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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
始まりの章
3/31

第2話  夢と記憶

   ガタン!

 という音と痛みで目を覚ます。

 俺を心配する声が聞こえた「神代~大丈夫か~」と言われた。取り敢えず「大丈夫です」と答える。

 「そうか~あんまり寝てると成績下げるぞ~」と言われた。


 あれ?桃源郷にいたはずなのになんで学校にいるんだ?

 もしかして、桃源郷のことは夢で俺は最初から"転移"なんかしていなかったのか?


 はぁ…こんな世界が知らないだけであるんだとか感動していたのが馬鹿みたいじゃないか。

 つまらない授業を受けないといけないと考えるとまた、ため息が出てくる。


 そんなこんなで桃源郷のことで頭が支配された俺は授業のことなんか全然頭に入って来なかった。

 今は休み時間だ。

 ぼーっと過ごしている。俺に声をかけてくるやつがいた。


 「今日の八雲、いつもと違うけど、大丈夫?」


 そう言ってくるこいつは幼馴染の美咲だ。


 「今日は疲れているだけだよ。」


 「そう、ならいいんだけど…」


 そんな会話をしていると、数人のグループが絡んできた。


 「八雲くん~元気してる~www」


 「俺聞いたんだけどさ~八雲くん寝てたら音立てて起きてみんなの前で恥かいたらしいじゃんwwww」

 

 「司さんやめてくださいww俺また腹痛くなりますってwwww」「ははははwww」


 こいつらは俺に事あるごとに絡んで来る、クソDQNグループだ。

 なぜ絡んでくるかというと、どうやらリーダー格の司と言うやつが美咲のことが好きらしい。

 それでよく関わる俺のことが気に食わないから絡んでくるんだと。


 

 「まぁ、今日はここらで帰るわ、また八雲くんに関する面白いこと聞いたら笑いに来るねwwww」


 とか言いながら去っていった。


 「ほんっとにあいつら腹立つ!!」

 

 と何故か美咲が怒る。


 「八雲も言われっぱなしでいいの?!」


 「あんなのいちいち相手するの暇人か馬鹿しかいないっつーの」


 「でも私悔しいの。幼馴染が馬鹿にされてるのが」


 「だから次は言い返してよね!!」


 「わかったから、席つけよ。授業始まるぞ。」


 と美咲を席につかせる。こいつもこいつでおせっかい焼いてくるから面倒くさい。


 それからは特に何もなく淡々と授業を受けていたら、いつの間にか放課後になっていた。

 今日は久々に"あそこ"に行くか。


 "あそこ"とは俺の祖父母の家だ。この家には道場が併設されている。道場に入るとじいちゃんがいた。


 「おう、お前がここに来るのは久しぶりじゃないか。」


 「今日は久々にじいちゃんと手合わせしたくてきたんだ」


 「よし、何で手合わせする。柔道か?剣道か?」


 「柔道で」


 「よし!ならば着替えてこい。わしはここで待っている。」


 俺は道着を持って着替えに行った。じいちゃんと手合わせするのは久しぶりだから楽しみだ。



 「来たか。軽く準備運動をして始めるとするかの」


 「おう。」


 準備運動を始める。柔軟などをして体をほぐす。ある程度ほぐれたところで


 「そろそろ始めるかの」といった。「よろしくお願いします」と礼をする。


 久しぶりにじいちゃんと手合わせするが、やはりすごい風格だ。隙が見えない。

 ビビらず果敢に技をかけに行くが、全ていなされ、逆に俺が投げられてしまった。

 受け身を取ったがやはりじいちゃんの投げ技は痛い。


 「久しぶりだから、お前動きが鈍っているな」


 「はは、そうだろう……ね……」


 何だ、意識がぼーっとしてきたな。久しぶりに投げられたから。まさか、気絶か? 

 はは、だとしたら俺だっせーな……


 どれぐらい経っただろう。やっと目が覚めた。

 まだ意識は少しぼーっとする。じいちゃんがなにか言っている。なんて言っているんだろう。


 「………ろ」


 「…に……ろ」


 「逃げろ!!!」


 はっきり聞こえた。"逃げろ"しかし、何から……あ…


 俺の目の前には、血に濡れた刃物を持った男と刺されて出血して倒れているじいちゃんがいた。

 こいつから逃げろってことか。俺に気がついたのか、男が振り返る。

 やばい、このままだと俺もやられる。


 「八雲!お前の近くにある家宝2つを持って逃げろ!!早く…」


 じいちゃんの声で恐怖が抜け、今なら動ける気がした。

 家宝2つ…これのことか。俺は近くにあった2つの刀剣を持って、夢中で走り始めた。

 後ろを向く暇はないが、追ってきているというのが感覚でわかる。


 たくさん走り、森の奥深くまで逃げてきた。まだ追ってきている。深くまで行かなくては。


 更に奥まで逃げてきた。やっと追手の足音が聞こえなくなった。


 やっと安心できると思った。思ったが、足音が聞こえてきた。また逃げないと。

 そう思い、少し後ずさりしたら、足場が少し崩れその勢いで俺も崖を落ちてしまった。

 下は河原。無理だ。俺はここで死ぬ。そう思うと走馬灯と言うやつが流れてきた。


 悲しくなってきた。成績も中の上ぐらいで他に秀でたところもなく、彼女もできたことがなかった。

 「せめて彼女ぐらい欲しかったなぁ」と思いながら、俺の好きな人は誰だったという考えが出てきた。

 俺に好きな人はいたのか?いや、いなかっ……いや、いた。いたんだ。

 でも俺はその事に気づけなかった。心の何処かでは"あいつ"のことが好きだったんだ。はは…俺はつくづく馬鹿だな。


「最後ぐらい、"あいつ"の笑顔見たかったなぁ」


 「うわぁァァァ!!」


 俺は飛び起きた。汗がすごい。


 「よかった、生きてる。そしてここは…」


 あたりを見渡す。旅館っぽい。ということはここは……


 「桃源郷か……」


 となるとさっきまでの"体験"は? いや、"夢"か。


 「もしかして、俺の"記憶"で、俺の名前は……」


 俺の名前は"神代八雲"


 完全に思い出した。




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