ハルの迎え
アランが大森林を去り、数日が経った。アランが残した使い魔はハルの両親がどこの国にいるかを逐一報告してくれている。そしてついに大森林に面しているダリノクスに入ったと報告があった。
「親がダリノクスに入った。一応街に迎えに行こうと思うけど近くまで一緒に来るか?」
ハルはリルに聞いた。リルはハルの主であり、人の言い方をすると婚約者でもある。そして面識もあるので聞くことにしたのだ。
「いえ、私は大森林に残ります。ここの主でもありますから全然いないのはモンスターのことも考えると好ましくないので。ハルが戻ってくると確約されているのであれば待ちますよ」
リルがそういうのでハルは単身でダリノクスを目指す。その準備は前々からしていたのですぐに家を出た。リルとこの森で出会ったときとは比べられないほどの速度で大森林を抜けていく。元々このくらいの速さで抜けることはできたのだがそれを最初しなかったのは外縁部に多くのモンスターが来ていたからだ。今は王獣種がいないので環境が元に戻っているのでそこまでゆっくりモンスターを狩りながら進む必要がない。それでもハルが住む大森林の最奥のモンスターは大獣種が大体を占めているので普通のハンターには荷が重いのも確かだがハルには中獣種、獣種程度の感覚だ。
「このペースならすぐに着きそうだな」
大森林と面していて大森林を目指していると言ってもダリノクスのハンター組合支部がある街から大森林まではそこそこ距離があるのでちょうど中間でかち合うとハルは予想している。二人がかなりのスピードで進まない前提の話になってくるのだがそれは神のみぞ知るだろう。
そのころハルの両親であるアリアとミゲルは既に組合のある街から出ていた。幻想郷から出たときに寄ったマグノリアでは身元証明することにだいぶ時間がかかってしまったがその後はかなりスムーズであった。
「ここ数年でかなり情報伝達のスピードが上がったね。街に入るたびにあれくらい待たされると思っていたんだけど」
「そうね。まあいいじゃない。大きな問題もなく進めているんだし。もうすぐハルに会えると考えればいいことよ」
「そうだね」
二人は大森林の近くまで行ける乗合馬車に乗って進んでいた。そこにはハンターが数パーティ乗っていて気さくに話しかけてくる。二人は彼らに返事をしながら談笑していた。その時に馬を操っている御者が慌てて二人を含めた全員に声をかけた。
「前からありえない速度で走ってくる人がいます!速さ的にはモンスターの可能性もあるので戦闘可能な人はお願いします!護衛だけでは無理かもしれません!金は払います!」
かなり慌てているようで声を荒げている。この世界には盗賊ももちろんいる。でもこのようなハンターが向かう場所が終着点のっ馬車が襲われるのは珍しい。それに盗賊にしては少なく、一人しか見えない。高位のハンターならば街の間を歩くハンターもいるので一概には言えないというのもある。そしてアリアとミゲルはこの魔力に覚えがあった。
「私たちに任せてくれませんか?」
アリアが他のハンターたちに聞く。ハンターたちは目的地に着いてからが本番なので無駄に力を使うのを渋る傾向があるので乗っているハンターたちはそれを了承した。御者が落ち着かないように二人を見ている。二人が馬車を降り、馬車の前に立つ。二人の前に人とは思えない速度ではしてきた者が止まる。そしてアリアが声をかけた。
「……ハル?」
「迎えに来たよ」
「やっぱりハルだったわね!」
アリアはハルとわかるなり飛びつく。その後ろのミゲルはやれやれと困り顔をしながら御者に声をかける。
「すみません。私たち二人はここまででいいです。迎えの者だったようです」
「わ、わかりました」
ミゲルは二人分支払い、乗合馬車を見送った。元気に話している二人の方に近づきミゲルはため息交じりで言う。
「ハル、迎えか?」
「そうだよ」
「迎えはありがたいんだがな。もう少し周りのことも考えて来てくれ。御者の人、かなり怖がってたぞ」
人とは思えない速さで走ってきたのだ。それはビビるだろう。幻級ハンターレベルの盗賊もいるのだ。一般のハンターでは太刀打ちできない場合もある。
「それは考えていなかったな。ごめん。大森林の最奥としか言ってなかったから迎えに来た方がいいと思ったんだ」
「ありがとね!」
アリアはミゲルがハルに注意したことなどあまり気にしていないようだった。
「それに関してはありがとう。大森林は広大な森だ。流石に最奥だけだとわからないし、今の実力で突破できるかも怪しかったからな」
二人は幻級ハンターであるが怪我のこともありかなりブランクがある。なのでいきなり大森林の強大なモンスターは荷が重いと思っていたのでハルが迎えに来たことは純粋に助かっていた。
「それにしても気になってたんだけど急に街に入るのが楽になったのよね。どうしてか知ってる?」
アリアはハルに問いかける。情報伝達がかなり早くなったのは感じていたらしい。そしてハルはハンターの中でも最上位の神級ハンターだ。知っていると踏んだのだろう。
「ああ。アランの魔法だよ。魔力体の使い魔を各街に置いて回ってるんだってさ。今はその使い魔からアランにしか通じないけどこの魔法を付与できる魔石や鉱石が見つかればみんなが使えるようになるかもって話してたよ。それでちょうど俺とリルが幻想郷に入った後にマグノリアにきたらしい。アランから二人が生きていたのかとつい先日聞かれたよ」
「そうだったのね。じゃあ今のところ会長の魔法だよりなのね」
「まあ今はそうかな。大森林に神級ハンターがもう一人いるんだけどそいつはもうその魔法を見て使えるようになってたな。リルも使えるようだしこれから改良でもするんじゃない?」
ハルはさらっとそう言った。しかしアリアとミゲルはかなり驚いた顔になっている。新しい魔法を開発するというのは言わずもがな大変なことだ。それを書物に残したり開発者が直接教えることで広まるものなのだが大森林にいる神級ハンターは見ただけでその魔法を使えるようになってしまったのだ。慰安のハンターのレベルがかなり上がっているのだなと二人は思った。
「今のハンターはかなりレベルがた、高いのね……」
そのつぶやきにハルは少し考えて否定した。
「違うよ。確かに俺の周りのハンターは神級だから高いけど一般的なハンターのレベルは変わってないよ。だから神級ハンターは全然増えてないし」
実はレベル自体は上がっているのだがハルの基準であるということとハルが昔の話を聞く相手が神級のメンバーや幻級のドーボン夫妻なのでかなり偏った意見しか聞いていない。なのでハルに気付くことはできなかったのだ。
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