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神の愛した桃源郷  作者: 魚精神
第一章 桃源郷編
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第20話 大魔王

 「す、すごい……二人を一瞬で倒すなんて」


 「これが我の雷鳴の威力よ」


 「上へ行きましょう。お兄様の部屋があります」


 階段を上がってすぐの所に目的の部屋があるという。

 下の二人のように我の雷鳴で目を覚まさせてやろう。


 「ここです。では、開けます」


 扉が開く。

 部屋の奥に玉座に座り、頬杖をついている男がいる。

 奴が目当ての人物か。


 「………アリエルよ、また下らぬ者たちを連れてきたのか」


 「下らないことではありません。これがお兄様を救うのです」


 「フン、それで今まで何人俺に殺されてきた?俺一人の為にどれだけ屍を積み上げてきたというのだ」


 「そもそも何故俺にこだわる?俺がいなくてもこの世界は回っているだろう?」


 「俺はこうして怠惰に過ごすのがとても心地よいのだ。頼むからこれ以上お前のエゴで俺の邪魔をするな」


 「…確かにお兄様が居なくても世界は回っています。ですが!それも綻びができ始めています!」


 「100年前にお兄様が職務を放棄してから、この世界に流れてくる異世界人の管理が徐々に難しくなってきているのです」


 「最初の方は私が指揮していましたが、最近では我々が王家であることを知らない人間も増えてきていて、威光が落ち、今では管理が行き届かなくなってきています」


 「それにより治安の悪化も進んできており、各街が自警団などをつくって対応しています。王がいれば警備隊なども組織できますがそれもできません」


 「これも私に格があればなんとかなりました。けれど、そんなもの私にはありません…」


 「だから、お兄様の力が必要なのです!それに…………」


 「家族がこんな状態なのに心配しない訳がないじゃないですか!!!!!」


 アリエルがかなり気迫のこもった訴えをしている。

 さすがに響いたろうよっぽどのクズでなければ。


 「で?俺はお前の家族だが "王" だ。俺がやらないといったらそれは王の意志だ。つまり、お前は王の意思に異を唱える "反逆者" だ。万死に値する」


 ………どうやら、我の想像の上を行くゲス野郎だったみたいだ。

 そんなやつに一切の容赦なぞせん。


 「我の神器で貴様を裁いてくれよう」


 短剣をしまい、天龍を抜く。

 力を込めるとみるみる内に形が変わっていく。

 数秒で太刀から薙刀へと形を変えた。


 「我が神器 "布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)" だ」


 「元々は剣だったが、使い込み、さらに改良を重ねた結果、この形になり、手に馴染んだ」


 「せめてもの慈悲だ。一瞬で終わらせてやる」


 刹那、奴の懐まで間合いを詰める。


 「鳴り鹿島(ナリガシマ)


 雷を纏った布都御魂剣を振るう。


 「なんの……!」


 とても反応できる速度ではないと思っていたが、なんと奴は我の一撃を剣で受け止めおった…!

 剣同士の触れ合う音と、雷の轟音が鳴り響く。

 競り合いになるが力は全くの互角である。

 手を緩め、後ろに飛ぶ。


 「くっ……仕留められんかったか……」


 「……建御雷さん、少しどいてください」


 口を開いたのはラーニャだった。

 此奴、一体何をする気だ?


 「アリエルちゃんからお兄さんの事は聞きました。強くて、優しい人だったと。そんな人の身体を使って、アリエルちゃんにひどいことを言うなんて、私はあなたの事が許せません!」


 「だから、ここでお兄さんに取り憑く貴方を祓って、その身体を返してもらいます!!」


  ラーニャは十字架を構え、何か唱え始めた。


 「聖なる光よ、目の前の悪しき物を祓え!」


 「聖光(アーク)!」


 ラーニャの十字架は輝きを放ち、その瞬間、ハルナードが苦しみ、悶え始めた。


 「ガァァァァァァ!!!!!!」


 「グ………クァ……ハァ……ハァ……小娘如きが……!!」


 「この身体だから……余計に食らう! こんな身体に用はない」


 ハルナードの身体からドス黒い煙が出始める。

 やがてそれは、人型に姿を変える。

 白いスーツの様な姿に白髪の髪をした男だ。


 「ここに来て100年振りですかね、本当の姿を見せるのは」


 「ご挨拶しておきましょう。私は "怠惰" の魔王 ベルゼブブです」





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