眷属の力
二人はハルのように眠ることなく眷属へなった。これはハルが元々人族であり二人が古代人種だからこその違いである。古代人種に対して開発された魔法なので身体への負担がほぼなく二人はあまり実感が湧いていなかった。しかし自身の魔力に集中してみると違いが出始めていた。
「今は眷属になったばかりです。あまり実感が湧かないとは思いますが…あら、もう気付き始めているようですね。そう、魔力が変わっていると思います。今までとは魔力使用の強さが変わっているので慣れるまでは大変かと思いますが慣れてくれば以前よりも魔力の使い方が上手くなってくると思いますよ」
はじめは前の感覚が体に染みついているため魔法の調整が難しい。そして二人はもう二百年ほど生きているためこの染みつき具合が人族の比ではない。それでも古代人種を眷属にするために作られているのがこの眷属魔法なのだ。二人に馴染んでくれば今まで以上の魔法、魔力操作が手に入れることができるだろう。ドーボンは元々魔力操作を苦手としているがそれも身体が馴染んでくれば解決できる。まあ一人で工房をやっていた場合は既にマスターしていた可能性が高いのだが。自分よりも魔力操作が上手く、付与も得意としていたエミーがいたのでそちらの分野に手を出していなかったのだ。今までの付与程度ならばこれからドーボン一人でできるようになるだろう。しかし、元々持っている感性の壁は覆すことはできない。ドーボンは付与という魔法の分野に関してはエミーに並ぶことはない。これは努力でどうにかなるものではないからだ。そしてその魔法が付与された武器を使用できるものも限られてくる。ハルならばできるだろう、しかし、他の幻級ハンターは多分扱いきれない。付与でさらに高度な魔法陣を組めるようになったのでそれを扱うにもある程度のレベルが必要であり、その条件に当てはまる人物は今のところハル一人である。神級ハンターならばできそうなものだがハル以外の神級ハンターは辺境の地で組合に顔も見せずに暮らしていることが多い。いい意味でも悪い意味でも変人が多いのだ。ハルに反射のことについて言及していたやつも神級ハンターなのだが彼女は今どこにいるかもわからない。唯一神級ハンターが集まるときがあるのだがそれは新たに神級ハンターになったものが出たときだけである。神級ハンターの中でハルだけが組合にそこそこの頻度で行っているがそれでも普通のハンターに比べれば少ない。ハルは常識人だと自分で思っているがハルも十分変人の類である。
「じゃあ二人は魔力の感覚を掴んでいてくれ。俺は依頼完了を伝えに組合に行ってくる。リルはここの残すつもりだから二人とも頼んだ」
ハルはこれから組合に向かい今回の依頼で倒した王獣種の魔力核を提出し成功報酬を受け取ってこの依頼は終わりである。そして途中で亡くなったハンターたちの話もしなければならない。彼らの証明証は持ってきた。これで依頼主や家族にも報告が行くことだろう。貴族専属とのことだったのでどう出るかはわからないがこの時期に娘の大事だからと言って送り出した方が悪いのである。ここは非情にならなければいけない。そうしなければハンターの地位は向上していかない。モンスターへの恐怖を知っているのは辺境に住んでいるものかその道をつなぐ街道を通るものくらいであろう。昔はもっと町が小さかったりモンスター除けの魔石がなかったりしたので村や街にモンスターが襲いに来るなんてこともあったのだが今はもうそのようなことはほぼない。その弊害でモンスターの脅威を知らないものが多いのだ。しかも人里離れた奥地に行かなければ大獣種には絶対に会わない。獣種はたまにいるがこれらはハンターではなくてもなんとか倒せるレベルである。このレベルのモンスターしか見たことないものが依頼を出すのを組合がしっかり確認して精査していかなければこのようなことが増えてしまうのでここは組合長に抗議すると決めていた。
「あ、少し待ってくれ。その武器相当限界が来てるぞ。お前が帰ってくる前に直しとくからこれ持ってけ」
ドーボンはそういうと切絶に似た刀を渡してくる。鞘から抜き刀身を見てみる。かなりの業物であるが魔法付与はされていない。
「これは?」
「それは黒刀の代わりだ。討伐依頼に行くわけじゃねーからな。そのくらいの刀で十分だろう」
確かにかなりの業物なので代わりにはなるだろう。しかし、ドーボンは忘れているのだろうか。ハルは元々遠距離で戦うスタイルのハンターということを。
「狙撃銃は?みたいな顔してるな。あれは俺とエミーでかなり改修を加えてる。かなりの自信作だから楽しみに待っとけ」
「そういうことか。それならば待っておくことにしとく。じゃあ行ってくる」
「いってらっしゃい、ハル」
「おう、行ってこい」
「いってらっしゃいね」
ハルはハンター組合に向けて出発した。




