大獣種の進化
ハルが異様な気配を感じて向かった先にはキングルフがいた。このキングルフは自分の周りに土魔法を使用し壁を作っている。
「何をしているんだ。これじゃあ自分から逃げ道をなくしてるじゃねーか」
その土壁からは低いうめき声のような音が響いている。そしてそれは唐突に訪れた。ゴゴゴッっと大きな音を立てながら土の壁が崩れ落ちていったのだ。そこから溶岩のようなものが流れ出てくる。そしてキングルフが現れた。口の端から呼吸のたびに火を噴きだし睨むようにハルを見た。ハルはその様子を見て少しの焦りを感じた。
「ははっ、こりゃキングルフじゃなく王獣種だな。なんで俺がここに来たタイミングで王獣種に進化するんだよ。進化なんて俺ですら初めて見たぞ」
そう、このキングルフだったものは王獣種に進化していた。進化の間、他のモンスターに襲われないようにするために土の壁を築いていたのだった。溶岩が流れ出していることからわかるようにこいつの魔法特性は土と火だ。この森においてこの属性は珍しい。土や水の魔法特性がほとんどなのだ。今回はなかなか珍しい魔法特性のモンスターに会うものだとハルは思った。
「これも先に現れた王獣種の影響なのかな、こんなにポンポン出てくるなら武器を整備のためとはいえ預けてくるべきじゃなかったな」
ハルは基本的に狙撃銃を使うハンターだ。近接の腕も今までの戦闘を見ればわかるように一流ではあるのだが本職ではない。理由は単純でそっちの方が危険が少ないからだ。遠くから気づかれないでそのまま狩猟できるため狙撃銃は重宝している。この銃はコスパがすこぶる悪いためハンターには好まれていないが真の理由は魔力操作が長けているものでないと銃を撃つときにモンスターにバレて避けられてしまうからである。魔力を圧縮してその魔力が弾ける勢いを利用しているためこの弾ける瞬間に発生する魔力反応でバレるのだ。それを魔力操作で音を極限まで小さくし魔力反応を消すことでモンスターにバレることなく狩猟することができるのだ。これは誰もが訓練を積めばできる技能ではあるものの誰もそれをしようとしない。なぜならその技能を習得するまでの時間はほとんど金を稼ぐことができないためだ。金を稼げないのに費用は嵩む。そのような武器を使うならば多少危険でも近接武器や攻撃魔法で狩猟したほうが時間がかからず金も稼げる。そして狙撃銃もリスクはある。それはバレてしまった場合に近づくモンスターへの対抗手段がほぼなくなることだ。近接戦闘もできればハルのように一方的に安全という結論になるのだがそもそもハルの年齢でこの2つを両立しているほうが異質であり、1つの武器を極めて等級を上げる方が普通なのだ。
事前情報があった王獣種の大きさならば銃弾が上手く通らない可能性があったため切絶を選択したのだが今目の前にいる王獣種くらいの大きさならば普通に銃弾が通るので遠くから撃って終わっていただろう。不測の事態なので仕方ないがこいつを討伐するために行動を開始する。足元が高温になっていて地面が溶解されて溶岩の沼ができている。先ほど自分がしたことが何の因果か目の前でモンスターがしている。自分ですることなので対策自体は簡単なのだがこいつはまだ王獣種に成りたてのために魔力操作が上手くいっていない。慣れないうちに倒すべきだと思われがちだが戦闘中に魔力の暴走でここら一体が更地になる可能性があるのだ。一撃で仕留めれば問題ないが仕留め損ねればそうなる可能性が高いのだ。しかし長時間放置もできない。この魔力につられて本来の討伐対象である王獣種が来る可能性があるのだ。王獣種は縄張り意識が高いので潰し合いが始まり、この森の環境が一気に変わってしまうことがほぼ決まっている。これだけは回避しなければいけない。なので討伐するために王獣種を観察する。少しでも一撃で仕留めれる可能性を上げるためだ。そうして観察していると少し気になることがあった。どう見ても刃物で切り付けられた痕があるのだ。つまり、こいつは人と戦闘したことがあるということだ。しかもモンスターの回復力は凄まじく1週間もすれば傷はなくなるはずだ。それがなくなってないということはここ数日の間に戦闘したことになる。森に入る前に考えていたことが現実になったのだと悟った。
「あいつら、こいつに魔法攻撃した挙句討伐しなかったな。俺が関与していない面倒ごとに巻き込みやがって。こうなるからあいつらが森に入るのが嫌だったんだ」
今更文句を言っても仕方ないがハルも人の子だ。このくらいは出てしまうだろう。そして敵意むき出しの王獣種との戦闘に移っていった。




