馬車での帰路
組合を出た後にハルは食料を扱っている店に向かった。この街ですることは済んだのでこれから帰路にはいるところなのだが大森林からこの街までの距離は結構遠いので帰りの食料を買っていた。遠いと言ってもこの街近辺のモンスターは大森林に出現した王獣種の煽りを受けていたのでかなり街道に出てくるモンスターが多かった。討伐した今その数は激減し、出現前と同じくらいにまで落ち着いていた。
「行くときはかなりモンスターが出たから現地調達でよかったが今はほとんどいないな。これが普通なんだろうけど最近この街に来るときは毎回異常発生しているときに来るからなぜか新鮮な気持ちになるな」
このようなことを言いながらハルは街道を進んでいく。今回は急ぎで帰る必要はないのでゆっくり相乗り馬車で向かっているがそれでもハルともう一組しか乗っていない。それも駆け出しの見習いハンターのようだった。大森林で師匠でもいるのだろうか。基本的にハンターはこのような移動方法なので見習いハンターは移動は一人で行うようにしている。いつ一人になるかわからないし二級ハンターになれば一人前と言われて同じ階級の者とパーティを組むことになるだろう。そうしてだんだん階級を上げていくのだ。そして最後はそのハンターが教える側に回る。こうしてハンターたちは回っていくのだ。数人の見習いハンターが話しているのが聞こえてくる。
「いつかは王獣種を討伐できるハンターになりたいんだ!今はまだ見習いだけどこれから強いモンスターを倒して階級を上げていくぞ!」
「はっはっは!お前にゃ無理だぜ。俺がその高みに行くんだからな!」
しっかり見習いハンターのようだ。まだモンスターとほぼ対峙したこともなさそうである。二級から一級に行くにも何度かの試験を突破しなければいけない。それも生半可な覚悟では受からないだろう。獣種程度の討伐試験ではあるのだがそれが行われるのは大森林、火山地帯、あとはたまに極寒の山間地帯もある。ほとんどの場合は大森林だ。大森林になった場合が落とし穴で見習いの時からここで訓練や狩りをしているので慣れてきて調子に乗るものが必ず現れる。そうなると中獣種や大獣種が出たときに対応できずそこで死んでしまう可能性が出てくる。一級上位や幻級のハンターも参加してそのようなモンスターが来ないようにはしているがそれも全員ではない。この程度を切り抜けられなければ無理だというものもいるのでそれは試験官しだいだろう。ハルは過去に試験官として呼ばれたことがあるが断っている。その時にちょうど火山地帯で地竜の王獣種討伐があったためだ。こいつは見逃せなかった。親の仇だと思われる個体だったからだ。
「ようやく王獣種が討伐されて大森林での訓練が再開だからな。今から腕がなるぜ!」
見習いハンターたちは王獣種の討伐の情報をいち早く集めて報告者のハルと同じ馬車に乗ったということだ。この情報収集能力はかなり高い。見習いハンターのようだがハンターはやめて国の諜報機関にでも就職したほうが彼のためになるんじゃないかとハルはそう思いながら彼らの話を聞いていた。
「もうすぐ日が暮れるのでこの村で一泊しますね」
御者からそう声を掛けられハルは馬車から降りて宿に向かった。ここからならハルは歩いてもよかったのだが急いでいるわけでもないので楽を優先することにした。
翌日、ハルは朝一で御者に挨拶をし馬車に乗り込んだ。昨日の見習いハンターたちはまだ見えない。少し経ったところで汗を垂らしながら見習いハンターたちが乗り込んできた。もうすぐで出発のタイミングなので時間内なのだが見習いハンターたちは御者に挨拶した後ハルにも挨拶した。
「すみません!少し朝の日課をしていたら時間ギリギリになってました!」
「すんません!」
「ああ、まだ時間はあるし問題ないよ」
ハルは軽く返す。これが時間に遅れていたら少し嫌な気持ちになっていたが遅れているわけでもないのだから問題はない。そうこうしているうちに馬車が走り始めた。
「お兄さんはハンターですか?どうしてこんな方まで?」
「ああ、ハンターだけど実家が大森林の近くの町なんだ。今回はその実家に帰る予定なんだ。こっちに来る便自体が最近なかったからね。家族も心配だったんだ」
ハルは適当な嘘をつきながら見習いハンターたちと話した。
「なるほど!王獣種が討伐されたらしいですよ。一般公開前に御者に報告が言ってそのまま馬車が出たって流れっぽいですね。御者に張り込んでいたのは正解でした」
早く情報を知ったのはそのような経緯らしい。元気いっぱいだがこのような場面で使える頭もあるらしい。彼はかなり伸びそうだと思いながら適当に相槌を打つ。このような話をしていたら目的地が近くなってきた。
「もうすぐ着きますよ」
御者が声をかけた数分後には町に到着した。賃金を払い、見習いハンターと別れドーボンの工房へ向かい始めた。町から少し離れた場所にあるため顔なじみの門番に挨拶をしてそのまま抜けていく。そうして歩いていきドーボンの工房が見えてきた。そして家の前まで着くと、扉を開ける前に開きそこにはリルが立っていた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
ハルを温かく出迎えたリルの様子を仲良くなったドーボン夫妻はほほえましく見守っていた。




