模擬戦後の語らい
バンゴスタが場内まで下りてくる。その後ろにはリルもいる。
「見させてもらった。まだまだ我がユグノリアは成長することができると証明されたな。今はもう戦争ということは無くなったがどこかの国が力を付けて変なことを考えるかもしれん。その時のために力をつけておけ」
「はい!」
バンゴスタの言葉にラグルは大きな返事をする。リルはハルに近づき服に着いたほこりを払っていた。そしてハルはバンゴスタに言われるがままにバンゴスタとリル、ドーグとともに闘技場を後にした。そして広い部屋に通されそこに食事が運ばれてくる。
「我が国で一番と言っていいほどの腕のシェフが作ったものだ、たくさんあるから遠慮なく食べるがいい」
「それではいただきます」
そこで二人の神獣種とハルが食事を始めた。ドーグは食事はせずにバンゴスタの後ろに控えている。バンゴスタやリル、ハルの飲み物の減り具合を確認しつつ都度注いでいる。
「このドーグはラグルの父親なのだ。そして武術の師匠でもある。さっきの戦闘、ハル君から見てラグルはどうだった」
「ラグル殿の父上だったんですね。それならばあの強さは納得です。そうですね、自分が意見できるレベルとは思いませんがかなり強かったですよ。今まで戦ったものの中で速さだけなら頭一つ抜けてましたね」
実際、ハルは今まで彼以上の速さの敵とそれほど戦闘経験はない。魔法特性上速さが出るモンスターはいたが自我が確立している中では彼以上の速さの者とは戦ったことがなかった。
「これはまた謙遜だな。実際問題、肉体強化をしなくてもよかったのではないのかね?今までの摸擬戦を見てきた感じ使っていなかったようだが」
「今回はバンゴスタ様やリルが見ていましたから半端な戦い方はやめようと思いまして。しかし結果使ったことは正解でしたね。最初の一撃で速攻で決めようと思いましたから」
最初の攻撃ではまだ肉体強化は使っていなかった。それを素の技術と速さのみでやり過ごした時点で相当いかれてはいるのだがハルはそこで肉体強化の使用を決め、同時にそれを囮にしようと決めた。このような判断の早さもハルの強さの一つだろう。今の時代に生きているものには考えられない戦法でもあったのだがハルはハンターの経験を活かしそのようにした。
「肉体強化の発動スピードもさることながらあれを囮に使う方法は知っていたのですか?」
ここでドーグからの質問があった。これは純粋に気になって聞いてしまったという感じだ。それをバンゴスタも咎めはしない。それだけで彼らの関係値が伺えた。
「あれはハンター業をしているときに結構使うんですよ。獣種や中獣種は魔力がほとんどないので関係ないですが大獣種からは魔力の反応に敏感になってきます。なのでこれでつり出すのは結構使いますね。あとたまに組合から対人の依頼もありましてね。その時は使う時がありますね」
「ふむふむ。ほとんどはハンター業で培ったものということですか。それにしてもハンター組合の依頼で対人ですか。それまた聞かない情報ですね」
ハンター組合では自然環境の維持も活動のひとつである。なのでモンスターを狩るにも組合の許可が必要である。その許可もなくモンスターを狩っているもの、あとは行商人を狙う盗賊な類、これをハンター組合が秘密裏に裏で処理している。無許可でモンスターを狩るものはほとんど存在しないが盗賊に関しては残念ながら結構存在している。大きな町の近くにはあまり出てこないが離れた村や小さな町の近くには現れやすい。各国の騎士団が盗賊に関しては対処してくれているのだが騎士団の手が届かない場所に存在している村はハンターが警備したりしている。そのような村にはモンスターも出やすいので幻級ハンターのパーティが派遣されることが多い。たまに経験の意味も込めて王獣種相手に幻級ハンターのパーティが多く招集される場合がありその時は手の空いている神級ハンターが派遣されることもある。ハルも何回か派遣され行ったことがあり、その時には一度だけ襲われたことがある。その時は返り討ちにしそのまま捕まえて刑務所に送ってやった。ハンターの依頼にはこのような物もあるのだ。
「はい、これは騎士団の範疇なのであまり頻繁にはないですがたまにありますよ。今は階級が上がったおかげでほとんどないですけど」
「なるほど。ハル殿、その技術はあまり人前で使わないようにした方がいいかもしれません。昔はその技術が当たり前だったのですが今は使える者もほとんどいません。それこそ私のような幻獣種でなければ難しい技術です。それは今の時代の戦闘において強力すぎます。これを力におぼれそうなものが手にしてしまうと最悪戦争に発展してしまいます」
ハルは戦争という単語が引っ掛かった。今の時代は人族がモンスターの脅威に対抗する時代だ。人族同士で争っている場合ではない。しかし、ドーグの目は真剣であった。彼はモンスターであるが戦争を昔経験しているのだろう。幻獣種になっていればモンスターかなど些細な問題である。リルのほうも確認してみるがリルは食事を頬張っていた。しかし、何か知っていそうな眼はしている。あとで聞こうと思いながらドーグに返事をする。
「わかりました。今後は控えるようにしましょう。しかし、今戦争などを起こそうという人族の国はない気がするのですがそこはどうなんでしょう」
「ああ、この大陸では平気でしょう。しかし別の大陸ではこの大陸よりもモンスターの進化が遅い。この大陸には四人の神獣種がいますが同じくらいの面積の別大陸では一人のところもあればいないところもあるんですよ。そのような国ではモンスターの脅威よりも人族同士のほうが付き合いが大変みたいですよ。なにせ知性のあるモンスターが人族にとっては一番嫌でしょうから。人族よりも強く寿命もほぼない、そして話し合いもできる。人族からすれば劣勢状況から会談が始まるわけですから」
他の大陸ではそのようなことになっていたのかとハルは話を聞いて思った。しかし、このような話を聞いていると他の大陸よりもこの大陸のほうが異常なのではないかと思いもした。一人で国を崩壊させることもできるであろう神獣種が四人もいるのだ。他の大陸の状況を聞いてハルはこの異常性に違和感を覚えた。
「この大陸にはアランがいるからな。彼の話はなぜか聞きたくなるのだ」
ハンター組合会長、アラン・セルフォード。彼の存在がこの大陸では大きいらしい。ハンターたちに気を遣う優しい人物であるのだがまさか神獣種とも面識があったらしい。彼はエルフ族のようであるがいくつであるのかは不明なかなりの長命な人物だ。これからある会合ではこの話も聞けるのだろうかとハルは食事を食べ進めながら考えていた。
初めて家名つきの名前が出てきました。これは単純に身分の差です。この物語にはあまり出てこないであろう身分の人物です。




