大森林の道のり
準備を始めて一週間。刀の稽古もしながら進めていた。そして今日出発の日になった。
「それじゃあ行ってきます。工房の完成を楽しみにしています」
「行ってきます。人型になれるものも残していきますので必要であればぜひこき使ってあげてください」
ハルとリルの二人はドーボンやエミー、そして幻獣種たちにそう告げ家を出発した。大森林のモンスターと言っても様々で縄張りに入った時点で襲い掛かるものもいれば強さを見て隠れているものもいる。ハル一人であれば襲ってくるモンスターは多いのだが今回はリルがいる。ドーボンの工房に向かっていた時のように襲ってくるモンスターは少なかった。リルはモンスターの最上位種である神獣種だ。本能に勝てないと刻まれているかのように襲ってこず静かな大森林を進んでいった。しばらく進んでいると大きなモンスターの気配を感じ取った。最近感じたこの気配は王獣種のようだ。しかし、遠くからこちらの様子をうかがっていてなかなかここに姿を現さない。ハルは改めてリルの神獣種としての強さを感じた。ハル一人ならばもう来ていることだろう。ハルはリルと同じくらいの強さがあると思っているがハンターであるが故に気配などを消してしまう。それはモンスターの警戒心すらも騙すほど高度に隠す。元々の目的が狩猟なので間違ていないし、向こうから向かってくるならそれこそハルからすれば儲けものなのだ。しかし今回はそもそもの前提が違う。この大森林を抜けることが目的なのだ。こういう時は今のリルのように気配をまき散らした方が楽だと学んだ。
「少し離れたとこにいるモンスターはどうする?俺が狩ってこようか?」
「そうですね。私でもいいんですがまだ刀の力加減がわかっていないのでよろしくお願いします。一応私の森なので」
そう、白く長い髪を揺らしながら歩くこの少女がこの大森林の主なのだ。力加減を間違えて自身の森を荒らすのは嫌なのだろう。ハルはリルの提案を了承し、自身のメイン武器である狙撃銃を構えた。ここから射線は通らないはずなのだがハルは薬室に二発弾を込めた。そして遠視の魔法陣を展開し狙いをつける。リルは初めてハルのこのスタイルの戦闘を見る。ドキドキしながらこの状況を見ていた。ハルが引き金を一回引いた。それは遠くの木に刺さる。そこに二発目を打ち込む、一発目に撃った弾に当たり跳ね返ってここから見えない大きな気配がある場所に飛んでいった。そして大きなうめき声が聞こえた後気配が消えた。
「これで死んだはずだ。見に行こう」
気配があった場所に向かうとそこには地竜の大獣種が倒れていた。トカゲのような翼がない竜の一種でグランドリザードのようだった。脳天に一発貰っていて受けた時点で致命傷であった。
「すごいですね。何が起きたかわかりませんでした」
「大森林の木は硬いから一発目はなくてもよかったんだが保険のために撃った。それでそこにもう一発当ててそれを跳弾させて本命に当てたって感じだな。普通に見えるとこまで気配を消して行って撃った方が楽だからこれはしなくていい技術だけどな。動けない場合に備えてできるようにしただけだし、今回はこんなこともできると見せたかっただけだ」
ハルは今回リルがすごく目を光らせていたので少し楽しませるつもりでこのようなことをした。普段ならこのような不確定なことはしないのだがリルがグランドリザードの気配が消えたときにうれしそうな顔になったので今回はこれでよかったと思った。
「跳弾?という技術は何回でもできるんですか?何回もできればその場から動かずどこまででも狙えると思うんですけど」
ハルが魔力核を回収しているときにそのような質問をしてきた。ハルは魔力核をしまって答える。
「2回が限界だな。それ以上はモンスターの外殻にもよるが確実に殺せる威力が無くなってしまう。獣種くらいならば4回くらいは行けそうだが中獣種からは体毛、外皮、外殻が育って硬くなるから2回が限界だな」
「なるほど。それでは威力を上げるというのは?」
「そうすると今度は銃自体が耐えられなくなってしまう。この銃にもブラックメタルを使用しているがそれでも最高火力の弾を込めると結構ギリギリなんだ。これ以上の素材になると竜系の王獣種、しかももうすぐ幻獣種になりそうなくらいのモンスターじゃないと無理だな。それと跳弾するための弾がすべて貫いてその場に留まらなくなっちまうしな。だから威力はこれ以上は夢物語だな」
リルはハルの話を聞きながらうなずいていた。銃にも興味が湧いてきているのだが未だハルに刀で勝てておらず、引き分けにすら持っていけていない。神獣種の身体能力をもってしてもだ。ハルはそれほどの技術を持っているのだ。そしてそれはメイン武器ではないという。リルは先ほどのハルのように人族の強さを実感していた。しばらく歩き日も暮れてきた。今まではモンスター除けの魔石を使っていたがリルがいればそれも必要ない。
「ここら辺で野営しようか。リルがいてかなりスムーズに進んでいるから明日には砂海に出られるだろう」
「そうしましょう。ハルの料理楽しみです」
「エミーさんの料理と比べないでくれよ。流石にあんなに美味くはできないぞ」
「ハルの料理好きですよ。こういう機会じゃないと食べられないので特別感もありますし」
このような会話をしながら夕飯を食べた。テントは一つしか持ってきてないので二人で入る。そうして夜が更けていく。
「それじゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
こうして二人とも眠りに落ちた。




