのだろう。ハルは素早く横に跳びそれを回避する。そしてそのまま抜刀し前足を横から切りつけた。その速さのキングルフは反応できなかった。そして時間差で自分の足がないことに気付いたのだ。そして抜き身のまま首を切りつけた。多量の血が噴き出し苦しみながら大きな口で噛みつこうとしてきた。それも危なげなく避けてキングルフは動かなくなった。ハルが手にしている刀の銘は切絶。最高硬度の鉱石であるブラックメタルを使用しドーボンが手掛けた黒く美しいハルの愛刀である。魔石は使っていないので魔法の付与はされていないが切れ味は世界最高クラスである。
大獣種を狩ったハルへ挑んでくるモンスターは周りにはいなかった。本能で勝てないと悟ったのだろう。キングルフの魔力核をはぎ取っていく。狼系のモンスターは筋肉質であり食べるには向かない。そしてこの素材も取り切れないので魔力核のみを取った。魔力核はまだ小さく握りこぶし程度の大きさだった。魔力核は名前の通り魔力を生成する機関でありこれを他のモンスターが食べるとその魔法特性を得てしまうので素材が要らなくても魔力核は抜き取るのが基本である。
こうして大獣種との戦いを終わらせたハルはさらに森の奥へ進んでいった。




