竜人との付き合い
竜人の兵士たちに破竹の勢いで摸擬戦を勝っていたルードが敗北したという噂が流れた。それを本人が否定せず肯定の姿勢を見せる。そのことによってルードに勝ったというハルという人物が竜人の兵士の中でホットになっていた。
「あのルードが負けたんだって?摸擬戦でほとんど負けていなかったやつだぞ。俺らでもルードには勝てるか微妙なんだがなぁ。外の国はそんなにレベルが上がっているのか?」
「それがそのハルなる人物がかなり異常だという話を聞きましたよ。なんでも彼は神狼の眷属であり、人族であるときに眷属に誘われたらしいです」
兵士たちは訓練と摸擬戦を繰り返しながらもその休憩時間でハルの話が尽きることはなかった。そんな時その訓練に参加していたルード本人がすごい情報を話し始めた。
「ハル殿に訓練や摸擬戦に参加してくれないかと打診をしてみたんだがなんと了承をもらえた。明日に来るそうだから揉んでもらおうと思っている」
ルードは兵士の中で若い方ではあるのだが兵士は実力主義でありそこに年齢は関係ない。そもそも彼らはモンスターなので長生きのほうが強いのが自然の摂理になっているのだがこの場合はルードが特殊例だろう。王獣種の飛竜であった頃から他の個体よりも強く、幻獣種にすらも勝てる実力があった。幻獣種に進化する前にバンゴスタが彼を見つけ眷属にした。そのころのルードはかなり凶暴であり自力で幻獣種に進化すると今のバランスが崩れる危険性があった。それを防ぐためにバンゴスタが眷属にしたのだ。
「じゃあ明日はそのハルとやらが来てくれるということか。俺の相手になればいいが」
そこに話を聞いていた兵士長が来た。彼の名はラグル。現兵士長で元兵士長で今はバンゴスタの付き人をしているドーグの息子である。
「はっ!僭越ながら兵士長とかなり実力が拮抗していると思っております。私には兵士長の実力が高すぎてうまく感じることができませんのでしっかりとはわからなかったのですが兵士長から感じる圧をハル殿からも感じました」
「それでお前は喧嘩を売ったのか?そのような実力差があったにもかかわらず、だ」
「それが彼の気配はそこらのモンスターよりも弱く感じたのです。それがなぜなのかわかりませんでしたが戦った時に初めてその気配を感じました」
ハルはあの時自身の魔力を抑え込み気配を絶っていた。これはハルがそうしているわけではなくハンターの習慣みたいなものでハルにその気はない。しかしその技術はかなり高度なもので出来る者はあまりいない。神獣種と幻獣種の一部、そして神級ハンターくらいの者だろう。この中でもハルは最上位レベルで魔力操作がうまく、気配を消すことができる。
「なるほどな。俺の親父殿のような魔力操作を使用するか。これは明日が楽しみだな」
こうしてこの日の訓練は終了した。
次の日になり訓練場にルードが連れたハルが訪れた。兵士長が入り口に向かいハルに挨拶する。
「私が兵士長のラグルだ。よろしく頼む」
「私はハルと申します。今日はよろしくお願いします。今日はどのようなことを?」
ハルは今日行う訓練の内容を尋ねる。ルードからは摸擬戦の相手をしてくれと言われてはいるのだがそれしか逆に知らないため兵士長と言われるラグルに聞いた。
「今日は若手は戦略などの座学が基本になってくる。ルードに来ているとは思うがハル殿には中堅以上が参加する摸擬戦に参加してほしい。全員とはできないのでこちらからハル殿に挑戦する者たちを選ばせてもらった」
どうやら竜人の中でハルとやりたい者たちを選んでしてくれるそうだ。
「それではこちらに」
兵士長自らが案内し摸擬戦を行う訓練場に来た。そこには多くの竜人の兵士が摸擬戦を行なっていた。ハルはそこで周りを見渡す。摸擬戦をしていない兵士たちが一斉にハルを見る。かなりの威圧感だ。ここにいる全員が幻獣種であるのだが信じられないくらい多い。こうして国の兵士として存在しているのはかなりレアな事例である。
「まずは彼からお願いします。武器はこの中から選んでください」
「はい」
見渡した感じ中堅レベルの竜人が最初に出てきた。このメンツではルードと同じくらいの実力であろうとハルは雰囲気を感じ取った。そして武器は木製のもので武器種は様々な種類がある。木製ではあるが素材は世界樹である。ハルはその中で普段自身が使っている刀に一番長さが近い木剣を選択した。
「それではハル殿。お願いします」
「はい、よろしくお願いします」
こうして摸擬戦が始まった。竜人は鋭く切り込んでくる。大森林戦った王獣種よりも速い。しかしハルは冷静に竜人の木剣をいなす。この竜人は木剣の中で長めの物を二振り使う二刀流だ。ハンターの中でもそこそこいるのでハルはその対処法を知っている。知っている人よりもこちらの竜人のほうが強いがハルはそれに対応する。そして見えないレベルの速さでもう一方の木剣を弾き、身体が浮いたところに切り込んだ。首に木剣が当たったところでハルが剣を止める。
「そこまで!ハル殿の勝ち!」
ハルは最初の摸擬戦を危なげなく勝利で終わらせた。




