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伝説の狩人  作者: 炭酸ガエル
1章 大森林の主
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あるハンターの決断

 外で話を聞いていた、もしくはハルがここに来ていたのを見ていたのかハルが来ていることをわかっている口調で入ってきた若いハンター。ハルと同じか少し若いかくらいのハンターは息をあげながらも大きな声で入ってきた。


「あんた大森林にきていたよな?!リーダーたちはどうしたんだ!」


 かなり広い森だ。出会ていない可能性のほうが高いのに見たと疑わないでそう問いかけてくる。そしてハルは彼らの末路を知っている。自分で伝える必要がないので組合長に任せていたのだがまさかここに来るとは予想外だった。組合長が若いハンターに声をかける。


「ここは特別な者しか本来入れない場所なんだ。そのような場所に入ってきただけでなく相手の事情も考えずに問いかけるとは何しているんだ」


 組合長からしてもハルは特別なハンターだ。ここの組合支部によく来るためそこまで緊張はしないがそれでも世界で数人しかいない神級ハンターの一人なのである。そんな彼にこのようなことをしている時点でハンター組合からの除名も普段なら考えるところなのだが今回は事情が事情だ。このハンターも仲間が心配なのだろう。


「まあそれはまず置いておくか。彼らのことに関しては私から説明するから彼を放してくれ」


 ハルの肩を掴んでハルに問いかけていたハンターに組合長はそう声をかけた。ハルは振り払うこともなくそのまま口を開く。


「いいよ。俺から説明してやる。まず、あんた以外の人は全員死んだよ。俺がこの目で確認している。それでハンター証も組合長に渡してあるからあとで確認するといい。聞きたいことはこれだけか?」


 淡々と話すハル。先ほどまでは彼らのことを考えて提案などもしていたとは思えないほどの口調だ。ハルの言葉を聞きハルの肩を掴んでいた手の力が抜けるのを感じた。そのまま膝から崩れ落ちた。


「う、うそだ。なんで…」


 ハルはマジックリュックからあるものを取り出しこのハンターに渡す。


「これはあんたらが負けたモンスターの魔力核だ。大獣種から王獣種に進化していた。十中八九君らが魔法攻撃を仕掛けたことが原因だ。それでも俺はやつを討伐した。もう仇はいない。この戦いで心が折れてもう無理ならハンターはやめろ。無理して続けても死ぬだけだ。それともこの魔力核を使っていい武器でも作れ。彼らの戦った証だ。これはやるからそこからはお前が考えろ」


 そして膝をついているハンターの横を通り部屋から出ていった。ハルはこのままドーボンの家に向かう。いつから大森林で生活するのかを話し合わなければいけないし、ドーボンとエミーが今まで通り家で暮らすのか大森林に引っ越すのかも相談しなければいけない。彼らには外的変化がないためそのままでも問題ないのだがこれは彼らの考えを尊重しなければいけない。自分の意見を通してもらったのでそこは言いたいことを言ってほしいと思っている。




 ハルが去った後の応接室に残された組合長を貴族専属の若いハンター。若いハンターの前に置かれた服属性の魔力核をただ茫然と眺める。組合長がその沈黙を最初に破った。


「彼が言ったことは本当だ。君以外のハンターは全員が亡くなった。これがハンター証だ。全員分あるかはわからない。王獣種にハンター証ごと食われていたら無くなってしまっていても仕方ないからだ。確認してくれるか」


 若いハンターは動かない。現実が見れていないと言った方が正しいか。もう一度組合長が声をかける。


「この作業は残されたものの使命だ。君もハンターであろう。顔をあげろ」


 この状況ではなかなか酷なことだとは組合長も思っている。しかし組合長も含め上位にいるハンターたちはこのようなことを多かれ少なかれ誰しもが経験しているのだ、これもハンターの宿命であり慣れなくともやらなければならない。若いハンターもそれはわかっているのだ。彼女とてもうすぐ幻級に行きそうかと言われていたパーティの一員だ。それでも気持ちは晴れない。やつがまだ生きていたならばやつを討伐するという目標にがむしゃらになれただろう。しかし先ほどのフードをかぶったハンターはやつを討伐したと言っていた、それがこの魔力核とも。これは紛れもなくやつのものだ。彼女はそれが本能的に理解できた。彼女は魔法師で魔力にかなり敏感である。自身の魔力探知がやつのものだと結論を考える前に出してしまっていた。彼女は魔力核を掴み顔を上げた。


「先ほどのハンターの方はこれほどのモンスターを一人で討伐するほどの人物ですか。彼はいったい何者なんですか…」


 ハルが神級ハンターというのは言えない。それが組合のルールである。しかし幻級ということもできない、幻級は名前が公開されているのだ。その中にハルはいない。そもそも幻級の時ですらハルは名前が載らなかった。これは彼がソロであるためだ。神級は全員がソロであるのだが幻級はパーティ単位だ。幻級で有名になるとパーティメンバーの一人が神級になる場合は引退、もしくは神級ハンターになった本人が公言する二択がある。しかしこの制度ほとんど機能していない。なぜならば神級になったものは全員が特殊な事例なのだ。神級に一番近かった幻級ハンターたちはここ一番の討伐依頼で命を落とすものが出て引退した。常人には幻級が限界とされている。その中でハルの個人情報を公開することはできない。組合長は考える。どのように話すのが正解なのか。しばし考え組合長は口を開いた。


「彼はハンター組合本部の専属ハンターだよ。普段は会長の護衛などもこなす特別なハンターだ。今回大森林に王獣種が出現したと報告が入ったときにすぐに動けるのが彼しかいなかったので彼に依頼したのだ。会長の護衛なので階級は存在しないが強いのは確実だ。私もそれくらいしかしらない」


「そう…ですか。彼に繋げていただくことは難しそうですね。自分の弱さを今回もう一度認識することができました。戦闘面だけでなく精神面でも弱かったみたいです。彼に鍛えてもらおうと思ったのですが無理そうですね。私は今の専属という立場から退きもう一度修行からやり直したいと思います」


 魔力核を力強く握りしめ、そう宣言した。まあここで言っても意味はあまりないのだがその目に曇りはなさそうである。今回わがままを通してきた貴族は金だけはある。すぐに違うハンターを雇うだろう。


「それなら私からも口添えをしておこう。彼にまた話す機会があればその時にこのようなことがあったと報告しておこう。それでは退室してかまわんぞ」


「はい、お騒がせして申し訳ありませんでした。失礼します」


 若いハンターは退室し、組合長はようやく一息つくことができた。そして貴族へ送る書類の作成を始めたのであった。

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