ユグノリアと大森林の今
ハルとリルの二人はユグノリアに到着した。砂上船に乗っていた竜人に宿に案内してもらっていた。
「ここが会合まで泊っていただく宿です。宿と言ってもほとんど外国の方はいらっしゃらないのであまり使っていない場所ではあるのですがどうかお寛ぎ下さい」
竜人から変わったこの宿の従業員のエルフはそう言って去っていった。
「ユグノリアには俺たちのようなよそ者があまりこないのか?」
「そうですね、そもそも砂海の真ん中にある国ですし外からは距離的に見えません。それにここまでくる手段が乏しいんですよ。大森林から私たちは来ましたがここの国挟んで反対側にサンドリアという人族の国がありますがそこの技術で作られた砂上船では長い砂海の旅はできないですしね」
サンドリアと呼ばれる国があることは知っているがハルは行ったことがない、それは単純に用事がなかっただけだ。サンドリアにはハルと同じ神級ハンターが一人いる。その周辺は彼が対処しているためハルの出番はなかった。ハルはそこそこアグレッシブに動くタイプではあるのだがそれは自分が興味を持ったもの、そして自分が使う武器の素材に必要なときに限られる。今回はリルの眷属になったこともありユグノリアの技術力にも興味があった。そしてリルからの強い要望により付いてきたのだ。リルは普段、あまり眷属を連れて歩かない。というかそもそも大森林から出ることがない。なのでこういう時でないと眷属のお披露目ができないらしいのだ。そしてただの眷属ではなく自身の夫になる男だ。リルは少しテンションが上がっていたらしい。
「これからはどうする?まだ会合には時間があるが。俺は少し町を見て回りたいのだが」
「では、一緒に行きましょうか。私もハルと町を見て回りたいです」
「神獣種がそう簡単に出歩いて平気なのか?俺はそこがよくわかっていないんだけど」
ハルの言い分もわかる。外の世界では伝説上のモンスターだ。歴史書でも少ししか載っておらず主に物語で出てくるものだ。そのような存在が出歩いていいのかハルは思っていた。しかし、ここはユグノリアでありこの国の象徴でもある世界樹には神獣種が住んでいる。それはこの国の住人にとっては当たり前のことで神獣種がいたとしても驚かない。流石に敬意をもって接してくれはするが畏怖の念はない。
「それは問題ないです。バンゴスタがこの国を統治しているといってもいいくらいには神獣種はこの国に馴染んでいますよ。まあ急に同格の私が出てきたら驚きはするでしょうけど」
笑いながらそうリルは話した。確かに竜人は幻獣種のはずだがこの国に普通に住んでいる。しかもかなりの人数だ。エルフやドワーフの国と聞いていたが数はあまり変わらない気がする。
「それじゃ出かけるか」
「はい!」
ハルとリルはユグノリアの町に繰り出していった。
場所は大森林最奥、リルの家。その家は大きな木をくり抜いて出来ているのだがその家から少し離れた場所の木をくり抜いて新たな家ができていた。ドーボンとエミーの家だ。彼らの住む木には入り口が二つ存在している。一つは居住スペースへ行く扉。そしてもう一つは二人が武具製作する工房へ続く扉だ。居住スペースはもう完成している。リルの指示で二人が眷属になった時点で作っていた。しかし住むとはまだ決まっていなかったため工房を作っていなかったのだ。住むかわからないのになぜ作っていたのかというとリルが気合を入れすぎた結果と言わざるを得ない。あとは、工房についての知識を持っているものがいなかったのも原因の一つだろう。なので今、工房主が指揮を執り工房の工事を行なっていた。
「そこはもっと寄せてくれ。そっちはもっと離しておいてくれ!」
ドーボンが要望を幻獣種たちに言っていく。エミーは口を出さない。そもそもドーボンの工房で手伝いをしていただけなのだ。そしてエミーの要望はドーボンが出してくれている。これぞ夫婦と言える理解度であった。なのでエミーは休憩時間にご飯などを作っていた。幻獣種たちは自分たちがすると言ったのだがエミーはそれならば一緒にと言って自分が立たないということはなかった。彼らの料理はまだ大味なのも理由にあるのだが一番の理由はドーボンには作ってあげたかったのだ。しかっりとここに愛はあるのだった。
「そろそろ休憩よ。ご飯を持ってきたから食べましょ」
エミーがご飯を持ってくる。その場で飯にするので食べやすい一口サイズのものが多い。それも味は絶品でドーボンはもちろん、幻獣種たちにも非常に好評であった。飯を食べながらハルの話になった。
「ハル君、無事ユグノリアに着いているかしらね。まあリルさんがいるし問題ないと思うけど。しかもユグノリアからの迎えも砂上船で来るそうだし平気か」
「問題ねぇだろうよ。それこそかなり強いモンスターが出てもハルなら問題ないしな。それに今まで一人でハンターの仕事をこなしていたんだ、道に迷うこともあるめぇよ。それよりもかなり時間がかかってるな。大森林の木はかなり硬いから作業が難航してるし、建てるってより削って作るからかなり大変だ」
木の中に作るためくり抜いているのだがこれがかなりきつい。しかも工房は家よりも大きくな部屋が必要なので大変なのだ。
「でもこうして燃えない木ってのは不思議だな」
木の中に工房を作ってまず燃えないのかという問題が出たのだが大森林の木はこの成長具合を見るとわかるように普通に木とは違う。魔力をはらんでいるために燃えずらいのだ。小さい生き物や普通の草木には魔力はない。しかし、一定以上に成長したりすると魔力核を持ったモンスターやこのような木のように魔力をはらむ。その木は魔樹と呼ばれ外部要因による影響を受けづらくる。なのでこれだけ成長しても折れないし雷が落ちても微動だにしないのだ。そのせいで木を削りづらくなっているのだが。
「まあハルとかが帰ってくる前には終わりにしたいな」
「それまでには終わるでしょう。ん?」
幻獣種がふと外に視線を向ける。ここまで来れるものはほとんどいない。ハルですら一回も来たことがなかった。ハルに関しては来れないというより来る理由がなかっただけだが今回のこの気配の主は強い。それを感じ取った幻獣種たちは外に向かった。そこにはどう見ても人族なのだが魔力が人族とはかけ離れていて異様な武器を持っている女性だった。
「ごきげんよう、ハル君はいるかしら」
こうして大森林の最奥に訪れた彼女の名前はアリエス。ハルと同じ神級ハンターであった。




