元パーティ
ドーボンの家に連れてこられたアリアとミゲル。テーブルにつき、話を始めた。
「もう一度、ハルをありがとう。さっきは世話してないと言っていたが助けてもらってると思う。眷属になったと聞いた。それはハルのためだろう?」
「そりゃハルに頼まれたけどよ。ハルのわがままなんてこれくらいしかなかったんだ。だからこれくらいならいいと思った。それに俺はハンターもしていたが本職は鍛冶師だ。俺の武器しか使いたくないとまで言われると悪い気分はしないからな」
ドーボンはあくまで鍛冶師であり、鍛冶の仕事にも矜持を持っている。なのでそれをずっと使い続けていてハンターの実力トップのハルに言われたのだ。そのように思っても仕方なかった。
「エミーはどうだったの?眷属ってほぼ寿命が無くなると聞いたんだけどそれでよかったの?」
「そうねぇ、元々エルフで長命だからあまりこだわりがなかったのよ。でも旦那がこれだけの覚悟を見せたんだから私も見せないとと思ったわね。まあおだてられたと言えばそれまでだけどね」
エミーは最後茶化すように言ったがそれまでの言葉はしっかり本心だろう。
「それにね、私は魔法師だけど専攻しているのは付与だからハル君の武器に対する付与はかなり勉強になっているのよ。眷属になって家がかなり近くなったから付与の使い心地も聞きやすいし今は満足してるわ」
そう言ったところでドーボンが話を戻す。
「そんなことよりよ、二人とも。どうして戻らなかった?ハルから義手の件は聞いてるし、すぐに動ける状態じゃないっていうことはわかってはいるが二人が何も言わずに居なくなるのは珍しいと思ってな。何かしら連絡方法はあったんじゃねぇのか?」
「連絡方法はあったんだが外に出る自信がなかったんだ。俺の腕は聞いての通り義手になった。魔力操作を少しこの腕に取られるから今まで通り戦える自信がなかった」
ミゲルはそういうがアリアがそれを否定する。
「そもそもあなた、数年目を覚まさなかったじゃない。今ここで自分を悪く言うもんじゃないわよ。それを言うなら私一人で連絡手段を確保して話に行けばよかったのよ」
ミゲルは腕が無くなる大けがから数年目を覚まさなかった。そして起きてからも幻想郷にいる医者に診てもらいながら魔法技術者に義手を作製してもらい、それに慣れる練習に費やしていた。無駄にした時間などなかったのだ。そこにたまたまハルが来ただけなのだ。
「まあまあ二人とも、そういう理由があるなら最初からそう言えばいいのよ。誰も責める人はいないわ。私たちはもちろん、ハル君もきっとそうよ」
「そりゃそうだぜ。俺は何か理由があったのかと聞いただけだ。そこまで深刻になるな。ハルは本当に手がかからなかったんだ。だから俺は精々武器を作っただけだ。俺の研究している武器の協力もしてくれているから俺の方がありがたいくらいだ」
「二人とも、ありがとう」
「ありがとう」
ミゲルとアリアは改めてお礼を言う。それをドーボンとエミーは笑顔で受け入れる。
「もういい。何回繰り返しても仕方ないだろ。それよりもここからは仕事の話をしようや。その義手、メンテナンスはどうするんだ?」
ドーボンはミゲルが使っている義手について質問する。基本的にどんな道具でもメンテナンスは必要である。簡易的なメンテナンスを定期的にすれば平気なのか。それとも一回ばらして中を隅々までメンテナンスしなければいけないものなのか聞く。これはドーボンが鍛冶師であり、物作りに精通しているので気になっただけなのだが回答によっては知識を付ける必要がある。
「メンテナンスは必要だがそれほど大変なものは必要ない。ドーボンにこれを渡そうと思っていたんだ」
ミゲルはリュックから何か本のようにまとめられている紙の束を手渡す。
「これはこの義手の機構が書いてある。この義手を作ってくれた技術者が俺たちが来たこの森にこれを理解できそうなものはいるかと聞いてきてな。ドーボンがすぐに思いついて、いると答えた。そしたらこれを渡せと言ってな。これを見せればわかると言われた」
ドーボンはミゲルから渡された本を読む。これは義手の説明書、それと作られた経緯が書かれている。どのようにメンテナンスをしたらいいか、それどころか作り方まで書いてあった。
「こりゃ……すげぇな。本当に俺が持ってていいのか。これは義手の全てと言ってもいいものだ。確かにこれがあればメンテナンスはできるだろう。魔力操作も眷属になってからだいぶできるようになったしな。これを渡すのは研究をそのまま手放すのと変わらないぞ。これを書いた人と話したいくらいだ。かなり書き込まれてる」
ドーボンはそう話しながらも本から目を離さなかった。それだけ集中しているのだろう。ドーボン以外のここにいる全員がまた始まったと思い、互いに笑いあった。
「最近は少なくなってきてたんだけどね。新しい技術を見るとすぐにこれだから」
「まあドーボンらしいじゃない」
エミーとアリアはそういって笑っていた。ドーボンは鍛冶師だ。知らない技術は貪欲に学ぶ。知識は武器だと語っている。知識がなければアイデアも出てこない。視野を広げるという意味でドーボンはさまざまな知識を取り入れている。魔力操作が苦手なため、魔法の知識はエミーに任せていたのだが今はドーボンも少しずつ学んでいる。知らないことを知るのは面白いとドーボンは言った。
「これだけ詳しく書いてあると俺でも作れそうだな。魔法付与はエミーに任せることになるとは思うが」
「いいわね、作りましょう!」
二人が慌ただしく準備を始めた。急に始まったのでミゲルとアリアは呆気にとられたがすぐにエミーから声がかかった。
「少し工房に行くからここでくつろいでおいて!まだあなたたちの家ができてないからしばらくここに住んでもらうと思うから」
エミーはそう言い残し、リビングを出ていった。そして残されたミゲルとアリアは二人で向き合い、苦笑いをしながら楽しそうな二人を見送った。
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