幻想郷の今後
リルは幻想郷のことをアランに話し始めた。種を存続するために幻想郷という隔離空間に生きているということ。大半がリルの眷属として長命種以上の寿命を有していること。そして、その幻想郷を守るためにリルが結界を張り直していること。そのことを知ったアランは考えるように黙り込んだ。
「――それが今を生きている亜人種たちよ」
リルはそう締めくくった。そしてアランはリルとハル、二人の方を見て問う。
「亜人種のことはわかりました。今後は火山地帯のそちらをハンターが調査するという名目で封鎖しましょう。その調査もハル君を始め、神狼さまが認めたハンターのみの調査隊を編成します」
アランは全面的に幻想郷の保護を約束した。そもそもそちらは未開地域としてハンターもあまり立ち入らなかった場所だ。いまさらではあるが念には念をということでアランがの意見が採用された。
「すみません、それでハル君の両親については亜人種と関係が?」
アランの疑問はその通りだ。亜人種の話を始めたはいいがハルの親の話が一向に始まらない。ハルはリルの方を見て許可を求め、リルは頷くことでそれを認めた。
「その幻想郷にな、いたんだ。父さんと母さんが。二人が行方知らずになった時、火山地帯で王獣種の討伐依頼を受けていたらしい。そこで対面した王獣種を倒したはいいがもう一体王獣種がいたらしい。魔力ももう碌に使えない状態だったんだと。そしてそこで倒れてしまった。そこで二人を助けたのがガリウスという亜人種の人だ。その後は療養のために幻想郷で生活していたらしい」
ハルは幻想郷で出会った両親から聞いた話をアランに話した。アランはその話を聞いてまた深く考え込む。
「……さっきの話だと亜人種の方々は外には出ないということでしたがその方は出ていたんですね?」
「そうね。いくら自然環境が整っている幻想郷といえども食糧問題はある。彼ら彼女らはモンスターの血を濃く受け継いでいるから食性もベースのモンスターに近いのよ。肉食性のモンスターの血を受け継いでいる亜人種は肉を、草食性のモンスターの血を受け継いでいる亜人種は野菜などを。野菜は栽培が可能よ。でも肉はそうはいかない。だから定期的に外に出ても問題なく戦える者たちが出て食料を調達してくるのよ」
人族はなんでも食べ、栄養に変えることができる。それは古代人種だとしても一緒だ。その中で魔力吸収の効率がいいのはモンスターの肉だ。人族と古代人種でもそうなのだ。肉食性の血が多く含まれている亜人種は肉が死活問題に発展する。
「なるほど。そういうことですか。それならば逆に国として認めさせる方が今後急に出会ってしまった場合の処置が簡単そうですが」
リルはアランのその言葉に対して首を横に振った。
「確かにハンターを生業としている人、それも神級や幻級くらいならば問題ないと思うわ。でもそれより下の階級、ましてはハンターでもない人たちが彼ら彼女らの体を見たらどう思うかしら。過去の獣人族が人、エルフ、ドワーフ族に変わるだけよ。それに人族の王族は狡猾よ。どのような扱いを受けるかわからない」
今はアランがモンスターが現れる分布を大方まとめ、それを人族の国に情報として流している。貴族や王族は自分の地位を守るということを大事にしている節がある。そしてよくない趣味もあると聞く。リルやハルは噂程度だがアランはそれを理解している。彼もエルフの国の王族なのだから。
「だからあまりしたくないわね。もちろん、それができるのが一番いいとも思うわ。だからこそ今は慎重にしていきたいの」
「わかりました。今後様子を見ながら行なっていこうと思います」
人族の国は権力が王侯貴族に集中しているので下手に動くと目を付けられかねない。これから炎神龍が攻めてくるかもしれないというタイミングだ。内部でごたつくわけにはいかないのだ。
「政治的なことは私やハルはわからないからアラン、あなたが上手くしなさい。一応王族なのでしょう?」
「ははっ。先ほど指摘をいただいた身ですが頑張りたいと思います」
少し圧をかけるようにリルはアランに言った。表面上は笑ったアランだったが内心は冷や汗が止まらない。今目の前にいるのは人族の国が束になっても、勝てない神獣種であり、その中でも実力が抜きんでている神狼だ。
「それじゃあこの話はこんなもんでいいかしらね。アラン、あなたの使い魔をここに一体置いていっていいわ。その使い魔経由でハルの両親が今どこまで来ているかを連絡して頂戴」
「わかりました。今後連絡は使い魔で行うことにします」
アランは小さいうさぎのようなモンスターを呼び出す。ホーンビット。それがアランが今目の前に出したモンスターの名前だ。使い魔は隷属魔法によって契約したモンスターだ。アランは召喚魔法をして呼び出したが隷属魔法にはそのような効果はない。つまり、新たな魔法を生み出したということだ。
「その魔法は?初めて見る」
ハルが気になりアランに聞いた。アランは隠すこともなく話した。
「これは召喚魔法と呼んでいるけど実際のモンスターを呼んでいるわけじゃないんだ。簡単に言うとモンスターの形をした魔法だよ。これで意思疎通ができる。ある程度魔力があれば誰でもできると思う。それにこれは攻撃とかもできないからハンターたちはこの魔法に適合する魔石や鉱石が見つかればそれにこの魔法を付与すれば手軽に遠距離から伝える魔法を使えると思う。まあ今のところ合う魔石と鉱石を見つけられていないからこういう方法を使ってるんだ」
魔法の使い方は無限大だ。そしてアランは今まで各支部を回ったり送られてくる書類で状況を判断していた。それを短くするために作り上げた魔法だった。できたのはつい最近であり、ハルがマグノリア、もっと言えば幻想郷にいたときにちょうどマグノリア支部にこの使い魔を置いてきたのだった。リルはアランが使った魔法をマグノリアの街の外から感じ、今回提案したらしい。
「全く。リルも抜け目がないな。流石だ」
リルはハルの言葉に対してにこやかに返事しているが魔力を探られていたとわからなかったアランは先ほどとは比にならない冷や汗をかいていた。
気が付いたら100話を超えていました。これまで読んでくださりありがとうございます!
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