神獣種リル
ハルは倒した王獣種の魔力核、角、爪の採取を行なった。そして残りの素材を吟味していると近づいてくる大きな気配を察知した。
「なんだ、この気配。王獣種と連戦したのにまたか?」
気配の先から現れたのは獣種ほどの大きさの狼系モンスターだった。しかし、身体から漂わせる魔力の濃度が先ほど戦った王獣種よりも濃密である。そのモンスターへ意識を集中する。勝てない相手ではない、そうは思うが簡単な戦いにはならないだろうとハルは覚悟したがそのモンスターからは殺気や戦意を感じない。これはハルにして初めての感覚であった。
『私はただの使者だ、戦う意思はない。主の命によりあなたにはご同行願いたい。もちろん、そこでも攻撃しないと誓おう』
なんと狼系モンスターが言葉を発したのだ。音では言葉に聞こえない、でも意味は分かるのだ。確かに言っている通り戦意は感じないし嘘をついているとも思えない。ハルはここで敵対するのは得策ではないと考えその言葉を信じ、モンスターの言うことに従うことにした。
「わかった。ついていこう」
『助かる。あなたと戦っても私は勝てないだろう。聞き入れてくれて感謝する』
モンスターに続いて歩いていく。しばらく歩くとそこには根っこ部分に扉がある大きな木があった。モンスターはその扉の前に着くとその扉のわきに移動し座った。
『この中に我が主がいる。そこで詳しい話を聞いてほしい。私はここに連れてくることしか言いつけられておらず、その目的もよくわかっていないのだ』
どうやらこのモンスターも詳しいことをわかっていないらしい。ここでこのモンスターに問い詰めても意味がないと判断しその扉の奥へ進むことにした。扉を開けるとそこには上へ続く階段があった。そこを上がっていく。しばらく上っていくとそこのまた扉がある。
「やけに長い階段だったな。そしてまた扉か」
ハルはノックする。奥から幼い少女の声でどうぞと聞こえてきた。そしてハルは扉を開けて中に入った。そこには声に違わぬ少女が椅子に座ってこちらに微笑んでいた。
「ようこそ、この大森林の主と言われているリルよ。人族の言い方で言うと神獣種というのだったかしらね。人族と最後に話したのはすごく昔のことだからあまり覚えていないのだけれど」
(神獣種?この少女が?伝記くらいでしか俺ですら見たことないぞ。しかも耳とか腰のあたりから生えてる尻尾を見る限り狼っぽいな。だから主なのか)
「俺はハル。ハンター組合でハンターをしているものだ。それで?それに用があるとのことだったが何の用だ?」
ハルは神獣種相手でもさっぱりとした対応をしてみせた。この少女から溢れ出る魔力は膨大であり、今まで見てきたモンスターの全てを上回る。しかもこれで抑えているように見えるので抑えなかったらどれほど濃密になるのか気になるくらいだ。
「私の用事はあなたが欲しいの。私の眷属になってくれない?」
(眷属…か。これはまた意味の分からないことを言い始めたな。そんな適当に決めていいことなのか?)
ハルは考えを巡らせる。なぜ自分なのか。そしてなぜ今このタイミングなのか。今までもこの森で王獣種を討伐した者はいる。そして俺はこの森で王獣種は倒していないが何回もこの森を訪れている。理由がよくわからないしメリットも何もわからない。
「眷属というものが何かはわからないが俺以外にもこの森には強者が入ってきていたはずだ。それなのに今このタイミングでなぜ俺なんだ?」
「この森で王獣種になったモンスターを私はすべて把握しているわ。そしてそれを倒したハンターたちも見てきているわ。それでもあなた以上に強い人族を見たことがないの。だからよ?」
「簡潔すぎてわからんな。もっと詳しく教えてくれ。話はそれからだ」
ハルは未だにこのリルという神獣種の少女をわかりかねている。ただ純粋に俺を欲している。それには理由があってしかるべきだがその肝心の理由が掴めない。
「私は王獣種になった狼系モンスター限定で試験を個人的にしているの。それは強者に勝つこと。相手はハンターでもモンスターでもいいの。自分と同等以上の相手に勝ってこそ私の眷属になる資格を得る。先ほど案内した狼も私の眷属であり強者に過去勝ったものよ。流石にあなたには勝てないでしょうけどね。そして今回、その試験の相手があなただったのよ。そこで私はあなたと王獣種の戦いを見ていた」
(王獣種の試験に俺は使われたのか。まあそれはたまたま目的と手段が一致しただけに過ぎないから構わないがそれでなぜ俺を眷属に?)
「戦いを見ていて思ったのよ。王獣種も最近は各モンスターごとに縄張りが決まってしまっていてそもそも生まれずらい。その中で生まれた王獣種は縄張りを持たず各モンスターと戦い続けたということ。だからこそ普通に私の眷属になると思っていたの。そこであなたが現れた。そしてその強さは折り紙付きよ。神獣種はこの世界で数体しかしないのだけれどもうすぐ100年に一度の神獣会議があるのよね。そこの護衛を任せられる眷属がいなかったのだけどそこであなたよ。あなたを眷属にして私の護衛を頼みたいの」
ハルは驚愕していた。前に戦った王獣種より強いと思っていたがそのような状況になっていたのか。俺からしたらうれしい状況ではあるのだが、たまに現れる王獣種がこれまでより強いと来たか。あの王獣種は幻級でも多分無理だろう。ハルが直接戦った所感だがあれには俺と同じ神級を派遣しなければならないと思った。そこで俺はある提案をした。
「俺が眷属になったらこの森に発生した王獣種をすべてを狩ってもいいのか?俺より弱い奴らにあれは倒せん。あと、眷属になったとしたら俺はどうなる?まさか狼にはならないよな?」
ハルの疑問に対してリルは微笑みその質問への回答を始めた。




